音声でさまざまな操作が行えることで、ライフスタイルそのものを変える存在と言われる「スマートスピーカー」だが、それだけに従来は到底考えられなかったようなトラブルもつきものだ。
スマートスピーカーがいち早く普及している米国では、深刻な事件から、ちょっとした笑い話の類まで、さまざまなトラブルが発生している。今回は少し趣向を変えて、過去にスマートスピーカー絡みで少なからず話題になった、トラブルや笑い話をまとめた。
これは決してスマートスピーカーという製品をおとしめるのが目的ではない。これらのトラブルはいずれもスマートスピーカーの特性ゆえに起こったものであり、スマートスピーカーの現状や課題を理解するのに実に分かりやすい事例であることが多いからだ。
問題点は既に解消し、現在のスマートスピーカーでは起こり得なくなっているものもあるので、そのつもりでご覧いただきたい。
スマートスピーカーは、ユーザーの音声データをクラウドに保存している。ユーザー側でオフに設定することもできるが、応答の精度を向上させる必要もあり、大抵のユーザーはデフォルトのまま使用しているはずだ。つまり家庭内でのやりとりのうち、スマートスピーカーのマイクが拾える範囲の音声が、クラウドに保存されていることになる。
これに目を付けたのが検察だ。殺人事件の証拠として「Amazon Echo」の録音データをAmazon.comに要請するという出来事があった(米The Infromationの報道)。
これは2015年11月に米アーカンソー州で起こった殺人事件だ。被害者の遺体が発見されたバスタブのすぐ近くにAmazon Echoが設置されていたことから、容疑者との会話が記録されているのではないかとみた警察が、Amazonにデータの提出を要求した。
Amazonは言論の自由とプライバシーを盾にいったんはこれを拒否し、異議申し立てを行ったものの、その後、容疑者がデータの提出に同意したことにより、最終的には引き渡しに応じた模様だ。
最終的にどのような結果が出たのかは明らかではないが、容疑者の同意さえあればデータを引き渡せるという事例ができてしまったことで、今後同様のケースは起こりやすくなったと言えそうだ(幸いにして日本ではまだ同様の事例はない)。
スマートスピーカーは、PCやスマートフォンが使えなくても、音声だけで操作できてしまう。米テキサス州で起こったのが、6歳の女の子がAmazon Echoと会話をする中でうっかり注文を成立させてしまい、約2万円のドールハウスと大量のクッキーが自宅に届いたという事件だ(米The Vergeの報道)。
これだけならほほ笑ましいニュースで終わるはずだったのだが、この話題を取り上げたサンディエゴ州のニュース番組の中でキャスターが、女の子が注文に用いたであろうフレーズを読み上げたところ、これを注文だと勘違いしたテレビの前のAmazon Echoが、一斉にドールハウスを注文する「二次被害」が発生。少なからぬ数のドールハウスが実際に出荷に至ったようだ。
この他、最近ではアニメ「South Park」で、登場人物がAmazon Echoを使ってショッピングカートに品物を追加するシーンで、テレビの前のAmazon Echoが同じ動きをする事件もあった。こちらは「音声注文を使って他人のショッピングカートをがらくたで一杯にする」というジョークで、劇中にはEchoそっくりのデバイスが登場しているだけに、上のケースに比べるとより故意的だ。
これも音声認識にまつわる事件。英ロンドン市のユーザー宅でペットとして飼われているヨウムが、飼い主をまねてAmazonに商品を注文した(英The Sunの報道)。
声まねが得意なペットであれば、飼い主が繰り返し発するウェイクワード(スマートスピーカーを使うときに呼び掛ける言葉)を覚えても不思議ではないが、注文まで完了させてしまうのは珍しい。
ちなみに注文されたのは約1500円のギフトボックス。その後、飼い主がビデオカメラを仕掛けたところ、実際にそのヨウムが「Alexa」というウェイクワードを発し、Amazon Echoが反応する様子がきちんと映っていたのだそうだ。
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