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» 2019年11月13日 22時30分 公開

「16インチMacBook Pro」登場 プロ向けに再構築された新モデルを速攻レビュー本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)

[本田雅一,ITmedia]

サイズ拡大による余裕がプロ向けアプリのパフォーマンスを引き出す

 もちろん、こうした熱設計の余裕はエアフローや冷却システムの改良だけでなされているわけではないようだ。

 本体サイズはやや大型化し、奥行きで5.2mm、幅で8.6mm、厚みは0.7mm増え、重量も170g増の2kgちょうどだ。

 こうしたサイズと重量の増加が、むやみに大きくなっているのであれば、それこそ進化とはいえないところだが、ほぼ“同クラスの製品”に収めつつも、高パフォーマンスを実現できるよう再設計したシャシーに、他のプラスαを詰め込んでいる。その結果としてのサイズと重量増だ。

MacBook Pro 16インチモデルの上に、15インチモデルを重ねてみた
MacBook Pro 左が16インチモデル、右が15インチモデル。暑さは0.7mm、重さは170g増えた

 その中には、これまで消費電力増を懸念して採用を見送ってきた最大64GBのDDR4メモリ増量オプションや、DDR6となったグラフィックスメモリの8GBオプションといった“構成の上限”引き上げがある。

 各種プロ向けアプリケーションの性能測定については、まだ短時間のテストの中で詳細に試すことはできず、Apple公式サイトの情報に任せたいが、メモリ容量によって制約を受けていたアプリケーションが一様に高速化することは想像に難くない。

 また搭載するSSDの最大容量も8TBとなり、映像作品や音楽を制作する現場での作業に外部ストレージが必要な機会もほとんどなくなるのではないだろうか。

 搭載SSDのインタフェースも強化され、毎秒3.8GBの転送速度に対応。ストレージ速度計測プログラム「AJA System Test」で計測したところ、読み書きともに毎秒2.9Gから2.8GBの数字が実測値で出ていた。

MacBook Pro 「AJA System Test」のテスト結果

 この結果、例えば8K映像ストリームをFinal Cut Proを使って編集するといった作業を、スタジオに戻らずともロケ先などでこなせるようになる。

 しかし、シャシーの再設計がもたらした余裕は、性能以外の面にも改善点をもたらした。それはキーボード設計の見直しと、明らかな内蔵スピーカーの音質改善の2つだ。あくまで推測ではあるが、シャシー設計の見直しによって生まれた空間を、Appleは単なるサイズ増加だけではなく、システムトータルの品位を高める方向へと割り振っていた。

 そして重要なことだが、これらの性能を外出先でも発揮できるよう、本機には100Wh(従来は83.6Wh)の大容量バッテリーが搭載されている。ACアダプターも96Wタイプへと増強された(アダプターのサイズに変化はない)。

 きっちり100Whである理由は、航空機に持ち込めるリチウムイオン電池の容量制限が、1製品あたり最大100Whであるためだ。その最大容量に合わせて設計されている。

「Magic Keyboard」のコンセプトをモバイルに

 うわさとなっていたキーボード構造の変化について、気になっている方も多いだろう。

 パソコンにとってキーボードはあらゆる操作の起点だ。現在もほとんどのApple製ノート型コンピュータで使われているバタフライ構造のキーは、キートップがぐらつかない安定した動作により、0.55mmという超ショートストロークのキーボードを実現させ、各種製品の薄型化と軽量化を支えてきた。

 一方でこのバタフライ構造のキーボードに賛同できないユーザーがいることも認識しているとApple自身も認めている。例えば、「iMac Pro」などで使われている「Magic Keyboard」では、シザース構造という以前から使われてきた、キートップを支える2つの部品をX型にクロスさせるメカを採用しつつ、剛性を高める工夫が盛り込まれていた。

 AppleのMacBook Pro担当プロダクトマネジャー、シュルティ・ハルデア氏は「Magic Keyboardの構造を出発点に、そのよさをノート型にも盛り込めるように再設計した。人間工学的要素を考え、キーデザイン、キーフィール、キーボードの音、タイピングの正確性、キーからのフィードバックについて見直し、全てを満足させるものを目指した」と話す。

MacBook Pro 16インチMacBook Proの新キーボード

 シザース構造を採用しながら、キートップがぐらつかない、すなわち薄型化も可能なメカにした上で、ラバードームの形状を最適化して入力フィールを調整。キートラベル(ストローク)は1mmと、バタフライ構造の従来機に比べて0.45mm長くなっている。また「特にプログラム開発者にとって重要だと指摘されてきたESCキーを独立キーとし、「Touch ID」ボタンも「Touch Bar」から独立させた」(ハルデア氏)。

MacBook Pro 「Touch ID」ボタンは「Touch Bar」から独立させた

 カーソルキーのレイアウトも以前のMacBook Proシリーズなどと同様、逆T字型に戻されている。

 そのフィーリングは、バタフライ構造を採用する直前のRetinaディスプレイ搭載のMacBook Proに近いが、指へのフィードバックはもっとシャープなフィールだ。ストロークは当時よりも約0.5ミリ短くなっており、タイプ時の疲れは減っているが、入力する感覚は近い。

 また、タイピング時の音も静かになり、特に“高い音”が抑えられていることを報告しておきたい。

 実はこの記事は16インチMacBook Proを用いて書いている。当初はストロークの増加に慣れていなかったが、慣れるに従って確実なフィールに好感を持つようになっている。チャタリング(同じキーが複数回入る現象)やキー入力の抜けなども感じない。

 長期的な信頼性に関しては評価できないが、0.45mmの厚み増加だけでデスクトップコンピュータ向けキーボードとほぼ同等のフィールに仕上げた。

“低音が出る”以上によくなったスピーカー音質

 Appleの担当者が公式に認めたわけではないが、本機のスピーカー音質がよくなったのも、サイズ増が影響しているのではないかと想像している。スピーカーはアナログなデバイスで、いくら信号処理で改良を加えても、物理的な容積による制約からは逃れられないからだ。

 スピーカーは、片チャンネルあたりウーファーに2個、ツイーターに1個のドライバーを割り当てた2ウェイ3ドライバーのステレオスピーカーだ。ウーファーは並列に並べるのではなく、上下逆方向に取り付けることでドライバーのダイアフラム(振動板)がもたらす筐体への振動を相互に打ち消す構造を採用している。

 この配置そのものは、サブウーファーなどでよく採用されるものだが、ダイアフラムのストロークを長く取っても(つまり動かす空気量を多くしても)、本体が震えることを抑えられるため、低音再生能力を上げ、音圧を上げても歪みが目立たない音に仕上げられる。

MacBook Pro サイズの余裕を生かし、スピーカーの音質もよくなっている

 Appleによると従来製品よりも1.5オクターブ部分、低い音まで再生可能になったというが、聴感上、ベースラインの音までがはっきりと聞き取れるようになり、音域バランスが整ったことで聴きやすい音となった。高域に関しても不要な響きが乗って聴きづらいといったことがなく、下手なBluetoothスピーカーを接続するよりもずっといい音を楽しめるはずだ。

 その実力は単に「周波数特性が整った」というだけではない。周波数特性を整えるだけならば、今どきの製品はさまざまな補正技術で整えられる。新しい内蔵スピーカーのよさは、全帯域に渡って位相が整えられていることだ。

 その結果、例えばDolby Atmosなどイマーシブオーディオの音響ソースをデコードした際、バーチャルサラウンド技術で立体的な音場を楽しめる。

 「Apple TV+」のDolby Atmosが見事にバーチャルサラウンドで聴こえるため質問したところ、Appleは「以前からサラウンドデコード機能や内蔵スピーカーでのバーチャルサラウンドは盛り込まれていたが、新しいスピーカーの改良でその効果が明確になった」と説明した。

 なお、まだテストしきれていないが、3つのマイクを用いた内蔵マイクの品質も、期待以上のものだ。高品位な外付けのUSBマイクに匹敵するもので、ノイズフロアが低く低域から高域までバランスよく拾ってくれる。いずれさまざまなテスト結果が出てくるだろうが、PodcastやYouTube向けの収録を外部マイクなしで行ってもいいのではないか、と思えるほど高品位になっていたことは報告しておきたい。

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