ほんの10年ほど前まで、Intelと台湾ベンダーの協業といえば「PC」での世界のできごとに限られていた。だが現在、PCとともに成長したメーカー各社はその活動領域を広げ、世界の工場としてさまざまなデバイスの製造や研究開発に勤しんでいる。
この波はPCメーカーの雄といわれたIntelとて例外ではなく、生き残りのため自らの在り方を変化させつつあり、同時にPCで結びついたメーカー各社との関係も変化しつつある。4月に人員整理を含む大規模な構造改革プランを発表した米Intelだが、世界の工場の中心であるここ台湾において、改めてそのポジションの変化を示すことになった。
米Intelは5月31日(台湾時間)、現在台北市で開催されているCOMPUTEX TAIPEI 2016において基調講演を行い、こうした同社の最新戦略について説明した。
ちょうどCOMPUTEXのタイミングでは「Intel Core i7 Extreme Edition」(開発コード名:Broadwell-E)の発表があったりと、ハイエンドゲーマーやPCプロフェッショナル向けの製品展示も多数行われている。
Broadwell-Eは単純に3Dゲームというわけではなく、昨今ブームとなりつつある「仮想現実(VR)」を快適に楽しむためにも役立つ。特に高精細でレスポンス性の高い映像体験を楽しむためには、相応のCPU+GPU性能が必要となり、これが一部のユーザーで機器買い換えのモチベーションとなっている。増えつつある4K画像出力対応ディスプレイの登場もあり、ハイエンドPCの世界はしばらくは比較的賑やかなものとなるはずだ。
基調講演で最初に登壇した米Intelコーポレートバイスプレジデント兼クライアントコンピューティング部門(CCG)担当ジェネラルマネージャのNavin Shenoy氏は、ここCOMPUTEXが台湾メーカー関係者の多数集まる場所であることを意識しつつ、PCエコシステムにおける(メーカー各社の)メリットや将来戦略について説明を行った。
下り基調といわれて久しいPC市場だが、唯一2 in 1と呼ばれるカテゴリのタブレット製品は年率2ケタ成長が続いており、ユーザーの購買意欲が高いと強調している。この製品ラインを軸に、システムデザインの拡充に向けて協業していこうというのが同社の主張だ。
また、今年後半に登場予定とされていた「Apollo Lake」と「Kaby Lake」について、量産出荷が今四半期中に開始され、実際に当初の予定通り搭載製品が年内に投入される見込みであることを改めて明言している。
以前のレポートにもあるように、一連の構造改革が原因でIntelのプロセッサ戦略は大幅な舵取りの変更を迫られており、特に「Atom」プロセッサではローエンドやスマートフォン向けを中心に開発キャンセルが表明されるなど、混乱の途上にある。
今後のAtom開発計画は不明瞭のままではあるものの、少なくとも「Apollo Lake」(さらに「Apollo Lake-I」)の年内投入は問題ないとされており、「Pentium」や「Celeron」の名称を冠した「Skylake」世代のプロセッサのローエンド版として搭載製品が登場することになるだろう。Kaby Lakeについても、8〜9月ごろには正式発表が行われ、秋ぐらいのタイミングで搭載製品が順次登場することになるとみられる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.