「Cintiq 16」と海外産の廉価液タブを徹底比較 人気プロ絵師が描き心地をチェック(3/6 ページ)

» 2019年01月08日 14時00分 公開
[refeiaITmedia]

ペン性能比較

 さて、今回もペン性能を見ていきましょう。まずは遅延から。いつもの方法で、ペン先がある点を通り過ぎてから、描線がその点に表れるまでの時間を測っています。

過去の計測の様子。横線に縦線を何本も引く様子のを120fpsの高速度で撮影します
ペン遅延の結果

 何かこう……盛り上がらない結果になりました……。1/120~2/120秒ぐらいの差は恐らく感じ取れないと思います。

 次に筆圧です。今回は、オン荷重に加えて検知可能最大荷重も測るために、0付近の弱い筆圧を約1g単位で、数百グラムの高い筆圧も、大ざっぱにですがかけられる装置を作りました。

摩擦があるので弱い筆圧は以前の装置よりもコツがいりますが、なんとか測れます
オン荷重と検知可能最大筆圧の結果

 オン荷重はおおむね横並びと考えていい結果になりました。ただしその動作には差があって、XP-PenとHUIONのペンはごく軽い荷重でペン先が一段、少しだけ沈み込んで、その時点でオンとなって、それ以降は筆圧に応じて少しずつ沈んでいきます。これは実際に描くときに違和感になります。ワコムは特に一段沈み込むことなく弱い筆圧から強い筆圧まで得られるので、自然な感触です。

 検知可能最大荷重は大きな差がありました。感触としてはかなり力んで押すと500gいけるぐらいなので、ワコムはかなり余裕を持った高い筆圧に対応していると言えます。対して、普通にぐっと力を入れると150gや200gは簡単にいってしまうので、XP-PenとHUIONは筆圧が高い人はコントロールできる範囲が狭いと感じるかもしれません。

 次にジッターを見ておきます。

縮尺が分かりやすいように、テスト時の画面の高さを画像の高さに合わせてGUIと一緒に合成しています

 Cintiq 16とArtist 16 Proはほぼ問題なし、Artist 15.6はジッターと呼ぶべきなのか不明ながらわずかに不安定、Kamvas Pro 13は無視できないレベルのジッターがありました。

 総じて、遅延やオン荷重のような基礎的なスペックはXP-PenやHUIONも高レベルでこなしているものの、描いたときの自然さや取得座標の正確さ、幅広い筆圧への対応については、ワコムに一日の長があります。

その他、気づいた事など

 Cintiq 16は本体にショートカットキーなどがありませんが、個人的にはどうせキーボードを使う方が効率的なので気になりませんでした。また、複数キーストロークのマクロを画面上に置けるなど、ドライバの機能は他社より優れていると感じました。

 一方で、本体の操作で明るさなどを調整できず、アプリを起動して「ディスプレイと通信中」の表示を30秒近くも眺めなくてはならない、というのは、同社の他機種もそうですが、どうしてこんなことになっているんだ? というようなひどい体験です。

 また、バグなのか評価機個体の問題なのか、明るさの設定を下げていっても実際の明るさがほとんど下がらなくなり、下限にしてもある程度明るいままでした。暗い部屋での制作に支障が出るかもしれないので、購入を検討している人はチェックしておくと良いと思います。

 Artist 15.6とArtist 16 Proは座標のキャリブレーションの処理にバグがあるのか、一度ずれてしまうと2度目以降のキャリブレーションで何度やってもズレが直せないということがありました。設定パネルで初期化してから1回目のキャリブレーションは問題なく動作するようなので、詰まった人は試してみると良いかもしれません。

 また、本体ボタンとOSDで設定した画面の明るさと、設定アプリで設定した画面の明るさが同期しなかったり表示がおかしくなるなど、細かい不具合もあります。

 Kamvas Pro 13も上述の座標キャリブレーションの問題に似た現象が起こりました。また、傾き検知がClip Studio Paintでは正常に動作するけどPhotoshop CCでは正しく動作しない、という問題も起こりました。

 このように、ドライバの品質についてはワコムがいろいろ言われる面もありますが、他社が特にバグフリーというわけでもなく、ここに書いたことばかりでない、それぞれがそれぞれの細かく不可解な問題を複数抱えているという印象でした。

 発色についても同様です。ワコムは最近、複数の機種で、仕様に書かれていた色域が実際はもっと小さかった等の訂正をしました。それは大変残念なことですし、特に高額なProラインの機材で起こってほしくはなかったです。ですが、ならば他社がきちんとしているかというと、そうでもないです。低価格なので仕方がない面もありますが、そもそも発色に無頓着であったり、「色域 94%」とか「120%カバーレベル」などの意味不明の記述すらある闇鍋の世界です。

 これでも以前よりひどいディスプレイはずっと減ってきているのですが、どのメーカーも、顧客の無知に乗じて仕様値をマーケティングワードみたいに使う癖は直してほしいな、と思うばかりです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー