「Surface Book」でMicrosoftとPCメーカーの関係はどうなる?――OEM担当者に聞く鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/3 ページ)

» 2015年10月26日 15時30分 公開

出ていくもの、入ってくるもの

―― 例えば、米国ではDellがPCビジネスを売却して同分野から撤退するといううわさが出ている。PC業界全体が変革期にある中、Microsoftとしての業界に対する見解を聞きたい。

パーカー氏 まず、Dellの件に関してMicrosoftからコメントできることはない。マクロ経済的な話はこの場で必要ないと思うが、デバイス的な視点で話せば、現在PC市場のトレンドはタブレットから2in1へと移りつつある。実際、299ドルの製品が登場していたりと、2in1はとても手頃な価格帯にあり、非常に強く成長していると言えるだろう。

 その他、オールインワンPCでの曲面ディスプレイ、「Xbox One」を含めたPCでのゲーム体験やクロスプラットフォーム対応が挙げられる。これらを「フォームファクタ」での変化だとすれば、「ユーザー体験」「ファンダメンタル」を合わせた3つのエリアでの変革が業界をリードしている。

 このうち特に重要なのがユーザー体験の部分で、どのようにコンピュータと向き合っていくのかという点が変化している。例えば、Windows 10の新しい認証機能「Windows Hello」ではPCと向き合うだけで電源が入るため、パスワードを必要としない。顔認証を使ってログイン動作だけでなく、安全にインターネットからモノを購入したりできる。

Windows 10の新機能「Windows Hello」は顔や指紋などの生体情報に基づいてユーザーを認証するため、強固なセキュリティと高い利便性を両立できるとする

 音声認識も重要で、これはノイズキャンセリング対応マイクや高いサンプリングレートを使った正確な音声認識技術向上によるものだ。後は「Continuum for Phones」のような新しいユーザー体験も重要だろう。

 ファンダメンタルな部分では、より長いバッテリー駆動時間の実現や、ファンレス設計、薄型のボディデザイン、新しいプロセッサといった技術革新がある。今後は4K True Color対応など、より高解像度で美麗なディスプレイを採用するケースが増えるだろう。

―― そのように今後PC市場から出ていくメーカーがある一方で、Windows 10 Mobileにおいて国内で6社の新パートナーが搭載端末の開発を表明したように、新たに参入してくるメーカーもある。Microsoftにとって重要なのは市場の多様性(Diversity)だと考えるが、これをどのように維持していくつもりなのか

パーカー氏 非常にいい質問だ。説明に3つの例を挙げる。日本国内の事例でいうと、1つめはVAIOだ。同社は最初のターゲットに日本市場を選んだが、つい先日にはブラジルと米国での販売を開始している。これがマーケティングと投資、デマンドを(MicrosoftとOEMで)ともに作っていくといういいサンプルだ。

VAIO Z Canvas 米国での販売が開始された「VAIO Z Canvas」

 2つめに、単一のWindows 10プラットフォームでPCからスマートフォンまでをカバーしていくことだ。今回、日本市場でも6社のパートナー企業をWindows 10 Mobileに迎えることができたが、この実現にあたっては各社のエンジニアやQualcommとの協業を行い、各社デバイスの差別化に向けた活動を続けて発表へとこぎつけた。

 1と2をまとめると、VAIOのような既存パートナーの販路拡大に向けた支援と、携帯分野での例にあるように新規パートナーの支援がポイントとなる。

OEM各社の代表 10月14日に国内で開催されたWindows 10のパートナーイベントに集合したOEM各社の代表。ここで6社がWindows 10 Mobile搭載スマートフォンの開発を進めていることが明らかになった

 そして3つめの例がODM(Original Device Manufacturers)の活用だ。中国の深センに位置しているODMらはOEMに対して販売活動を行っており、非常に速いスピードのアジャイル開発で革新を起こしている。MicrosoftとしてはこれらODMのラボでの開発やテスト協力だけでなく、日本を含む世界でのOEMパートナー獲得のための支援を行っている。

 2014年に米国であった大きな事例としては、Wal-Martが挙げられる。Wal-Martが自社ブランドのタブレット製品を必要としていたので、われわれはWal-MartがOEMとなるのを支援すべく深センにあるODMの1社を紹介した。それまで普通の小売店とみられていた企業がOEMメーカーになるという、ビジネスモデルの変革を支援する仕事だ。

 こうした既存パートナーの市場開拓と新しいパートナーの獲得、そしてODMと(潜在的な)パートナーを結ぶビジネスと、これがOEM事業の柱となっている。

日本のWindows 10 Mobile搭載スマホはどうなる?

―― Windows 10 Mobileについてだが、マウスコンピューターの「MADOSMA」を除けば、実質的にWindows Phone 7以来のMicrosoft製モバイルOSを搭載したスマートフォンの国内登場となる。日本における展望を聞きたい。

ニック・パーカー氏 今回の6社は、マウスコンピューターのように、既にPCでパートナーとして活動している企業もあれば、スマートフォンで新たにこの市場に参入してきた企業もある。いずれにせよ、日本ではWindows搭載スマートフォン最初の日と言える段階だ。

―― サティア・ナデラCEOは、Windowsスマートフォンのフォーカス分野として「エントリー」「プレミアム」「ビジネス」の3つを挙げている。現在、世界的にMicrosoftがスマートフォン市場でシェアを握っているのは「エントリー」であり、米国で10月6日に発表された「Lumia 950」「Lumia 950 XL」は「プレミアム」のカテゴリだ。日本の国内展開において、6社のパートナーとともに3つのどの市場にフォーカスするのか?

パーカー氏 非常に難しい質問だ。だが、日本において実際にパートナーを通してデマンドが寄せられており、可能性が最も高いのは「ビジネス」分野にあると考えている。

Lumia 950/950XL ハイエンドクラスのWindows 10 Mobile搭載スマートフォンとなる「Lumia 950」「Lumia 950XL」。残念ながら日本での販売は予定されていない

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