基本の「iPhone 11」か、冒険の「11 Pro」か 現地取材で分かった違い本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/4 ページ)

» 2019年09月12日 06時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

「中心となる製品」として魅力的になったiPhone 11

 これまで新型iPhoneといえば、いわゆる「無印」、基本となるモデルが話題の中心にあった。それが一昨年、iPhone Xと8が発表されてラインアップに変化が起き、昨年はXSシリーズでXを正常進化させたが、一方でXRというXのエッセンス(全てではない)を取り入れたモデルが追加された。XSが高級路線へと向かったこともあり、「中心となる製品」が見えにくかった。

 しかしiPhone 11は、発表会では語られなかった細かな部分を含め、ディスプレイと望遠カメラの有無を除き、上位モデルとほとんど変わらない製品とすることで「ラインアップの中心」となった。

 XRも価格改定の上で継続販売されるため、アフォーダブル(購入しやすい)製品が欲しいならXR、少しでも安価ならiPhone 8、標準的なiPhoneは11で、プレミアムクラスは11 Proシリーズと、明確なラインアップが出来上がった。

 iPhone 11は、iPhone 11 Proシリーズが搭載する望遠カメラを除けば、スローモーション機能が加わったインカメラ、複数フレームの合成で暗所での画質を大きく高めるナイトモード、増えたポートレートモードやセンサー、レンズ、プロセッサの向上で高められた画質など、主要機能や操作性で「ここはどうなのかな?」と疑問になる部分が少ない製品だ。

 周囲にあるiPhoneの方向を検知できる「U1」チップの搭載、「True Tone」や画面を横にしたときに立体的な音を実現するスピーカーなど、細かな部分でも上位モデルから“落としている”部分がない。

iPhone 11 望遠カメラやディスプレイを除けば、主要な機能や操作性で上位モデルに見劣りしないiPhone 11

 ひたすらにハイエンドへと向かっていたiPhoneシリーズが、ここに来てバランスのよいラインアップに落ち着いたといえる。

パフォーマンスと電力効率を両方向上させた「A13 Bionic」

 新たに搭載されたSoCのA13 Bionicについては、7nmプロセスで生産され、85億個のトランジスタを内蔵している。

 CPU、GPU、Neural Engineのいずれも20%高速化していることから、動作クロックの最大値が20%速くなったと推察される。4コアの高効率CPUコアと、2コアの高性能CPUコアという構成も従来と変わらない。GPUのアーキテクチャも大きな変更はないようだ。

 しかし、電力効率が高まったことで、高効率CPUコアとGPUは40%、高性能CPUコアは30%の消費電力を削減しており、これまで以上に省電力で高性能なSoCといえる(Apple自身は「A12 Bionic」の時点で世界で最も高性能と話しているが、さらに高速化したと訴求している)。

 これはプロセッサ内部を多数の領域に分割し、クロック速度や電圧を細かく調整するようにしたから、とのことだ。

A13 高速化と省電力化を果たした「A13 Bionic」

 そして今回、性能面で最も大きく変化したのは、行列乗算専用に演算器を搭載し、機械学習処理が従来の6倍に相当する毎秒1兆回に増加したことだろう。この演算器は高性能CPUコアにアドオンされる。

 機械学習処理は、その内容に応じてCPU(内の行列演算器)、GPU、Neural Engineの3つに振り分けられるが、これはiOS 13で搭載されている機械学習フレームワークの「Core ML 3」で管理する。つまり、Core ML 3で開発さえしていれば、全てのアプリはその恩恵を受けられるということだ。

 現時点ではiOS 13そのものが、A13 Bionicを生かす最大のアプリという状況だが、過去数年で取り組んできたCore MLのデベロッパーへの啓蒙でどこまで現実のアプリに浸透するかは別途注目していきたい。

A13 機械学習処理は、その内容に応じてCPU(内の行列演算器)、GPU、Neural Engineに振り分けられる

 同様の事例では、ゲーム用3Dライブラリの「Metal」対応を啓蒙していきながら、GPUの設計とすり合わせを行ってきた成果がある。PowerVR系から自社開発に切り替えた段階で、iPhone自身の商品企画やiOSのAPI(ライブラリ)設計と一体化してすり合わせることで、高効率で高性能な環境を作ってきた。

 同様の手法で機械学習処理についても、優れたアプリの開発を誘引する戦略を進めている。派手さはないが、iPhoneの長期戦略として、この部分は重要だ。

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