元祖「生主」かもしれない! リタ・ジェイ氏インタビュー「パソコンがぼくの世界を変えた」(1/2 ページ)

» 2016年01月19日 18時30分 公開
[ITmedia]

 絵と文の作家、リタ・ジェイ氏をご存じだろうか。デジタルアートバトルチャンピオンの受賞歴を持ち、独特の作風で注目を集める新進気鋭のクリエイターだ。

「Monster cafe」(Rita-Jay)

 PC USER読者であれば、人気オンラインゲーム「ドラゴンクエストX」の第二期初心者大使として、ニコニコ動画でプレイ実況を配信していた“インコさん”の名で知っている人もいるかもしれない。あるいは、舞台・演劇好きの方ならコメディアンとして、ライトノベルを読む方ならラノベ作家として彼の名を聞いたことがあるだろう。

 二足のわらじどころか、片手の指では足りないほど多岐に渡る分野で活躍するリタ・ジェイ氏だが、もともとは90年代にコンビのお笑い芸人としてデビュー。しかもそれほど売れているとは言いがたい若手芸人のひとりに過ぎなかった。そんな彼に転機が訪れたのは2001年のこと。パソコンとネットを使ったある番組だったという。

元祖生主? 6畳一間の部屋にこもって24時間ライブ配信

絵と文の作家、リタ・ジェイ氏

 「民放の企画で、2001年の元日から1年間、6畳一間の部屋にこもって、その様子をネットで配信し続けるという番組に起用されたんです。ずっと部屋にいて、ネットオークションで何かを売って1年間暮らす、という内容でした。番組的には若手芸人が困窮する様子を映せたほうが美味しかったんだと思いますが、趣味で持っていた超合金の人形が割と高く売れたりして、実は暮らしがよくなっちゃったりしたんですけどね(笑)」とリタ・ジェイ氏は振り返る。

 しかし、丸1年間プライベートも含めて全てを売り渡す、という当人にしてみれば思い切った決断だったが、実はそれほど注目されなかった。

 「2002年になって、元日に1年ぶりに外に出て、世間は自分の名前で持ちきりだろうとか、すごい反響があるんじゃないかと期待していたんですが、思ったより仕事がなくて……部屋に引きこもっていると外の様子がよく分からないので、理想と現実のギャップが大きかったですね」と同氏。

 今でこそ生主やユーチューバーといった言葉に代表されるように、誰もが驚くほど手軽に動画を配信し、それを大勢の人が視聴できる時代だが、当時インターネットの普及が進みつつあったとはいえ、ネットワーク環境はナローバンドが当たり前。当然、視聴者は少ない。また、ネットでは24時間ライブ放送されているものの、番組で紹介されるのはほんの一部でしかない。

 「もっと売れると思ったんですけどねー……。あ、でも生活のライブ配信という意味では“元祖生主”と言っていいと思います。私が最初に始めたんだぞ、みたいな(笑)」。

 ただし、体当たり企画は肩すかしに終わったものの、クリエイター「リタ・ジェイ」のベースは、その1年間の体験にあったという。転機となったのはパソコンとの出会いだ。番組が用意した六畳一間の簡素な部屋には、生活費を稼ぐためにネットオークション用のパソコンが1台設置されていた。そして、1年間の“引きこもり”生活は、生活費を稼ぐためのオークションを除くとほとんどやることがない。

 「もう時間だけはたくさんあったので、パソコンで何かできないかなと、なんとなく絵を描いたのが始まりでした。Windowsに標準で入っているペイントとマウスで、思いついたことを描いて。虚無僧の絵とかですね、なんだかよく分からないんですけど(笑)。で、ネット配信を視聴している方から褒められたんです。これまでアナログで絵を描いたりしたこともなかったのですが、『形がいいね』とか『色がいいね』とか。それからネット上で色々な人に、フリーのお絵かきソフトやタブレットの存在を教えてもらったりして。そもそもそれまでパソコンの知識が全くなくて、ノートPCの電源を落とすためにバッテリー抜いてたりしていたくらいだったんですけど」。

当初マウスで描き始めたイラストも、現在は液晶ペンタブレットを駆使して制作

ちなみにインタビュー当日は、1月15日から始まる個展用のイラストを仕上げているところだった

 その後、番組が終わった後も絵を描くことは続けていたが、ある日個展を開こうと思いつく。

 「最初はたんに『お笑い芸人が個展を開いたら面白かろう』なんて安易な気持ちで告知用のWebサイトを作ったりしていたんですが、いざ会場をおさえて現実味が増してきたら急に怖くなってしまって。『これはギャグじゃすまされないんじゃないの』と。それから割と真剣にイラストを描いていたら、日本文学館主催のポストカードブックコンテストでグランプリを頂きまして、作品が1冊の本になったんです。本業とは別の分野でしたが、うれしかったですね」。

 こうしてリタ・ジェイ氏は、芸人とは別に、フリーのイラストレーターとして活動の幅を広げることになる。

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