震災8年目で改めて考える、終活込みのバックアップ天災にも人災にも耐えるバックアップ術(1/3 ページ)

» 2019年03月11日 11時00分 公開
[田中宏昌ITmedia]

 「安否確認の連絡です」

 2011年3月11日の夕方、とあるショッピングセンター内にあるカフェの店内で受けた会社からの電話に戸惑いを隠せませんでした。客先での長めの打ち合わせが終わり、スターバックスで一息ついていたのがばれたのか、先方から早くもクレームの連絡でもあったのかと、とりとめのないことが頭をよぎりました。

単なるバックアップではバックアップにならない?

 しかし、安否を確認されるという事態はそうそうありません。前世紀に起きた地下鉄サリン事件の時は、毎朝乗っていた2本前を走る電車に猛毒のサリンがまかれましたが、有給休暇を取っていたため事件の概要を把握したのは、寝坊して起きた午後になってからでした。取引先からいただいた安否確認の電話も、それは絶対に無事だよねとお話しした記憶があります。

 そう、東日本大震災が起きた8年前、出張で東京を離れて石川県金沢市に訪れていたのです。金沢市の震度は1。地震が発生した際は打ち合わせの真っ最中、窓にかかったブラインドがカタカタと音を立てるぐらいで「地震ですかね」と話に出た程度で済みました。

 ところが、です。冒頭の電話で東京はもとより、東北各地でとんでもない状況になっていることを知り、とにもかくにも空港に行かねばということで小松空港へと車を飛ばしました。混雑するカウンターをかいくぐって係員に確認したところ、案の定、東京からの飛行機は飛ばず、早くても翌日の最終便しか用意できないという話でした。

 すったもんだの末、金沢市内のホテルを確保し12日の夜に無事、羽田空港に降り立つことができました。空港内のコンビニエンスストアの食料品コーナーが、文字通りスッカラカン状態なのは予想通りでしたが、東京モノレール羽田線を含めて電車が何事もなかったかのように通常運行していたのは驚きでした。

Backup 8年前の金沢城

 当初の予定より24時間遅れで自宅に帰り、さぁ部屋を片付けようとドアノブを回しましたが、ウンともスンともドアが開きません。これは何事か、としばしドアと格闘しましたがなんともならず、最終的に蹴破る覚悟でドアを押し込んだところ、ようやっと人が入れるほどの隙間が生まれました。

 恐る恐る中に入ってみると、犯人は倒れた本棚と本で、それらがドアをふさいでいたのです。幸いなことにデスクトップPCや液晶ディスプレイ、水冷のラジエーター筒といった、いかにも倒れていそうなものが無事で、重くて気軽に移動できない本棚(高さは2mほど)がたおれていた訳で、ものすごいエネルギーが通っていったのでしょう。

 とっちらかった部屋にぼうぜんとしながらも、万が一、自宅に戻れなくなってもPCにログインしたり、NASや外付けドライブに格納したりしているデジタルデータを保護するにはどうするか、部屋にいた場合はどうやって自身の身を守るのかを否が応でも考える事態に直面したのです。

 さらに追い打ちをかけるように、ショックなことが続きました。長年お世話になっていたベテランのライターさんが突然亡くなってしまったのです。生前、さまざまな方法でデータやPCのバックアップ、心がけなどを伺っていましたが、肝心のメインPCにログインすることができず、HDDも暗号化されていたため、残されたPCやデータは泣く泣く処分という事態になったのです。

Backup PCにログインできないと、肝心のデータにたどり着けず、暗号化されたHDDにもたどり着けません

 どのようなデータを、誰のために残すのか。

 あれほど完璧と思えるバックアップが機能しなかった(想定外だった)訳で、結局、原稿データや仕事に関する撮影データといった自分のためのバックアップはともかく、家族の写真や動画データ、子供の学校や学習データといった細々したデジタルでしかないデータは、バックアップだけでなく、いざというときは他の人でもアクセスできるような方法で残しておく必要があります。そうでないと、せっかくのバックアップが生かせないからです。また、可能な限り複数のメディアに分散させることも試行しました。複数のメディアに分散させるのも、いざというときのデータ復旧の余地を少しでも増やすためです。

 よくよく考えれば当たり前のことではありますが、最近では「デジタル終活」「デジタル遺品」といったトピックが話題になっています。スマートフォンに残されたデータをどうするのか、残された遺族がデータにアクセスしたくてもスマホのロックを解除できずに悩んでいるそうです。スマホは言ってみれば“小さなPC”。事情は一緒です。

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