パフォーマンスでは、CPUコアとグラフィックコアにアーキテクチャを改良している。基調講演で行った動作デモでも「従来よりパフォーマンスの伸びしろが大きく」「同パフォーマンスならさらに低消費電力」といった特性をHaswellは示している。
CPUコアのアーキテクチャでは、演算パイプラインのポートが従来の6基から8基に拡張して、命令スループットの向上を図っている。また、ベクトル命令セットでは、AVX2を採用した。サイクルあたりの処理データ数はIvy Bridgeに比べて2倍になったほか、キャッシュメモリのスループットも倍増する。
グラフィックコアでは、複数のモデルを用意する方針を採っている。例えば、携帯利用を重視するタブレットPCであれば、複雑で長大なデータ処理が必要なグラフィックス処理性能を必要としないため、小型で低消費電力なグラフィックスコアを統合して、システム全体の消費電力を抑える。一方、大画面ディスプレイを搭載するノートPCでは、動画編集を行ったり、多彩なエフェクトを用いた3Dゲームを動かす機会も多い。この場合、より強力なグラフィックスコアを統合することで、こうした処理に対応できる。これがローエンドからハイエンドまでカバーするHaswellの強みだ。
グラフィックスコアのハードウェア処理エンジンも強化した。SVCやモーションJPEGといった動画コーデックへの対応や、MPEG2のハードウェアエンコードが可能になっている。再生処理性能も、統合グラフィックスコアだけで4K動画再生が可能なレベルという。VQE(Video Quality Engine)というノイズ除去や手振れ補正などを行う動画処理エンジンも搭載しており、低消費電力の比較的非力なPCでも、動画の補正処理がこなせる。
こうしたハードウェア支援機能は、主にタブレットPCやローエンドのUltrabookでの利用を視野に入れており、より低い消費電力で動画再生や編集作業を可能にする。なお、ここで紹介した機能は、GT1、GT2、GT3のいずれにも実装するが、GT3ではVQEがGT2の2倍以上という処理能力を有するなど、「Slice」と呼ばれる処理単位でそのままスケールアップするようになっている。一方で使わないSliceは、パワーゲーティングで電力供給を止めるため、GT3であってもフルパワーで稼働しない状態では消費する電力も少なくて済む。
Haswellに関して興味深いのは、IDF 2012の説明において、技術的なマーケティング・メッセージを前面に打ち出さず、「低消費電力」「ノートPCからタブレットPCまで幅広いフォームファクタで動作」といったユーザーのメリットを直接訴求していることだ。基本機能はSandy Bridgeとほぼという理由もあるだろうが、以前は基調講演で時間をかけて詳しく解説していたTurbo Boost Technologyの動作概念や、グラフィックスコアを統合するメリットについて、IDF 2012では言及していない。
もう1つ気になるのは、Haswellのダイ写真がIDF 2012でも公開していないことだ。これまでのIDFでは考えられない。説明で示す特徴以上に、依然として謎が多いというのが、IDF 2012におけるHaswellの姿といえるかもしれない。
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