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» 2019年03月19日 06時00分 公開

西田宗千佳の「世界を変えるVRビジネス」:HoloLens 2から見るMicrosoftの「AR・VR戦略」 (1/3)

初代HoloLensの発表から3年。Microsoftは「HoloLens 2」でどのようなビジネスを考えているだろうか。同社の戦略を西田氏が解説する。

[ITmedia]

 2月末、スペイン・バルセロナで開かれた「MWC19 Barcelona」は、5Gを軸にしたモバイル関連の一大イベントだった。ただ、AR・VR業界的にはMicrosoftがついに「HoloLens 2」を発表したのが最も大きなトピックである。

HoloLens 2の発表会から。プレゼンターは、HoloLensの産みの親でもあるアレックス・キップマン氏

 初代HoloLensの発表から3年が経過し、その間に「Magic Leap One」のようなライバルも登場した。HoloLens 2がどんなハードウェアになるのか、興味津々だった関係者も多かっただろう。

 結論からいえば、HoloLens 2は「順当進化」だ。筆者も体験したが、大きく改善されている。だが、発表内容を精査すると、Microsoftの中で、HoloLens 2というハードウェアは「戦略の一部」にすぎないことが見えてくる。

 本格的な企業導入に向け、MicrosoftはHoloLens 2でどのようなビジネスを考えているのだろうか? ハードウェアスペックでは見えない部分を解説する。

ハードの全要素を入れ替えて「正常進化」

 HoloLens 2は、初代HoloLensからハードウェアの構成を大幅に変えている。狙うユーザー体験や外観は似ているものの、同じ部分はどこもない、というくらいに変わっている。

HoloLens 2実機。より実用的でシンプルさのあるものになった

 まず処理系。初代はIntelのAtom系CPUを使っていたが、HoloLens 2ではQualcommのSnapdragon 850に変えた。性能などは大幅に向上したと考えられる。コアのOSは同じWindows 10系だが、基盤となるSoCのアーキテクチャが違うので、アプリは全てHoloLens 2向けにビルドし直す必要がある。

 だが、Microsoft側は「移行作業は決して難しくないし、手間も小さい」と説明している。むしろ開発者から見れば「どのくらいのパフォーマンスをターゲットとすれば良いか」がまだ見えづらいことの方が気掛かりなのではないか。そこも含め「早く実機をよこせ」というところだろう。

 CGの現実への位置合わせや、操作に使う「手」の認識に使うセンサーは、同時発表された「Azure Kinect」と共通のものだ。素早く精細に空間を認識できることに加えて、両手の指を全て認識し、それを使った操作が可能になる。デモの中でも最も分かりやすくインパクトがあったのはここだろう。空中のピアノを両手で弾いたり、物体を手でつかんだりできるのは、やはり大きな変化である。ソフトの作り方次第ではあると思うが、初代HoloLensに比べ「神経質に指を操作しなくても使える」ものになった、という印象を受けた。

デモンストレーションの様子。両手の指を全て認識できるので、ピアノをひくことも可能

 ディスプレイも変わった。Microsoftは詳しく説明していないが、レーザーを光源とした新しい光学系になり、鮮明さと表示領域の拡大が行われている。HoloLensの欠点は、実際の風景に対してCGが重なる領域が狭いことにあった。HoloLens 2でも、VR用HMDのように「視界全てを覆う」ことはできていない。A4の紙を手に持って手を伸ばし、目の前にかざしたくらいの領域がカバーできるようになっただけだ。

 だが、従来に比べ、特に縦方向の視野が広くなったのが大きい。人間は仕事中、視線を上下に動かしているものだ。左右は意外とそうでもない。初代HoloLensでは上下の視野が狭かったので、それに合わせて頻繁に首を上下に動かす必要があった。

 だが、HoloLens 2では、多少そうした不便さが解消されているように思えた。画質の面では、色の自然さにまだ問題があり、「明るいところでの見え方」に不安もある。とはいうものの、解像感の向上(もはやドットは感じられない)と視野の拡大は、HoloLens自体の実用性を高める上ではかなりのプラス要因である。

 そしてそれらをまとめ上げるハウジングも大きく変わった。初代HoloLensで感じた「ずれやすい」「かぶりにくい」といった要素、特に、慣れていない人を戸惑わせる「スイートスポットに収まりづらい」という点が大きく改善されている。

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