Intelが開発計画で採用する「Tick-Tock」モデルでは、Tickでプロセスルールを変更し、Tockでアーキテクチャを変更する。Haswellは、Tockのアーキテクチャの変更が行われる世代に相当する。Intel Coreアーキテクチャとしては第4世代にあたるもので、第2世代のNehalemがメモリコントローラの統合やTurbo Boost Technologyを導入したアーキテクチャだとすれば、第3世代のSandy BridgeではグラフィックスコアとCPUコアを同じダイに統合し、リングバスを採用したアーキテクチャとなる。Haswellは、NehalemとSandy Bridgeの基本部分を受け継ぎ、「低消費電力」「高パフォーマンス」といった相反する2つの特性を強化すべく、アーテクチャの大幅に改良した。
IntelがHaswellについて言及するとき、これまでも「IntelのPC向けCPUとして初のSoC採用」「アイドル状態における消費電力を現行の20分の1以下」といった目標を掲げてきた。Haswellは、こうした目標の実現に向けてアーキテクチャを改良してきている。Haswellの開発方針では、処理能力や電力管理に加えて「モジュラー化」について言及している。
これは、CPUコアの数を2基や4基といったバリエーションから選択するだけでなく、グラフィックスコアも処理要求に応じてGT1、GT2、GT3といった形で選ぶことが可能で、そのコンビネーションから複数のバリエーションが派生する。また、グラフィックスコアの選択と合わせて処理性能の上限を設定できるため、PCシステムのデザインにおける柔軟性が向上する。PCメーカーが作りたいデザインに合わせて最適なCPUを選べることが、SoC(System on Chip)のカスタマイズ的なメリットといえる。
Haswellの低消費電力を象徴するのが「S0ix」ステートの存在だ。ACPIで定義するステートには、アクティブ(スタンバイ)のS0、そして、複数のスリープ状態を示すS1〜S4と計5種類がある。S0はほぼ活動状態で、アクション要求から反応までの時間が短い一方、アクティブとほぼ同じ状態で待機しているため消費電力が大きい。スリープ(S3)やハイバネーション(S4)は、システムの動作がほぼ止まっているため消費電力は極めて少ないが、アクティブ状態への復帰に時間がかかるのが難点となる。
Windows 8では、システムがアイドル状態でもバックグラウンドでネットワーク通信を行い、Notificationsの警告を発したり、メール送受信やSNSアップデートで手元の動作を常に最新状態にしておいたりできる「Connected Stand-by」と呼ぶ機能を実装するが、S0では消費電力が大きく、S3とS4では復帰までの時間がかかりすぎる。これでは、スマートフォンやタブレットデバイスと比べてPCは使いにくいということになってしまう。
そこで登場するのが「S0ix」と呼ぶステートだ。消費電力はS3とS4と同じながら、アクション要求がシステムからあるとすぐにアイドル状態から復帰して活動を再開するなど、S0に近い挙動が可能だ。PCでは待機時間のほうが多い傾向にあるので、S0ixステータスにおける動作はバッテリー駆動時間に大きく影響する。このほか、パワーゲーティングや細かい電圧制御を組み合わせることで、これがアイドル時において従来の20分の1という低消費電力へと結びついているのだろう。
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