HoloLens 2から見るMicrosoftの「AR・VR戦略」西田宗千佳の「世界を変えるVRビジネス」(2/3 ページ)

» 2019年03月19日 06時00分 公開
[ITmedia]

それでも主軸は企業向け、狙いは「働き型改革」

 とはいえ、である。

 こうした要素があっても「一般向けにHoloLensが大量に売れる」世界は想定しづらい。一般的な感覚でいえば、HoloLens 2はまだ大げさで大きなものだし、価値の多くも「カスタム開発されたアプリケーション」があって、初めて活用できる。OSの備えるシェルの機能や実装されるWebブラウザなどの改善も行われているとみられるが、「PCやスマホと同じ事をするもの」として購入しても、満足感を得られる人は少ないだろう。

 そもそもMicrosoft自身も、そうした形は考えていない。自社ブランドのハードウェアであるが、Surfaceのような販売形態ではなく、基本的には「企業向け」への販売となる。価格も3500ドル(日本での正式販売価格は未定)と高価だが、これも、企業内で使うためのサポート体制込みの価格だ。

 米マイクロソフト・Mixed Reality Studios General Managerのロレイン・バーディーン氏は次のように話す。

 「今回の製品はとても素晴らしい出来だと思っていますが、まだ不満もあります。それは、『これでもまだ装着しているのが大変』だということです。従来比で3倍かぶりやすくなった、としているのですが、この何倍も、何倍も改善したいと考えています。なぜなら、私たちが狙うユーザーは、本当に一日中付けっぱなしで仕事をする可能性が高いからです」

米MicrosoftでMixed Reality Studios General Managerを務めるロレイン・バーディーン氏

 両手の指の認識による操作も同様に、ユーザー層を考えての改善である。

 「快適になりましたが、これにより、特に重要な点は、『分厚い手袋をした人でも容易に操作できる』ようになることです。初代モデルでは、作業用の手袋をした指を正確に認識し、自然な動きの中で操作するのが難しかったので」

 彼らが想定している初期ユーザーは、工場や工事などのいわゆる『現場』や、店舗や倉庫などの流通業といった、作業中に動き回ることが多く、両手が別の作業でふさがっており、一般的なPCやスマホの活用が、難しい仕事に従事している人々だ。そうした人々を同社は「ファーストライン・ワーカー」と呼んでいる。

 Microsoftは自社で業務支援サービスとして「Microsoft Dynamics 365」というツールを持っている。こちらではHoloLensを使ったファーストライン・ワーカー向け野業務支援を行っており、バーディーン氏もその一員だ。

 以下のビデオは、「Microsoft Dynamics 365」でHoloLens 2を活用したシーンを想定したデモビデオである。英語だが、ご覧いただければ、その考え方の一端が分かるのではないだろうか。

,Microsoft Dynamics 365のHoloLens 2対応のデモビデオ

 筆者もMWC会場で、Microsoft Dynamics 365を使ったHoloLens 2のデモを体験した。以前なら、事前収録のビデオや紙資料で渡されていたような「作業の工程」を、実際のモノにCGを重ねて指示されるので、とても分かりやすかった。

 しかも、HoloLens 2をかけて行った作業工程はデータが記録されており、「どこで時間がかかったのか」も後から確認可能になっている。そうした統計情報を使い、作業全体を改善することを狙っているのだ。

Microsoftブースで行われたHoloLens 2のデモ。飛行機の整備、という設定で、その過程を実際に体験する

 要は、HoloLens 2は初代モデル同様に「まずは現場の働き方改革ツール」であり、Microsoftはまずそこに注力しているのである。そのため同社は、3500ドルでの売り切りの他、Microsoft Dynamics 365をセットにした「月額制」での提供も行う。こちらは月額125ドルからとなっている。こうしたプランを用意することからも、同社の狙いは明らかだ。

 とはいえ、こうした点に幻滅する必要はない。1970年代から80年代のPCは、同じように「業務改善」から社会に広がり、その過程で新しい用途が発見され、低価格化して広がっていった。要は今回も、同じ過程にあるにすぎない。

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