実際のところ、こうした流れの中でIDFの立ち位置が微妙になってきたのが、今回のイベント開催終了へとつながったのではないだろうか。PCプロセッサをはじめとした新製品のリリース時期とは必ずしもイベント開催タイミングが一致しておらず、これ以外の新しい分野への投資や取り組みは、本来のIDF参加者の指向と完全にマッチしているとは言い難い。
必要な情報は適時提供され、パートナー各社とは個別のミーティング機会が度々設けられており、IDFのような場所で一堂に会するメリットも薄い。さらにEMSやODMが主に中国などの中国語圏に位置している以上、情報発信先やミーティングすべき相手の所在は偏っている。PCやモバイルデバイスを取り巻く情勢の20年間での変化が、IDFの意義を失わせたのだというのが筆者の考えだ。
「PCが斜陽になった」のがIDF終了の原因だという人もいる。成長余地が少なくなったものを斜陽だと言えばそうだが、スマートフォンやタブレットの市場が伸びてなお、PCは一定の販売シェアを維持している。恐らく今後数年先もこの情勢に変化はない。PCを取り巻く環境や開発スタイルの変化から、「IDFのようなイベント形式での情報発信や情報交換」を行う意味がなくなったというのが正しいだろう。
現在、さまざまな最新デバイスが日々世界の市場へと投入され続けているが、その多くは深センなどの開発者らが集まる市場で設計と製造が行われ、各社のブランドで提供されている。
パートナーとの関係強化を主眼に、世界規模で年2回以上開催されてきたIDF。それが終了となったのは、かつて「Win-tel」と呼ばれた業界強者であるMicrosoftとIntelの2社によって構築された支配的なPCエコシステムが、本当に終焉(しゅうえん)を迎えたことを意味しているのだろう。
先日、米ニューヨークで開催された小売業界向け展示会でIntelの関係者数名との話で、「IoT(組み込み)のような世界では、Intelは地域ごとに閉じた組織運営を行っているのではなく、むしろ地域をまたいで顧客同士を結び付けることでビジネスを拡大する方向を模索している」というコメントを聞いた。
Win-tel体制が権勢を振るった時代は過ぎ去り、Intelはビジネスモデルそのものを変化させようとしているのかもしれない。
IDF16の開催3日目には、IDFとは別に「ISDF16」というFPGAのAlteraパートナー向けのイベントが開催されており、クルザニッチ氏が講演を行っている。実質的に、このステージが最後のIDFとなった
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