林信行の「iPhone XR」先行レビュー 2018年の本命iPhoneから見えた「iPhone X」の定義(1/3 ページ)

» 2018年10月23日 19時00分 公開
[林信行ITmedia]

 6色展開のポップな見た目とお手ごろ価格で、「iPhone X」体験をより身近にする「iPhone XR」がいよいよ発売される。

 同機の登場によってひもとかれた「iPhone X」体験の本質や、Appleが犯したただ1つの過ち、そしてiPhone XSではなくXRだからこそできる写真撮影法に触れつつ、同製品の魅力に迫る。

「iPhone X」の魅力をより手軽に

 10月26日金曜日、ついにiPhone XRが発売される。iPhone Xの魅力を、より多くの人々に広める2018年版iPhoneの大本命だ。

 2018年、Appleは「全てのiPhoneはiPhone Xになる」と宣言した。つまり、ホームボタンを廃したことで大きく広がった画面上に指をすべらせて情報を操作する「fluid interface」を念頭にデザインされた新世代のiPhoneのことだ。

 iPhone XRは、このiPhone Xの魅力をより多くの人に広めるべく作られた。価格は先に発売されたiPhone XSなどと比べても2万5000円近く手ごろながら、iPhone Xシリーズとしての魅力がしっかり伝わるような製品に仕上げてある。

 “廉価版”製品というと、安さと引き換えに処理能力の低いプロセッサを搭載していたり、ストレージの容量が足りなかったりして、その製品を使い続ける間、毎日ずっと「自分は安いものを買ってしまったのだから、この不自由は自分のせいだ、仕方がない」という、逃げ道も終わりもない我慢を強いられることがある。

 Appleのアプローチは違う。実際、iPhone XRの頭脳ともいえるプロセッサの性能も上位モデルと同じならば、64GBから始まるストレージ構成も同じ、絞り値f/1.8の広角1200万画素広角カメラも同じで、iPhone Xたらしめている魅力を妥協することなく享受できる。

  コストを抑えながらも、その中で最上質の体験を目指したiPhone XR。その秘密を探ることは、そもそも「iPhone X」とは何なのかをひもとくことでもある。

 6色展開の中から好みの色を選べることも魅力の新iPhoneだが、今回、Appleが筆者に託したレビュー用機材の色は黒だった。これを「色の楽しみではなく、まずはiPhone Xとしての出来栄えを試して欲しい」というメッセージと読んで、その通り試してみたい。

6色のカラーバリエーションの中から筆者の手元に来たのはブラックモデル

Appleが妥協しなかったiPhone X品質

 iPhone Xは、今、まさに始ろうとしているAI時代を先導するスマートフォンであり、最大の特徴は名前に「bionic」を冠したプロセッサが使われていること。どうやら、この点は最も重要なポイントだったようで、iPhone XRにもはるかに高価な上位モデルであるiPhone XSと同じA12 Bionicプロセッサが搭載されている。

 つまり、これから続々と登場するAI(機械学習)を利用した未来世代のアプリをフル性能で享受できる(参考記事:「iPhoneで広まる新時代のAIアプリを林信行が解説」 )。

 プロセッサが直接利用できるメモリの大きさが違うため(XSの3.67GBに大して2.75GB)、ベンチマークテストで比較をすると数%の性能差は出るが、ほとんど無視できるレベルの差だ。ストレージ構成も容量的には最小64GBからという点はiPhone XSと同じ。最も安価なモデルを選んでも、ある程度の水準の体験が得られるように保っているのが伺える。

 そしてカメラ性能やFace IDで顔認識に用いられるTrueDepthカメラもiPhone XSと同じ仕様で、背景をきれいにぼかしたポートレートモードでの自撮りもできれば、Memojiも利用できる。背面のカメラも基本的にはiPhone XSと同じ仕様だが、iPhone XSでは望遠レンズを併設したデュアルレンズ仕様なのに対して、iPhone XRはレンズが1つで、(デュアルレンズ機のように)被写体と背景の距離の違いを立体的に把握することはできない。

 このデュアルレンズによる立体認識は、iPhone XSの売りの1つでもあるポートレート撮影した写真の背景のボケ感を後から変化させる機能などでも利用されている。ではシングルレンズのiPhone XRでは、この機能が利用できず、そこが差別化ポイントなのだろうか?

 ここが面白いところだが、そうではないのだ。なんとiPhone XRではA12 bionicのAI的な機能(機械学習)により、カメラに写っている人を認識している。これを利用して、被写体が人の場合に限り、被写体と背景をAI(機械学習)による認識で切り分け、背景のぼかしを加えることができるのだ。

シングルレンズのiPhone XRでもポートレート写真で背景をぼかした効果を得られる。A12 bionicのソフトウェア処理によるものだ。モデルはAppleイベントの公式写真で話題になったモデルの市川渚さん

 iPhone XSでは、2つのレンズを使って光学的かつ正確な被写体認識を行うが、それができないiPhone XRでもbionicプロセッサを活用して、ある程度正確に人物の背景をぼかすことができる。

 これが試してみると、なかなか面白い。もちろん、iPhone XSの写真と比べると、XRのポートレート写真は、不自然になることが多いのは事実だ。だが、プライベートでの撮影で使う分には全く問題にならない十分以上の品質である(なお、XRのポートレート撮影の特殊さ故に、XRでしかできないちょっとした面白い遊びができることが分かった。これについては後述する)。

 レンズが1つなので、望遠はデジタル方式で5倍まで(XSは10倍まで)だが、ビデオ撮影の基本画質についてもiPhone XSとほぼ同様で、ステレオ録音も可能。2017年モデルのiPhone Xよりは優れている。

記事初出時、iPhone XRの発売日を誤って記載していました。正しくは26日金曜日です。おわびして訂正いたします(10月23日20時25分訂正)
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