レビュー
» 2017年09月26日 09時00分 公開

トラックボールユーザーの福音となるか? ロジクール「MX ERGO」を試す(2/3 ページ)

[山口真弘,ITmedia]

20度の傾きにより筋肉活動量を20%軽減

 トラックボールという製品は、他のPC周辺機器に比べて、仕様だけでは製品の性格や使い勝手が見えにくい。ここでは実際の使い勝手について、筆者が1週間ほど使った感想を踏まえつつ見ていく。

 本製品の大きな特徴として、本体の角度を2段階で変えられるギミックを有していることが挙げられる。具体的には、本体の下部が斜めに大きく削り取られており、土台である金属製のプレートを倒すことによって、トラックボール本体が外側に20度傾く形になる。これにより、どちらか使いやすい角度で操作を行えるというわけだ。ちなみに中間の角度というのはなく、ゼロか20度の二者択一となる。

通常の状態

20度傾けた状態

通常の状態で握ったところ。マウスとほぼ同じ持ち方だが、小指がやや不自然に浮く格好になる

20度傾けた状態で握ったところ。小指から手の付け根までがデスク面に着くため安定して操作できる

通常の状態を別のアングルから見たところ。本体下部に空間があることが分かる

20度傾けた状態を別のアングルから見たところ。本体下部の空間がなくなり、ぴったり接地している

 同社によると、人間の前腕部がもっともリラックスするのは、人が握手をする際の手首の角度なのだそうだ。実際、試しにデスク上で肘をついて腕を前方に伸ばしてみると、手のひらはデスク面と完全に平行にならず、わずかに外側を向くことが分かる。本製品を20度傾けると、そのポジションに近い手首の角度を維持できるため、結果として疲れにくくなるというわけだ。

 手首を立てて保持するマウスは古くから存在しているが、マウスではなくトラックボールで、かつ角度が固定ではなく切り替えられるのは珍しい。同社によるとマウス使用時に比べて筋肉活動量を20%軽減できるとのことだが、使ってみると確かに疲れにくく、なるほどと納得させられる。

 ちなみに角度変更のギミックは、トラックボール本体に手を載せた程度では倒れず、力を入れると初めてパタンと倒れるという、絶妙なバランスで成り立っている。筆者は利用が長時間に及んでデスクに触れている手が汗ばんだり、気分転換をしたい場合を除いて、ほぼ常時、傾けた状態のまま使い続けている。多くの人はこの角度、つまり20度傾けた状態で使い続けることになるのではないかと思う。

底面。ずしりと重いメタルプレートが取り付けられており、高い安定性を誇る

メタルプレートはトラックボール底面にマグネットで吸着する構造になっており、ドライバなどは不要で取り外せる

 また本製品には、ボール上のボタンを押すと一時的に解像度を上げて細かい操作を可能にするプレシジョンモードが用意されているので、ポインタが目的のボタンに近づいたらこのモードに切り替え、細かい操作を行うことができる。

 このモードであれば、例えばチェックボックスを順に1つずつクリックして外していくような、マウスでもかなり神経を使う細かい操作も難なくこなせる。この切替ボタンは左ボタンを押したままの状態でも反応するので、ウィンドウをドラッグしながらモードを切り替えるという芸当も可能だ。

 以上のように、全体的に無理なく使えて操作性は良好、疲労もたまりにくいという評価なのだが、唯一気になったのが、不意に右ボタンを押してしまう場合があることだ。トラックボールでは、マウスとは異なる握り方をすることから、思わぬ位置に力が加わることがある。この製品はやや右ボタンが押されやすいようで、しばらく注意して観察していたところ、どうやらホイールを手前に回転させる際などに中指に力が入り、その下にある右ボタンを押してしまうケースがあるようだ。

 筆者の中指の力が強いのかと思ったが、他製品でこの症状が起こったことはないので、どちらかというと本製品の設計に依存するか、あるいは左右ボタンのマイクロスイッチを比べた際に右がやや緩いといった部品側の原因ではないかと考えられる。

 ほかのユーザーで再現性があるかどうかは不明だが、筆者の場合は本体の角度を変えても起こるので、これについてはいまのところ「押さないよう気をつける」くらいしか対策がない。使い続けると馴染んでくる可能性もあるが、念のため書き留めておきたい。

 ちなみにボールについては、トラックボールとしてはそれほど径が大きいわけではないが、その割にはかなりコントロールしやすい部類だ。耐久性についてはいまのところ不明だが、急にあらぬところにポインタが飛んでいくなどの症状は皆無で、ストレスはない。なお、ボールの取り外しは、本体の裏面にある穴に棒を刺し、後ろから押し上げることで行える。

ボールの径は意外と小さく、24mm前後(公称値ではない)といったところ

同社マウスと共存でき、ポインタ速度も個別に変更が可能

 話がやや前後するがインストールの手順を見ていこう。本製品の利用にあたってはまずはPCにユーティリティ「Logicool Option」をインストールする。本製品にはCD-ROMの類は添付されていないため、同社サイトにアクセスしてダウンロードを行い、指示に従ってインストールを実行する。

 インストールが完了したら、Unifyingレシーバー利用か、もしくはBluetoothかを選んでデバイスの追加を行う。完了したら「Logicool Option」の画面に製品型番および画像が表示されるようになるので、そこでボタンなどの割り当てを行う。特に特殊なフローではないので、迷うことはないだろう。

「Logicool Option」の設定画面。接続されているマウスやトラックボールごとに用意されている

ボタンへの割り当てはここで行う。キーストロークの割り当ては可能だが、ゲーミングマウスのようなマクロの登録はできないようだ

ポインタの速度はマウスやトラックボールごとに設定できる

 もし、すでに「Logicool Option」が導入済みで、登録されている別のマウスを今後も併用する場合は、画面右下の「デバイスの追加」から本製品を追加する作業を行う。手順は新規のペアリング作業そのものなので特に難しくはないのだが、今回試した際は、作業が完了しても本製品が「Logicool Option」上に表示されず、それ以前に導入済みだったマウス「MX Anywhere 2S」しか表示されない状態に陥った。このままでも基本操作は可能だが、本製品に合ったボタン割り当てなどが行えない。

 しばらく試行錯誤したのち、再度「Logicool Option」をダウンロードして上書きインストールしたところ、「Logicool Option」の設定画面の前に2つのマウスを選択する画面が正しく表示されるようになった。この画面で本製品を選択することで、本製品に合わせたボタン設定などが行えるようになる。評価機ゆえの症状かもしれないが、今回の筆者と同じ状態に陥った場合は、「Logicool Option」をアンインストールせずに上書きインストールしてみることをおすすめする。

すでに使用中のマウスがあり、そこに本製品を追加する場合は、右下の「デバイスの追加」をクリック

デバイスの追加画面が表示された。レシーバを使って接続する場合は左の「UNIFYINGデバイスの追加」を、Bluetoothで接続する場合は右の「BLUETOOTHデバイスの追加」をクリックする。ここでは前者を選択

指示に従って本体の電源をOFF→再度ONにし、しばらく待つ

ペアリングが完了した。「ペアリングできませんでした」と表示される場合、電源を入れ直して再試行するとすんなりつながることが多い

元の画面に戻ると、2つのマウスを選択する画面が表示されるようになっているので、新しく追加したMX ERGOを選択

初回設定時はMX ERGOの特徴を紹介する画面が表示される。評価したのが製品発売前だったため今回表示されたテキストは不完全だったが、いずれ修正されるだろう

 ところで、ここまでの流れでお分かりいただけると思うが、「Logicool Option」上で2台の製品を認識した場合、設定はそれぞれ個別に行う仕組みになっている。マウスやトラックボールによってボタン配置は違うことから、ボタンの割当は別々に行えて当然なのだが、個人的にはポインタの速度を個別に設定できるのがありがたい。

 というのも、トラックボールは一般的に少しのボールの回転でポインタをダイナミックに動かすため、マウスよりも移動量を大きくしておく必要があるからだ。もしこれを無理に共通化しようとすると、マウスは快適に使えるがトラックボールはどれだけボールを転がしてもなかなか長距離を移動できなかったり、逆にトラックボールは快適に使えるがマウスはほんの少し動かしただけでポインタが画面の端まですっ飛んでいくなどの症状が起こる。

 その点、この「Logicool Option」であれば、接続したマウスやトラックボールそれぞれについて設定が行えるため、ポインタの移動量も別々に設定できる。1つのPCにマウスとトラックボールを接続した場合、こうした個別設定ができないが故に片方の機器を徐々に使わなくなることが多いので、これは非常にありがたい。ただ、新しいデバイスを追加するたびにいちから設定するのは不便ではあるため、設定済みの内容をコピーできる機能があれば、さらに使いやすくなるのではと感じる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.