「ラインアップで最も高額なモデル」が意外に売れるワケ牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

» 2019年12月29日 11時00分 公開
[牧ノブユキITmedia]
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 PCのように、1つの型番の中で、容量違いや性能違いなどで複数のラインアップが用意される製品には、「これって一体誰が買うんだろう?」と疑問に思うような高額モデルが設定されていることがある。

 これはPCをはじめ、車だったり、あるいは住宅だったりと、オプションを選べる製品にはよくある話だ。あらゆるオプションを盛り込んでいくことで、ベースモデルの数倍はくだらない、モンスター級の構成が出来上がることも珍しくない。

 もっともこうした超高額モデルは、数はそれほど多くなくとも、きちんと一定数は売れており、それが故にメーカーもラインアップを用意しているという事情がある。一体どのような人が、どのような状況下で、こうした製品を購入するのだろうか。今回はPCを例に読み解いていく。

「ラインアップで最も高額なモデル」は誰がいつ買う?

 メーカーの製品ラインアップは基本的に、本命のモデルを中心に、ローエンドとハイエンドのラインアップが設定され、状況によってそれらの間を埋める形で、グレードが補間されていく。

 このうちローエンドのモデルは、ラインアップ自体の相場を安く見せる目的で設定されることが多い。例えばノートPCの場合、本命モデルが12万円だった場合に、ローエンドの製品は大台の10万円をギリギリ切る価格、例えば9万9800円に設定しておく。

 こうすれば、メディアでその製品が紹介される場合に「価格は9万9800円から」と、さもアンダー10万円のように見えるというからくりである。もっとも実際には、CPUが明らかにローエンドだったり、メモリが少なかったりと、実用的でない構成であることが少なくない。うっかり売れたりすると、逆にメーカーの側がびっくりするほどだ。

 一方のハイエンドモデルについては、予算にあまり糸目をつけず、「価格が高い=価値がある」と見なして行動する人向けに設定される。

 先日、日本人メジャーリーガー投手が、量販店で最も高額なゲーミングPCを購入する様子をYouTubeで実況して話題になったが、よいものには投資を惜しまない人は、こうしたところでちゅうちょしない。もちろん中には、必ずしもコスパがよくないものも含まれているのだが、ケチって地雷を踏む確率は目に見えて低くなる。

 「そんな買い方をする人は身近にいない」という人もいるかもしれないが、実際にはそうでもない。例えば個人事業主が経費でPCを購入する際、ラインアップの中で最上位のモデルを選ぶのは普通だし、誕生祝いや入進学祝いなどで祖父母が孫にプレゼントする際、中途半端なグレードではなく最も高価な製品(PCに限らず)を選ぶケースはある。

 つまりプライベートではコスパ最優先であっても、別の財布から予算を捻出する場合や、自分以外の相手に送る場合は、ハイエンドモデルを選ぶケースは少なからず存在するわけだ。ローエンドモデルはほぼ人に依存するのに対し、ハイエンドモデルはその時々の立場や状況によって、選ばれたり選ばれなかったりするのが面白い。

 そして実際のところ、こうしたハイエンドモデルは、台数ベースで爆発的に売れることはなくとも、そもそも1台がもたらす利益率が高いことから、ローエンドモデルをまとまった数だけ売るより、メーカーにとって利益が上げられることもしばしばだ。特にBTOのように、メニューで存在だけ示唆しておき、いざ注文が入ってから対応して間に合う場合は、リスクはほぼゼロだ。

 ただPCの場合は、こうした製品は、基本的に通販サイトではそれほど売れることはなく、量販店の店頭を中心に売れるため、在庫を持っておかなくてはいけないというのが難しいところだ。恐らくこうした人に限って、「予算に糸目をつけずに手に入れる=今すぐ持って帰れなくては意味がない」という考え方があるのだろう。この辺りも傾向としては興味深い。

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