ラグビートップリーグで監督と現場がやりとりするトランシーバーにはとんでもない秘密があった(前編)ITとスポーツ(2/2 ページ)

» 2016年01月26日 06時00分 公開
[らいらITmedia]
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レッドハリケーンズ監督「敵チームの情報が入ってきていた」

 レッドハリケーンズでは、2015年11月にビジネストランシーバーを導入し、試合ごとに12〜3台を使ってさまざまなやりとりをしていると言います。レッドハリケーンズ監督の下沖正博さん、マネージャーの神野慧二郎さんに活用事例を聞きました。

レッドハリケーンズのホームグラウンドであるドコモ大阪南港グラウンド。練習試合のほか、選手たちが日々トレーニングに励んでいる

――(聞き手:筆者) まずビジネストランシーバーを導入した経緯を教えて下さい。

マネージャー神野慧二郎氏(以下、神野氏) 試合会場では、どのチームもトランシーバーを使うため、混線して敵チームの情報が入ることが実は結構あります。また音声に雑音が入って聞き取りづらく、コミュニケーションが取りにくいことが多々ありました。そこを解消したいという思いがあって導入しました。

レッドハリケーンズマネージャーの神野慧二郎さん

レッドハリケーンズ監督下沖正博氏(以下、下沖氏) だいたい試合が始まって最初の1、2分くらいで、「あれ、おかしいな」と気づきます。相手チーム側の指示がこちらに入ってくることがあるのです。もしかしたら逆に、こちらの指示が相手側に入っていることもあるかもしれません。そのため周波数のチャンネルを変える指示を出すなど、結構な頻度で試合中にバタバタと対応に追われます。

レッドハリケーンズ監督の下沖正博さん

―― 試合どころじゃないですね。

神野氏 本音を言えばストレスでしたね(笑)。例えば、建物の中に入ってしまうと、雑音で何を言っているか分からないことがあって、意思疎通が難しいことも多々ありました。

下沖氏 うちには外国人のスタッフがいますが、外国人から日本人の通訳に英語で伝える時に、従来のトランシーバーではまず英語が聞き取れない。結局グラウンドまで降りて行って、通訳を呼んで話をして、ということが結構ありました。

―― 今まで使われていたトランシーバーと比べて、変化はありましたか。

下沖氏 劇的に変わりましたね。音声がかなりクリアになりました。ゲーム中に伝わる情報は限定的ですが、やりとりは頻繁に発生します。以前は声が途切れ途切れになって会話にならないときがありましたが、今はそういった症状はほぼありません。

神野氏 外国人コーチの発言回数が格段に増し、細かいやりとりも増えました。コミュニケーションが増えたことで、試合に好影響も出ています。

ビジネストランシーバーについて語る下沖氏(左)と神野氏(右)

―― そもそも試合では誰がビジネストランシーバーを使い、どのような指示を出しているのですか。

下沖氏 上の観客席にいる私たちコーチ陣や、試合の分析を行うスタッフ、グラウンドにいるマネージャー2人ほどがインカムをつけています。やりとりはメンバー交代や選手の負傷情報が多いです。メディカルスタッフがグラウンドの中から選手の怪我情報を発信し、我々に伝達されます。

実際の試合でビジネストランシーバーを使う下沖監督

 また試合が途切れた時に、選手に水を持っていくウォーターボーイがいます。私(監督)と密にやりとりし、彼らがグラウンドの中に入るタイミングで、選手に指示を伝えてもらいます。こちらから情報伝達は一方的にしますが、選手に伝えるウォーターボーイも試合が始まってしまうとなかなかグラウンドに入っていけません。そのため選手に伝える情報量は限定的ではあります。

ラグビーの試合では、多くの場合監督は観客席の上方の席に座り、トランシーバーで指示を出す。その指示を受けるのは、グラウンドにいるコーチやスタッフ。そこから選手に水を渡すウォーターボーイや、メディカルスタッフに指示を出し、彼らが選手に指示を伝えるという

選手に水を差し出すだけでなく、監督の指示を伝える役目も持つウォーターボーイ(赤いビブス)。レッドハリケーンズでは通訳を兼ねたスタッフが担当しているという。白いビブスはメディカルスタッフ

―― そういった他のスタッフからのビジネストランシーバーの評判はいかがですか。

神野氏 音声品質は「指示が聞き取りやすい」と他のスタッフからも評判がいいです。

下沖氏 従来のトランシーバーでは、指示を出したあと復唱してダブルチェックすることが常でした。今までは我々が指示を出すにもストレスで、「ちゃんと伝わっているのかな」と不安でした。もう1回言い直さないといけないし、言い直すときには戦況がまったく変わっていることもあり、どんどん指示がずれていく。必然的に発信が減っていきます。しかし今では下から手を上げて合図してもらうだけでやりとりが終了します。音声がクリアなので「はい、OK」と。

下沖監督からの指示を受け、挙手で応える神野マネージャー

―― そもそもなぜ上から遠隔で指示を出すのですか? 野球やサッカーのように、グラウンドそばで指示を出せばいいのにと素人目線で思ってしまいました。

下沖氏 グラウンド上で平面的に見ると、どこにスペースがあるのかが分かりづらいからです。上から俯瞰(ふかん)で見ることで、オフサイドのラインやディフェンスの偏りなどの状況も把握しやすくなります。

 上からしっかり我々が見て、選手たちに対して情報を伝達することによって、選手たちも視野を広げてプレーすることができるようになります。「もう少し全体的に下がるよう指示を出してくれ」なんて伝達はよくありますよ。上から見るメリットはかなり大きいと思います。

下沖監督「ラグビーはピッチに30人いるので混沌としてしまいますしね」

―― 試合会場は郊外にあるスタジアムも多いと思いますが、ビジネストランシーバーの電波が入りづらいと感じたことはありますか。

神野氏 ほぼないですね。FOMAの電波を使っているので山間部も通じますし、2015年11月に導入して以降、通じにくいと感じたことは1回もありません。

―― 耐久性、操作性で気になる部分はありますか。

神野氏 マネージャーは水を汲む仕事もありますが、防水加工になっているので、特に気にせず通常通り使っています。夏場の汗も気になりません。

下沖氏 操作性でいえば、ボタンを押してから通話が始まるまでに、タイムラグが1秒くらいあります。従来はボタンを押してすぐ言っていたので、「誰々、交代」と指示を出したら「交代」しか聞こえなくて、一番大事なところが伝わらない(笑)。

神野氏 ボタンを押してピピっと鳴ってからでないと伝わりません。急いでいるときは、以前のクセで音を待たずに喋ってしまうことがあります。それ以外は使い方も簡単だし全く問題ないです。

下沖監督(左)と神野マネージャー(右)

 後編では、レッドハリケーンズにビジネストランシーバーを導入した、ドコモ関西のトランシーバー営業チームに話を聞きます。

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