PC最盛期の重要イベント「IDF」がついに終了 20年の歴史を振り返る(2/3 ページ)

» 2017年04月20日 06時00分 公開

20年で大きく変化したPC業界

 前半10年のピーク時期には、米本国で年2回行われる通常のIDFに加えて、世界各地で「ローカルIDF」が1年あたり最大で10回近くも開催されていた。

 筆者は2002年以降は海外にいたため正確には把握していないが、少なくとも2回以上は日本でもIDFが開催されている。

 こうしたローカルIDFは「パートナーの製品や技術紹介」が主軸で、世界各地に存在するOEMメーカーや周辺機器メーカー、関連ソリューション企業との関係強化が主な目的だったと考えられる。それだけ出す情報も多く、幅広い賛同パートナーがIntelのエコシステムを支えていたことの証左だろう。

 同時に、日本のPCメーカーの数は世界的に見ても多く、Intelも特に重視すべき市場と見なしていた。筑波に研究開発センターとショールームを構えていたり(現在は閉鎖)、組織的に日本が独立した地域として区分けされていたりと(現在は中国を除くアジア太平洋地域の一部)、その当時の情勢を象徴するものでもあった。

 しかし、最初のIDF開催から10年の節目となる2007年に、開催地は変わることとなる。米本国で開催されていたIDF Springを中国の北京へと移し、1年に2回、サンフランシスコと中国という2都市開催のスタイルへと移行したのだ。

 開催地の一部を中国へと移した理由は2つ考えられる。

 1つはリーマンショック直前のタイミングで、競争激化などの理由により、2006年にIntelの業績が悪化し、1万人を超える人員削減を行うなど、イベント規模を縮小せざるを得なかったとみられる。

 もう1つが、こうした情勢にもかかわらず北京五輪開催を前に急成長を続けていた中国への投資期待、そしてEMS(電子機器受託製造サービス)などPC製造や開発に関わる企業の多くが中国や中国語圏に位置していることから、前述のパートナー関係強化の視点で、あえて年2回開催のうちのイベントの1つを中国に移動させたのだとみている。

 2008年にはIDF Springの開催場所を上海に変更し、2009年に再び北京へと戻ってきたものの、この年から春のイベントはローカルIDFへと格下げとなり、実質的に年1回開催スタイルとなった。

 中国でのローカルIDFは、Intel幹部がステージに登壇して英語で講演するものの、残りの多くのセッションが中国語で行われるなど、あくまで現地の参加者を主軸としている点に特徴がある。春のローカルIDFはその後も北京で開催され続けたが、2014年に場所を深センへと移し、最終的に深センでに開催3回目となる2016年でその歴史を終えた。

IDF 大きく発展を遂げ、今もなお変化を遂げる中国深センの電脳街中心部

 筆者は後半10年は秋に開催される米本国のIDFしか取材していないが、常々感じていたことが2つある。

 1つは、以前までのIDFに比べても出てくる情報量が減り、得られるものが少なくなっていたことだ。インターネットが発展する以前、Intelのエコシステムに関する資料の多くはIDFで提供される情報が頼りだった。初出張でパームスプリングスから大量の紙や光学ディスクの束をスーツケースに詰め込んで持ち帰った記憶が残っている。

 だが現在、必要な情報のほとんどは適時提供が行われており、IDFならではのサプライズは少ない。レポート記事における取材内容も実際にデモを見たり、インタビューやQ&Aで担当者から直に情報を入手したりと、基調講演での比重が下がっている。

 一方で、IDF以外のイベントを開催して情報発信するケースも出てきた。例えば、Intelは「Research@Intel」という製品化に至っていない基礎研究や大学などとの共同研究による成果を発表するイベントを開催し、最新の取り組みをアピールしている。

 これを取り仕切っていたのは、当時IntelでCTOと研究開発部門トップを務めていたジャスティン・ラトナー氏であり、同氏のリタイアと同時にイベントは終了した。これ以外にも小規模なイベントはいくつか開催されていたものの、情報の密度こそ薄くなりこそすれ、IDFは依然として別格の扱いだったのだ。

IDF Intelが開催していたIDF以外のイベントの1つ「Research@Intel」。これは米カリフォルニア州マウンテンビューにあるComputer History Museumで実施されたもの

 IDFに関してもう1つ気になっていたのは、ここ数年は特に方向性を見失いつつある様子がうかがえたことだ。

 高速バックエンド通信向けの制御機器から、スマートフォンなどの小型モバイルデバイス、センサー向けの組み込み機器まで、過去のIntelは失敗したものも含めてPC以外の多くのプロジェクトを同時に走らせてきた。そのうえでなお研究開発投資やマーケティング予算を投入できる体力や勢いがあったからこそ、業界の盟主たるポジションを確立できていたのだ。

 しかし、最近の同社はPCやデータセンター以外の分野に成長余地を探すべく、IoTや5Gを筆頭に「PCだけではないIntel」をアピールするのに熱心で、いまひとつフォーカスが定まっていない印象がある。

 General Electric(GE)などとの共同プロジェクトをはじめ、次世代の社会インフラを支えるべくさまざまな投資や試行錯誤も続いているが、これらがメッセージとして逆にIntelの迷走感を強調している気がしてならない。

IDF IDF15でデモストレーションが行われたGEとのスマートシティー共同プロジェクト。街灯にセンサーを埋め込んでリアルタイムでのデータ解析を行う
IDF Intelが買収して製品化が行われたスマートウォッチの「Basis Peak」は、同じくIDF15でデモストレーションが行われた。残念ながら、翌2016年8月に全品リコールで製品提供とサービスが終了した

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