連載
» 2018年12月28日 12時00分 公開

激化するオンライン vs. リアル店舗のはざまでMicrosoftが生き残るためには鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/3 ページ)

WindowsやMicrosoft関連の情報を日々追いかけている本連載。鈴木淳也氏がPC市場とMicrosoftの今とこれからを考える。

 毎年、年の瀬にMicrosoftとWindowsを振り返る本連載の恒例企画だが、2018年のPC業界はどうだったのだろうか。改めて2017年末に公開された記事を振り返ると、まず「2018年は世界的にPCの販売がプラス成長に転じる?」という見出しが躍っており、総論の「伝統的なPC時代の終わりとその次」の項で筆者の予想が行われている。

英Financial Timesの10月17日(英国時間)の報道によれば、2018年は久々にPCの販売がプラス成長に転じ、長かった暗黒時代を抜け出す兆候が見られるという。

Gartnerの調査報告にもあるように、2018年のPC業界は微増、2019年は停滞というサイクルを経て、2020年に市場は再び停滞あるいは縮小に向かうと筆者は考えている。理由は先項でも触れたが、PCは既に万人向けのデバイスではなくなりつつあり、安価に広くばらまく時代は終わりを迎えたからだ。

 実際、2018年はどうだったのだろうか。

 まだ2018年を通した年間調査報告は出ていないもが、すでに一部のデータからその傾向は判明している。例えば[米Gartnerが7月12日(米国時間)に発表した2018年第2四半期(4月〜6月期)のPC出荷台数集計では、同四半期の世界でのPC出荷台数は6210万台で前年同期比1.4ポイントのアップ。

 同社によれば、PC出荷が上向いたのは過去6年間の調査で初のケースだという。特に興味深いのが米国内でのPC出荷台数で、同四半期の結果が1451万台と前年同期比1.7ポイント上昇というのはやはり6年ぶりだという。

Microsoft Microsoftが発表したSurfaceシリーズ。米国のPC出荷台数回復に貢献した?

 ここ最近の傾向として、先進国の落ち込みを途上国のPC出荷台数がカバーするという流れが強かったが、今回は米国が世界需要をリードしているという点で新しい。2017年のGartner予想で「Windows 10の本格展開にともなうPCのリプレイス需要」というものがあったが、実際に企業ベースでの需要増が数字になって表れた形だ。

 一方、Gartnerから10月10日に発表された第3四半期(7月〜9月期)の最新報告では、世界のPC出荷台数は6721万台で、前年同期比0.1ポイントの伸び。米国での結果は1477万台で前年比0.4ポイントのマイナスと、縮小・停滞傾向が依然としてみられる。

 おそらく、PC市場縮小は既定路線であり、実際に企業を中心としたリプレイス需要はあるものの、市場全体を大きく引っ張る要因にはならないと予想する。その意味では、“伝統的”なPC市場は予想よりも早く縮小・停滞するのではないかとも考えられる。

PC市場が縮小すると何が起きるのか?

 最初に、顕著な例として見られるようになるのが「売り場の縮小」だろう。小売店では貴重なスペースに商品を並べて少しでも売上を上げようとする。そのため、定期的に売れ筋商品とそうでない商品の入れ替えが発生する。

 小売店舗における商品の陳列は、売れ筋商品を見極めるバロメーターになる。米国では家電量販店の“最大手”として「Best Buy」の存在が知られているが、過去10年以上にわたって店舗の変革を見てきた方であれば、トレンドの波に合わせて店頭に並べる商品や業態を少しずつ変え、同業他社が次々と潰れていく中でしぶとく生き残っている。

 例えば、筆者が2002年から住んでいた米サンフランシスコではBest Buyの2店舗に加え、Circuit Cityが2店舗、CompUSAが1店舗、それにRadioShackが把握できないレベルで数多くの店舗を構えていた。

 だが現在、同市内で生き残っているのはBest Buyの2店舗だけだ。そのBest Buyも、当時はコンピューターや周辺機器、AV機器、そして膨大な映像や音楽ソフトの販売が中心だった。このソフト目当てにBest Buyに通っていた人もいるだろう。

 しかし、今ではそのソフトコーナーも消滅し、PCや携帯、AVメーカー各社にスペースを貸し与えて展示を行う単なるショウルームとなっている。このBest Buyに小売業界未経験のCEOとして2012年に就任したユベール・ジョリー(Hubert Joly)氏へのインタビューを行ったCNNは、その記事中で同社のことを「the last man standing(最後に残った男)」と表現しているが、なるほどとうなずく部分が多い。

 Best Buyでは白物家電や玩具も扱っているが、Searsのようなモール一体型のデパートや玩具量販店のToysrusといったライバルが次々と事業を縮小し、倒産へと追い込まれつつあるなか、残存者利益を享受している。

Microsoft ライバル企業が撤退していく中で店舗営業を継続している「Best Buy」

 ジョリー氏が同社CEOに就任した2012年当時、Best BuyはAmazon.comなどとの競争激化の中で苦戦を強いられていた。Best Buyをショウルームとして見学し、実際の注文はオンライン通販のAmazon.comなどで購入するというものだ。

 価格比較サイトやサービスが発達していたのも後押しとなり、家電量販店として薄利多売で商品を売るだけの体制では、ジリ貧になるのは目に見えていたからだ。同氏が推し進めたのは、ショウルームからさらに踏み込んだ「店舗内店舗」の仕組みで、例えばAppleやGoogle、MicrosoftにSamsungと、大手の出張店舗を店舗内に設け、集客と売上の両者を追いかけるというスタイルだ。

 一方で、2009年から始めていた携帯電話専門の小売店舗「Best Buy Mobile」は徐々にその規模を縮小し、最終的に2018年に全250店舗を閉鎖している。現在でも店舗内に携帯電話の扱いはあるが、展示コーナーの一角でしかない。また、2018年8月には高齢者向けの緊急医療サービスを提供するGreatCallを買収し、ヘルスケア事業に参入している。今後はPCのサポートから老後の医療サポートまでカバーしていこうというのだ。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2023年11月11日 更新
  1. 「Meta Quest 3」を仕事に生かす 最大5画面のデスクトップを表示するMR対応「Immersed」は神アプリか (2023年11月09日)
  2. Googleの新型スマートウォッチ「Pixel Watch 2」はどこが変わった? 試して分かったこと (2023年11月10日)
  3. 次世代の「Core Ultraプロセッサ」に採用! リアルタイムレイトレに対応したIntel内蔵GPUの“秘密”に迫る (2023年11月09日)
  4. ウエスタンデジタル、小型スティック筐体を採用したUSB外付けポータブルSSD (2023年11月10日)
  5. ウエスタンデジタル、USB 3.2外付けポータブルSSD「サンディスク ポータブルSSD」の新モデル 転送速度を最大800MB/sに高速化 (2023年11月09日)
  6. 今後のMacはどうなる!? 新型「iMac」に見るGPUを強化したM3チップの実力 (2023年11月07日)
  7. M3ファミリー搭載の新型iMacと16インチMacBook Proを試して分かったこと (2023年11月06日)
  8. 「Steam Deck」にOLEDディスプレイ採用の上位モデルが追加 (2023年11月10日)
  9. 創業111周年を迎えたシャープのターンアラウンド 技術を軸にエッジAIで他社と連携も CTO兼R&D担当役員に聞く (2023年11月08日)
  10. 18.5型のビッグサイズでデスクトップ用スタンドも付属! VGA接続にも対応したアイティプロテックのモバイルディスプレイ「LCD18HCR-IPS」を試して分かったこと (2023年11月08日)