そのスマホ、形見になる? 供養される? 第3回「デジタル遺品を考えるシンポジウム」レポート(2/3 ページ)

» 2019年03月21日 14時27分 公開
[ITmedia]

10年後も安心できるデジタル遺品の残し方は?――フリーディスカッション

 シンポジウムの最後はフリーディスカッション。第3回のテーマである「10年後も安心できるデジタル遺品の残し方を考える」を軸にした議題について、マイクを使わず、登壇者と参加者が一体となって1時間半の論議に熱中した。

小休憩の後、フリーディスカッションが始まった

議題1:デジタル遺品を普通の遺品として残すにはどんなケアが必要?

 デジタル遺品を形見として何年も残すとなると、長期的な保存性を見直す必要がある。デジタルデータ自体は劣化しなくても、ドライブ類は故障リスクをはらむし、オンラインサービスは運営元の腕にかかる部分が大きい。上谷氏は「これまでの弊社の統計でみると、HDDやSSDは3〜5年で50%は壊れるとみておいた方がいいでしょう」と話す。

 そのため、外付けHDDやNASを使って4〜5年スパンでバックアップしたり、特に大切なものは印刷して残したりといった手段が語られた。会場からは「デジタルと紙を組み合わせて、良いとこ取りするのがいいと思う」や「200〜300年スパンだと紙でも怪しい。フォログラムなどを使って磁気ではなく物理的にデータを書き出す手段があってもいいんじゃないか」といった意見も出た。

 一方で、「デジタルデータは大量に残るので、生きているうちから既に本人も管理しきれないものが出てきます。それらも残すのか選別するか、残すならその意味も考えていくのがいいと思います」(瓜生氏)という視点もある。そもそも形見は残された側が選別するもの。ただ、デジタル遺品だと選別の手段が違ってくるというところは留意する必要がありそうだ。

 また、伊勢田氏は「法的な観点ではオンライン上の金融資産の取り扱いが重要になってくるでしょう。また、遺族の感情面から公開設定のSNSの内容は生きている人の個人情報に関わることもあるので慎重に向き合う方がいいかなと思います」(伊勢田氏)という。古田氏が冒頭で解説した通り、今後は個人情報の取り扱いが世界中で変化する可能性が高く、そこも含めてオンライン上の遺品は動的な存在とみておいた方がいいかもしれない。

自分の意思とは関係なしに膨大なデータが残る将来、消す価値を見直すべきという意見も

議題2:10年後のデジタル遺品分野はどうなっていると思う?

 いまから10年経てば、デジタル資産の歴史も人間の1世代(30年前後)を超える。すると相続の局面も拡大に増えているだろう。しかし現状デジタル遺品においては、自動車におけるディーラーのような「あの人に頼んでおけば大丈夫」という存在はいない。10年後には何かしらの機関や専門家は出てくるだろうか?

 まだ明確な候補は不在だが、岡澤氏は「Secboがそうした存在になれれば」と意欲を示し拍手をもらっていた。また、会場からは「全国に8万軒ある寺がその役割を担えばいいんじゃないか」というアイデアも飛び出した。

 それを補強するように、瓜生氏は「思い出の写真や仕事で使うファイルみたいな大事なデータは共有されるので、それがバックアップになるという側面があります。そういう預けるという行為がデジタル遺品を受け継ぐ手段になるかも。お寺がそういう人のつながりの拠点を担うのは理にかなっていると思います」と発展させた。

 ただし、「そうなると、FXや暗号資産(仮想通貨)のようなへそくり系のデジタル遺品の担い手は別に育つ必要がありそうですね」(古田氏)という問題も提示されている。オールラウンドに対応する専門家ではなく、預ける系やへそくり系などで別々の担い手が生まれる可能性もありそうだ。

「パスワードという概念がなくなるかも」といった発言も出て白熱した

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