ゲームの神様こと遠藤雅伸氏とカードゲーム作りを楽しんだ週末:「あそぶ!ゲーム展」体験レポ(3/4 ページ)

» 2015年12月11日 20時00分 公開
[瓜生聖,ITmedia]

ゲームの神様が考えるゲームとは

 今回、ワークショップの題材となった「バトルファイブ」は、遠藤氏が試行錯誤して創りだしたオリジナルのカードゲームだ。そこでどのようなことを考えてデザインしたのかを聞いたところ、非常に興味深い、「ゲームの神様」の知見、経験に裏打ちされた理由を教えていただいた。

 例えば、ゼビウスのようなアーケードゲームは平均プレイ時間を想定してデザインし、難易度を調整する。そのため、1回10円程度のイタリア・スペイン向けゼビウスはプレイ時間が短くなるように「ウルスパ(ウルトラスパニッシュ)」という超ハードモード設定だった。

 また、日本では6時間くらい1コインでプレイする猛者(もさ)も出てくるようになってしまった反省から、いくら上達しても1時間でエンディングになるようにしたのがドルアーガの塔だ(1フロア1分換算)。このようにアーケードゲームでは、インカムを意識したデザイン、レベル調整がつきものだ。

 では商業的なしがらみのない、今回の対戦カードゲーム「バトルファイブ」はどうか。遠藤氏は1回あたりの時間を短くすることを意識したという。

 その理由の1つは逆転を面白い、と思ってもらうため。逆転が可能なゲームは面白い。しかし、長い時間をかけて得た優位性を逆転されてしまうと、人は不愉快さを感じる。だから、ゲーム時間自体を短くすることで、短時間での逆転を可能にしているのだそうだ。さらに、1回が短いから楽しい、もう一度やりたい、そうやって継続的にゲームを楽しむことができる。

 そしてルールや戦術の理解が簡単であり、知識による差が出ないこと。これも(多くの金を落としていく)リピーターを優遇するのは商業的に有効な手だ。だが、収益等を考えなければ、より知っている人しか分からないコンボなどは不公平感があり、新規参入の壁となる。今回の対戦カードゲームは5枚のカードそれぞれで独立した5回の勝負を行うため、コンボができないようになっている。

 ゼビウスでは単なるシューティングゲームにとどまらない世界観を構築し、ドルアーガの塔ではロールプレイングゲームの要素や、一人では解けない、ゲーム外でのプレーヤー同士のコミュニケーションを盛り込んだ。

 そんな遠藤氏に未来のゲームがどうなるかうかがったところ、「現在の延長なら」という断りつきで「コミュニケーションを加速するツールというところは外れない」という答えが返ってきた。

 女の子にゲームをしよう、と誘ってもゲームそのものが目的ではないように、ゲームはコミュニケーションのツールだ、と。なるほど、ゼビウスもソルやスペシャルフラッグの場所、バキュラが256発で倒せるというデマなど、出どころはともかく、コミュニケーションを活発化させるさまざまな話題が尽きないゲームだった。

 今日のワークショップでも参加者たちはみな一様に楽しそうに、すぐに打ち解けてコミュニケーションを楽しんでいた。遠藤氏にワークショップで参加者に感じてほしいことはなんですか、と聞いたところ「ゲームって面白い、自分で作るともっと面白い、そう思ってもらうこと」と即答してくれた。

 帰り道、「明日学校で友だちとやるんだ」とうれしそうに語っていた小3男児を見る限り、その目的は達せられたようだ。

“遊べる”ことにこだわった「あそぶ!ゲーム展」

 今回のワークショップは冒頭述べたとおり、SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ映像ミュージアムで開催中の「あそぶ!ゲーム展」のイベントの1つだ。

 展示されているゲーム機は歴史的に貴重な実機だけでなく、実機の動きを再現したエミュレータも展示されている。そのため、保存の観点などから実機でのプレイが難しいものであっても、エミュレータでゲームを体験することができる。「あそぶ!ゲーム展」の名のとおり、実際に「あそぶ」ということへのこだわりを強く感じる展示だ。

会場は大きく3つに分かれている。これは最後の年代のコーナーで音も賑やか

 本展を企画したシニアディレクター 澤柳英行氏に話をうかがったところ、それは非常に映像ミュージアムらしい理由だった。

 映像コンテンツの中でも、日本のゲームは世界に大きな影響を与え、時代をひっぱるものだった。その原点をたどる中で、それらがどのように進化していったのか、娯楽ではなく、創造力、クリエイティブといった観点から「映像コンテンツ」としてゲームをとらえ、そして体験してもらうことが今回のゲーム展の趣旨だ、と澤柳氏は語る。

 ゲームは、それを遊ぶことで映像コンテンツの完成形となる。だから、昔のままのコントローラと映像で遊ぶことで、プレーヤー自身が作り手の一人となって、体験してもらう。それが「あそぶ!ゲーム展」の目的なのだと。だから、すべてのゲームが「あそべる」ことにこだわっているのだ。

 本展の開催直後は40〜50代のゲームマニアらしき人たちが多かったものの、一段落してからは親子連れが増え、最近ではカップルや10〜20代の若者も目に付くようになってきたそうだ。

 ちょうど取材に行ったときは比較的すいており、実に快適に(取材を忘れて)楽しむことができた。大人510円、子供250円で1日中遊び放題という、ちょっとした穴場なので、週末出かけてみてはいかがだろうか。マンイーター、デスレースがプレイできる休日の午前中や平日がおすすめだ。

 今後もトークイベントや小中学生向けのワークショップが予定されているので、興味のある方は「あそぶ!ゲーム展」のサイトをチェックしてほしい。

 来年2月28日までは「Stage.1 デジタルゲームの夜明け」と題し、誕生から1982年までのデジタルゲームを展示している。そのあとはゼビウスから体感、格闘ゲームなど1983年〜1990年を扱ったStage.2、それ以降のStage.3の3回シリーズを予定しているとのこと。ちなみに「ギャラクシアン3の予定はありますか?」と聞いたところ、「置きたいですけどね……」とのことだった。

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