ウィンクルは、武地さんが2014年に設立した会社だ。もともとはスマートフォン向けアプリの開発ディレクションを担当していたが、そこから転進、いわゆる「ハードウェアスタートアップ企業」を始めた。
最初に作ったのが「AYATORI」という製品だ。スマートフォンのヘッドフォン端子に差し込んで使うLEDライトなのだが、アプリと連動し、近くにいる人の属性に合わせて光り方が変わる。例えば、同じ趣味の人がすれ違うと光り出す、といった演出でコミュニケーションを促進するプロダクトだった。
※記事初出時、武地さんの経歴に一部誤りがありました。おわびして訂正いたします(2016年2月10日18時/PC USER編集部)
その開発が一段落し、次に何を作るかを考えながら帰宅したとき、ふと思ったという。「疲れて帰ってきたときに、“おかえり!”っていいながら出迎えてくれるものが作れたらどうだろう」
現在よりも基礎的なコンセプト作りの段階では、いろいろなことを試している。当初の発想では「ルンバの上に等身大の嫁が浮かび上がって、自走してきてくれれば最高」と思っていたそうだが、さすがにそれは難しかった。
そこでまず、ニコニコ動画で公開されているプロジェクションの仕組みをまねて、テストを重ねた。
「1年前には、等身大の(初音)ミクさんを召喚してみたんです。でも、さすがにあのサイズを、日常的に使うスペースはない。そこで、机の上に置く、というコンセプトにしました。横に置いておいても、のぞき込まずに見られるものを考えたのです」
筐体の中に現れるキャラクターのサイズは、ずばり15センチのフィギュアそのもの。サイズを検討した結果、「フィギュアが嫁になる」というコンセプトがベスト、と判断してのものだ。現在はこのサイズにこだわって開発が進められている。少し前までは、投写機も非常に大きなものだったのだが、「ギュンギュン小型化が進んで」(武地さん)机の上に置けるサイズになった。
現在のコンセプトモデルでは、イベントの展示などで使われている短焦点プロジェクターを元にした機構が組み込まれている。スペックなどは公開されていないが、光源は「レーザーではない」という。解像度も非公開だが、見た限り、さほど解像度も高くないように思える。
だが、その「実在感」はなかなかだ。正面に近づくと、映像を投写している半透明なスクリーンの存在に気付くが、1メートルも離れれば見えなくなる。また、部屋が暗くなくても、しっかりとした映像が見える。これは、暗い筒の中にスクリーンを置いて投写する仕組みであることが効いているためだ。
このコンセプトモデルで使われている技術も、半透明のシートにプロジェクションを行う方式であることに違いはない。だから、正確には「ホログラム」ではない。嫁の像が机の上に漏れてくることもある。
だが、彼らとしては、同じプロジェクション技術にこだわっているわけではない。本当に理想としていたのは、「ルンバの上に嫁が浮かびあがる」というイメージだったからだ。投写方式については、他の手法も含め、検討を進めているという。
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