AmazonとGoogleのバトルが激化 ユーザー不在の締め出し合戦へITはみ出しコラム

» 2017年12月10日 06時00分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 AmazonとGoogleのバトルが激化しています。

 Googleは12月5日(米国時間)、Amazonの「Fire TV」と「Echo Show」からYouTubeを引き上げると声明を出しました。Echo Showでは同日からYouTubeが見られなくなっています。Fire TVでは2018年1月1日からYouTubeを利用できなくなる予定です。

 事の始まりは3カ月前、GoogleはEcho Show向けにAmazonが用意したYouTubeアプリがGoogleの利用規約に違反しているとして、Echo ShowでYouTubeを使えないようにしました。その直後、AmazonはGoogle系列のスマートホーム企業Nestの一部製品をAmazonで販売停止にして対抗します。

 その後、Amazonは11月にWebアプリ経由でのYouTubeへのアクセスを復活させていたので、両社の関係改善が進んでいるのではないか、との見方もありました。

 ちなみに、Amazonは2015年に「Chromecast」(と「Apple TV」も)の取り扱いをやめています。また、Google Cast(Android TVとかChromecastとかのこと)にはAmazonプライム・ビデオのアプリを提供していません。

 こうしたAmazonの対応にGoogleは「Amazonがお願いをきいてくれないのがいけないんだ」と今回の声明を出したのです。

battle 1 米Amazonのジェフ・ベゾスCEO(左)、米Googleのスンダー・ピチャイCEO

 それぞれのサービスと製品の関係を表にしてみました。

battle 2 それぞれのサービスと製品の関係

 Echo Showは「Amazon Echo」シリーズのディスプレイ付きモデルですが、日本では販売していません。そもそもEcho Showのディスプレイは7型と小さく、ユーザーにとってYouTubeは主目的ではなさそうですが、YouTubeを見るためにFire TVを買ったというユーザーは多そうです。なので、これは人質をとっての脅迫めいています。

 Google CastではPCのChromeブラウザからキャストすることでAmazonプライム・ビデオを視聴できますが、一手間いります。ここでGoogle Cast専用の高品質なAmazonプライム・ビデオアプリを提供しちゃったら、「Fire TVは買わなくてもいいや」ということになりそうです。

battle 3 ChromecastにAmazonプライム・ビデオアプリを提供しないなら、FireTVからYouTubeを使えなくしちゃうぞ

 2015年にChromecastとApple TVをAmazonから締め出したとき、米Amazonのジェフ・ベゾスCEOは「だってChromecastもApple TVもAmazonプライム・ビデオを見られないから、そんなものを売ったらうちのお客さんが混乱してしまう」と言い訳しました

 それなら、先日ようやくApple TVでAmazonプライム・ビデオが見られるようになったので、AmazonでApple TVの端末も売らないと一貫性がないですね(今のところ売っていません)。

 Amazonは出版社とも販売条件でもめました。「顧客第一」の主義で、少しでも安く便利に商品を顧客に届けたい一心なのかもしれませんが、その交渉が難航することで顧客がとばっちりを受けることもしばしば。今回のバトルはその最たるものです。

 このバトル、どちらかというとAmazonが有利そうです。以前ならGoogleは「検索結果でランクを下げるぞ」と脅せたかもしれませんが、最近は買い物のための検索をAmazon内で行ったり、InstagramやPinterestを使うユーザーが増えていたりと、Amazonにとってそれほど痛くないでしょう。そもそも、AmazonはGoogle検索にとって大事なお客さまです。

battle 4 Google検索結果のトップに表示されるAmazonの広告

 ユーザーとしては、ここはひとつ、Amazonさんにものすごく有利な条件を提示してGoogle CastにAmazonプライム・ビデオアプリをお迎えすることで、バトルを終わらせていただきたいものです(Apple TVへの降臨が発表から実現までに半年もかかったのは条件交渉が難航したからといううわさです)。

 いろいろな製品やサービスでバトル状態のAmazonとGoogle。Amazonが開拓したスマートスピーカー市場も戦場の1つです。もちろんAmazonで「Google Home」は売っていません。

 ちなみに、12月2日に「Google Home Mini」に「Alexa(Amazonの音声アシスタント)って知ってる?」と尋ねたときには「Alexa……」と言ったきり黙り込んだんですが、12月9日の朝にもう一度聞いたら「Alexaですか。すてきな声ですよね」とか「Alexaですか。一度会ってみたいです。お天気の話とかで盛り上がれそうです」とか、なんだか友好的なことを言うようになっています。

 一方、Amazonの「Echo Dot」に「Googleアシスタントって知ってる?」と尋ねたら「うわさを聞いたことはあります」とちょっとそっけない。Google Homeについても同じ答えでした。

battle 5 「Amazon Echo Dot」(左)と「Google Home Mini」(右)

 もっと仲良くしていただきたいものです。

バックナンバー

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年01月15日 更新
  1. 「Windows 11 2024 Update(バージョン24H2)」の既知の不具合まとめ【2025年1月14日現在】 (2025年01月14日)
  2. 実売1万4800円で手に入るエレコム「Touch Book for iPad 10.9インチ(第10世代)」は理想のキーボードケースとなるか? 試して分かったこと (2025年01月13日)
  3. Socket AM5向けの新チップセット「AMD B850/B840」搭載マザーボードが一斉デビュー (2025年01月14日)
  4. この機に“Sandy Bridge”を卒業する人も――年末年始はWindows 11への移行が加速 (2025年01月11日)
  5. アンカー、カード型紛失防止トラッカーを自主回収 周囲の磁気カードに影響を及ぼす恐れ (2025年01月14日)
  6. エレコム、携帯型ゲーム機の収納にも向くボディーバッグなど4タイプを発売 (2025年01月14日)
  7. NVIDIAが“夢のPC”を無料制作できるキャンペーンをスタート/「Creative Cloudフォトプラン(20GB)」を1180円から1780円に値上げ (2025年01月12日)
  8. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
  9. GeForce RTX 50だけではない! 社会がAIを基礎にしたものに置き換わる? 「CES 2025」で聴衆を圧倒したNVIDIAの最新構想 (2025年01月10日)
  10. 仕事に役立つ独自AIアプリを用意! ASUS 「ExpertBook P5」はビジネスノートPCの新形態となるか? 実際に試して分かったこと (2025年01月15日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2025年