“ほんやくコンニャク”の実現はいつ? 音声認識・翻訳技術は「言語」の壁を取り払うか特集・音声言語インタフェース最前線(2/4 ページ)

» 2018年04月20日 12時30分 公開

スマートフォン活用と進化する翻訳エンジン

 「海外旅行先で相手と意思疎通を図りたい」というニーズに対し、最近になって登場した強い味方がスマートフォンだ。

 電子辞書やフレーズ集などは昔からあったが、スマートフォンは非常に高機能であり、文章翻訳もこなしてくれる。最近ではさらに高度なものとして、撮影した写真の中にある単語や文章の翻訳をしたり、音声を取り込んで通訳をこなしてくれるアプリまで存在する。

 前者が便利な例を挙げるとレストランだろうか。海外のメニューは、日本のように写真付きではなく、料理名と解説と値段のみが記されたものが一般的だ。観光客向けではない地元のレストランに行ったときなど、現地語でしか解説が書かれていないことは多い。

 例えば、フランスでインド料理屋や中華料理屋に入ったとき、料理名から解説まで全てフランス語で書かれているため、英語しか分からない人間に読み解くのはなかなか難度が高い。こうしたときにスマートフォンのアプリが大いに役立つ。

[慣れない外国でもスマートフォンと翻訳アプリがあれば心強い

 スマートフォンの翻訳アプリとしてメジャーなのは「Google Translate」と「Microsoft Translator」の2つだ。どちらもAndroid版とiOS版の両方が用意されており、前段で紹介した文章や単語翻訳の他、写真撮影によるOCR翻訳、音声中継による通訳機能がサポートされている。無料で利用できる点もポイントだ。

 また、Microsoft Translatorではグループ中継機能が用意されており、同じグループ内のあるメンバーがスマートフォンのマイクに向かってしゃべると、残りのグループメンバーらの端末にはそれぞれの言語(同じ言語でなくてもよい)への翻訳文が表示され、一種のリアルタイム通訳のようなことが可能となる。

 2017年末に日本マイクロソフト社内で記者向けの忘年会が開かれ、同社執行役員常務でマーケティング&オペレーションズ部門担当のマリアナ・カストロ氏があいさつした際、本人が英語とスペイン語を混ぜたスピーチでMicrosoft Translatorに話しかけると、参加者のスマートフォンにインストールされた同アプリが日本語に自動翻訳して画面に表示するという「Microsoft Translator Live」機能が紹介された。

Microsoft Translator Liveの仕組み

 このように非常に便利な翻訳アプリだが、いくつか弱点がある。その1つが「オフライン利用」だ。Google TranslateとMicrosoft Translatorともにクラウド側の処理機構を使っており、翻訳処理中にスマートフォンを「機内モード」に変更するとエラーで処理が止まってしまう。

 最近でこそ安価なローミングサービスが増えつつある他、欧州内では2017年6月以降は国をまたいだローミング利用が無料になっているが、「海外ではデータ通信をオフにしている」というユーザーもいまだ少なくないはず。そんなときは現地の無料Wi-Fiなどを活用することになるが、常に使いたい場所でWi-Fiが利用できるわけでもない。

 翻訳需要が旅を主目的としたものならば、こうした事態は致命的であり、GoogleとMicrosoftともに両アプリ向けに事前にダウンロード可能な言語パックを提供している。これを現地に移動する前にあらかじめダウンロードしておくことで、到着後すぐにオフライン環境であっても翻訳アプリを利用できる。

オフライン利用には事前に辞書のダウンロードが必要

 これでめでたしめでたし……といきたいところだが、まだまだ話の続きがある。各言語の単語やフレーズごとに、それに当てはまる対訳を記録し、データの塊としてサーバ上で統計処理することで翻訳精度を向上させる仕組みは「統計的手法による機械翻訳」(SMT:Statistical Machine Translation)と呼ばれ、一昔前までの一般的な手法だった。

 単語単位や汎用(はんよう)的なフレーズには特に有効なため、「旅行先での翻訳用途」には十分な効果を発揮するはずだ。一方で、文章としての前後のつながりや、単純に単語のみを見るだけでは意味を取り違える可能性の高いフレーズなど、翻訳として「どうしても不自然」というケースは少なくない。翻訳精度が上がったといわれる昨今においてもなお、欧州言語圏同士の翻訳に比べ、日本語への変換は不自然さを伴う。

 そこで登場したのが機械学習モデルを採用した「ニューラルネットワーク」型の翻訳サービスで、“より自然”な翻訳を目指している。このあたりは1年ほど前に掲載した「Skypeのリアルタイム翻訳が日本語対応 SFの世界に一歩近づいた?」の記事でも紹介した通りだ。

 この翻訳エンジンの切り替えについて、Googleは2016年9月に成果を報告しつつ、同年11月にGoogle Translateへの導入を発表している。Microsoftも2016年11月にその成果を発表して検証ページをオープンしており、先ほどの記事はこの成果において日本語対応を示したものとなる。

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