2016年1月18日、IoTベンチャーのウィンクルが発表した“ホログラムコミュニケーションロボット”こと「Gatebox」は、ネット上で大きな話題を呼び起こした。同社は製品化に向けた採用強化のため、総額約9000万円の資金調達を実施しており、これから本格的な開発を進めるという。
Gateboxが受けたのは、「“俺の嫁”と一緒に暮らせる」といううたい文句が響いたからだ。だが、公開されたのはあくまで「コンセプトモデル」。ネットで公開されたコンセプトムービーから、その姿を推測するしかない。そこで、Gateboxを開発中のウィンクル(東京・秋葉原)にお邪魔し、どのような形で動いているかを聞いた。
なお、現状でコンセプトモデルは非公開となっているので、今回の記事でも実物の写真は公開できない(記事中の写真はウィンクル提供画像)。ただ、筆者は取材時に実物を見ているので、そのインプレッションもお届けしたい。
「こんにちは。うちの人がお世話になっています」
取材中、Gateboxがそんな風にこちらに語りかけてきた。もちろん、起動時にそうしゃべるよう仕込んであるわけではない。Gateboxに搭載されたカメラが外部に複数の人物がいることを認識、来客中だと判断し、こちらにもあいさつをしてくれたのだ。
といっても、現状では「うちの人」を個体認識するほどの機能は盛り込まれていないという。ウィンクル代表取締役の武地実さんは「主人以外には反応しないところまでやりたいんですけどね」と話す。
現在のコンセプトモデルは、かなり大きめな円筒形。小型デスクトップPCを下に敷き、その上に投写型のディスプレイを置いたような構造だ。中に入っているのはPCそのもので、現状ではLinuxで動作しているという。そこに、Googleカレンダーに入力したスケジュールを元に朝起こしてくれたり、スケジュールを伝えてくれたりする機能がある。
コミュニケーションは全て音声で行い、キーボードやマウスはもちろん、スマートフォンなどの外部機器も使わない。武地さんは「それじゃあ、“操作している感”が出るじゃないですか。作りたいのは、“嫁とコミュニケーションをとるためだけのデバイス”なんです」と話す。
現状はコンセプト作りとして、いろいろな機能を試している段階だ。「理想的には、この機器の中、ここに“嫁がいる”と思ってもらいたい。だから、リアルな嫁がやってくれることは全部できるようにしたい」と説明する。
といっても、人型ロボットではないので、歩き回ってコミュニケーションできるわけではない。使うのはリモコンとネットワークだ。例えば、赤外線の学習リモコン機能を使えば、家庭内にある家電機器をコントロールできる。
テレビやエアコンをつけるのはもちろんだが、ロボット掃除機のコントロールもできれば、「嫁が掃除してくれる」ことにならないか。ネットの出前サービスと連携すれば、「嫁が料理してくれる」あるいは「嫁がピザをとってくれる」ことにはならないか。半ば冗談のようだが、重要なのはそこで、「現実の生活にいかに影響を与えるか」という。
「あまり相手をしないと、人間っぽく“さみしい”と言ってもいい。テストで、Twitterにつぶやく機能も搭載してみています。嫁がSNSを楽しむように、自分でTwitterにつぶやくんです。カメラ機能で、主人の寝起き顔をツイートしたりもしますけどね(笑)」
「空中に浮かぶ俺の嫁」というコンセプトは、圧倒的な反響をもって迎えられた。ウィンクル開発チームも、「日本のある層の人々には絶対に刺さる、国内では祭りになるだろう」と確信していたという。
だが、反響が世界に広がるとは予想外だった。
2016年1月17日、YouTubeにコンセプトモデルのビデオが公開されると、世界中からコメントが寄せられた。英語はもちろん、フランス、ドイツ、イタリア、インド、韓国と、既にコメントは日本語より他の言語のほうが多い状況だ。2月10日現在で、再生回数は48万回を超えている。
「誰しも子供の頃、好きなキャラクターと一緒に暮らしたい、と思ったことがあるはず。それが具現化したわけです。しかも、ターゲットを思いっきり“俺の嫁”に絞りました。だから刺さったんだとおもっています」
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