“平成”という元号が終わる2019年、「PC USER」は9月に創刊25周年を迎えます。そんな年だからこそできる、平成30年間のガジェットを振り返る連載「30年に渡る“平成のツワモノ”に光を当てる」。第1回はソニーの銀パソ「バイオノート505(PCG-505)」でしたが、第2回は松下電器産業(当時)のサブノートPC「Let's note」シリーズに迫ってみたいと思います。
松下電器産業(現パナソニック)がB5ファイルサイズのサブノートPC「Let's note」の初代機となる「AL-N1」を発表したのは、1996年(平成8年)の6月でした。800×600ピクセル表示に対応した10.4型TFT液晶ディスプレイに、120MHz駆動の無印Pentiumプロセッサ、16MBのメモリ、810MBのHDDを搭載しながら、当時は最軽量となる約1.47kgのボディー(バッテリーパック1個内蔵時)にまとめたモデルです。もちろん、OSはWindows 95で、価格は39万8000円でした(税別)。
同社は当時、「PRONOTE」シリーズなど他にもノートPCを展開していましたが、「Let's note」の名を冠したモデルはAL-N1が初めてでした。名称の由来は「世界中のビジネスマンのカバンに、紙のノートのように収まりが良く、持ち運べるパソコン」です。発売当初は、PC USERの副編集長(当時)が「海外の記者にこのモデルを説明するのが小っ恥ずかしいんですが、この名称は何とかなりませんか?」と同社広報に訴えていたのも、今となってセピア色の思い出です。
さて、本題となるモデルですが、Let's noteの誕生から1年が経過した1997年6月に投入された「AL-N2」(AL-N2T515J5)です。ポインティングデバイスをフラットパッドから光学式のトラックボール(直径は19mm)に改め、操作性を大きく改善しました。当時のタッチパッドは品質を含めて今のように万人向けのデバイスではなく、各社から発売されていたトラックボールの採用を待ち望んでいたユーザーが多く、それに応える形でのリリースでもありました。
ただ、通常はトラックボールの左右にあるクリックボタンが、本機では上下に配置されるという驚きの展開で、編集部でも物議を醸しました。実際に評価機を触ってみると、実に理にかなった並びであり、特にインターネットの上下スクロールでも直感的に行えて妙に納得した記憶があります。
もちろん、内部システムの強化も怠りがなく、MMX対応のPentium 150MHz、メモリは32MBのEDO DRAM、そしてHDDも1.6GBと順当にパワーアップしています。グラフィックスチップも、Chips & Technologies CT-65550から128ビットのインタフェースを備えたNeoMagicのMagicGraph 128ZV(NM2093)になり、細かいところではチップセットもOPTiのノートPC向けFiresStar(82C700)になっています。
そんなLet's noteですが、トラックボールの導入でボディーの厚みが増え、パームレスト下部に収納可能な2つのバッテリーパック(当時のサブノートPCは複数のバッテリーパック採用が珍しくありませんでした)も形状が変更となり、従来モデルの流用ができなくなるといったデメリットもありました。
一方で、重量はバッテリーパック2個搭載時で約1.54kg、1個で約1.39kgとAL-N1よりも軽くなっており、バッテリー駆動時間もBatteryMark 1.0による計測で約2時間33分(公称値は約3時間)と、高性能化と軽量化を果たしながら前モデル(約1時間52分)以上の駆動時間を実現しています。
その分、価格は42万8000円(税別)と初代機を上回っていますが、255(幅)×192(奥行き)×39(厚さ)mmという小型ボディー(当時としては)は大きな魅力を放っていました。
今では、ビジネス向けノートPCでスタンダードとなる地位を確立したLet's noteですが、その直系モデルともいえるLIGHTシリーズが登場するのは2002年としばらくの時間が必要でした。
また、肝心のトラックボールも複数のモデルで展開されましたが、定期的にボールを取り出してほこりなどを取り除く必要がある光学式トラックボールならではの課題や部材コスト、タッチパッドの性能向上、ノートPCの薄型化や軽量化という時代の波にあらがえずいったんは消え、2000年に復活を遂げるも数年で消えという形で収束していきました。
A4スリムボディーながらCD-ROMドライブを内蔵した「Let's note ace」シリーズや、A5サイズでカメラや携帯電話のユニットを合体できる「Let's note comm」シリーズなど、まだまだ取り上げたいモデルもありますが、機会を改めたいと思います。
※記事初出時、消費税の表記で誤りがありました。おわびして訂正します(2019年1月29日)。
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