林信行が大胆予想 Apple Special Eventは「Appleが考える新ライフスタイル」の提案

» 2019年03月25日 15時21分 公開
[林信行ITmedia]

 3月25日(現地時間)、もはやおなじみとなったApple本社のスティーブ・ジョブズシアターにてApple Special Eventが開催される。事前予想記事はめったに書かない筆者だが、今回のイベントだけは、あまりに楽しみでつい書くことにしてしまった。

Apple Special Eventが開催されるスティーブ・ジョブズシアター

 一体何が楽しみなのか。最近、Apple Special Eventが開催される度にインターネットは製品の製造工場だったり、パッケージ工場だったりからリークされたウワサが入り乱れ、中には正式発表後もウソのウワサ情報を信じている人たちがいてガッカリする。そんな玉石混交記事に紛れたくないから、ここしばらく発表前の事前予想記事は避けてきた。

 だが、今回、Appleはそんなウワサ系サイトを一網打尽にするように、ハードウェア製品、ソフトウェア製品の発表を一通り先週中に終わらせてしまった。

 まずは縦書きにも対応したiWorkの発表から始まり、iPad miniとiPad Airを発表、さらに、Appleの隠れたメガヒット商品、AirPodsも刷新し、Final Cut ProやMotionなどの映像系ソフトもリリースした。さらにはエルメス製を含むApple Watchの新シーズンのバンドも発表。ほぼ毎日続く、いきなりの新製品にネットが沸き立った。

 間もなく開催されるApple Special Eventは、これまでになかった、新製品をひとしきり発表し尽くした後のApple Special Eventだ。では一体何が発表されるのか?

 こんなエキサイティングなイベントは久しぶりだ。

 最近、ウワサ系サイトのせいで、製品発表が実際の製品スペックと事前情報を比較するだけの答え合わせになってしまうことも多かったが、今回は春の主要製品は発表済み。映像などを含むコンテンツの配信の発表がメインになるという話もあり、それはそれで本当なのかもしれないが、Appleの発表の本質は、同社が考える2020年代の「デジタルライフスタイル」の「デザイン」の発表が中心になるのではないかと期待している。

 Appleが新製品を発表すると、ハードウェアスペックや新機能にフォーカスする人が多いが、実際にAppleが目指しているのはその製品の向こう側にある新しいライフスタイルや、アプリ市場を含めた生態系をデザインすることなのだ、というのが筆者の見方である。

 それは例えば、筆者が最近行ったAppleチーフデザインオフィサーのジョナサン・アイブ氏と日本を代表するデザイナー、深澤直人さんとの対談からも垣間見える(対談は雑誌AXISのVol.197に掲載されているのでそちらを読んで欲しいが、英訳記事であればWeb上でも読むことができる)。

「The industrial design that changed the world」(AXISのVol.197掲載)

 対談の中では、アイブがいかにしてApple本社をデザインしたかの話が肝になっているが、彼は別にかっこいい建物を作ろうと思って全面ガラス窓の本社ビルをデザインしたわけではなく、社員同士のつながりや、社員たちに自然を含めた外界とのつながりを求めてあのデザインを選んでいるのだ。

 同様に初代iPodも、既に販売されていた他社製音楽プレーヤーに対して、音質や持ち歩ける曲数で勝負しようとして誕生したのではなく、「全ての音楽を持ち歩く」という新しいライフスタイルを生み出すべく、当時の技術で出した答えがあの形だった。

 多くの企業が他社の製品よりも、どれそれの機能がどれだけ優れているとか、価格競争力で勝負をする中、Appleは常に他社との比較の中からの製品開発ではなく、デジタル時代のライフスタイルカンパニーとして、何か新しいライフスタイルのビジョンを描いて、それを実現するのに必要な道具をデザインしてきた。

 TEDスピーカーのサイモン・シネックは、ある製品カテゴリーの中の競合製品との比較の中からスタートする物作りを「WHATから始める物作り」と語り、そうではなくAppleのように「そもそもなぜそんな製品が必要なのか」からスタートする物作りを「WHYから始める物作り」と呼んでいる(関連:サイモン・シネック「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」)。

 だが、これまでのApple製品の発表会では、せっかく発表会の中で「WHY」の部分を語っていても、実際に記事などでレポートされるのは「WHAT」の部分だけということがあまりにも多い。

 だからこそAppleは今回、あらかじめ「WHAT」をつまびらかにしておき、そうした製品をなぜ出したのか、「WHYの部分」に重点をおいて発表するのではないかというのが筆者の見立てだ。

 確かに発表の主役は、新しいコンテンツ流通の仕組みなのかもしれないが、その金額がいくらで、何本用意されていて、誰が出ている、といったWHATの部分のレポートは他の方々に任せ、筆者はテクノロジーとデザインの両方の視点を持つ唯一の招待プレスとして、Appleがどんなデジタルライフスタイルをデザインしようとしているのかの部分にフォーカスしてレポートしていければと思っている。

 ちなみに「コンテンツ関係の発表だとしたら日本は関係ない」などと思い込んでいる人もいるが、もし関係ないのだとしたらAppleは、日本のプレスをわざわざ招待はしない。

 今回、Appleはこの発表をするのに、いつも肝いりの発表のときだけに使うSteve Jobs Theaterを会場に選んでいる。しかも、今回の招待プレスはおなじみのIT系ジャーナリストの面々だけではなく、ファッションとITをまたいで活躍する市川渚さんやハイロックさん、VOGUE JAPANのファッションディレクター、さらには超有名セレクトショップで文化・情報発信をしている方や映画系媒体の方など、ライフスタイル系のプレスが多めに呼ばれている。そのことからも映像コンテンツはもちろんだが、それに加えて、Appleが新しい時代のライフスタイルを日本にも真剣に広げようとしている姿勢が伺える。

 ライフスタイルの提案といえば、2001年1月のMACWORLD EXPOというイベントで、スティーブ・ジョブズが「これからはデジタルライフスタイルの時代」と話し、現在のiLife(iMovie、iDVDとiTunes)を発表したが、先週の新製品発表でiWorkは発表されたものの、iLifeが発表されていないのも気になるところだ。

 やはり、明日は「iLife」も含めた「新ライフスタイル提案になる」と思えてならない。

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