書き込み性能が低いQLC NANDフラッシュメモリの性能をカバーしているのが「Intelligent TurboWrite」だ。いわゆる「SLCバッファ」と呼ばれる技術である。
QLC NANDの書き込み性能が低いのは、4bitを記録するための電圧制御が複雑なせいだ。そこで、Intelligent TurboWriteでは、QLCのメモリセルの一部をSLC相当で動作させることで制御をシンプルにして性能を改善し、それを書き込みバッファーとして利用することで、書き込みの遅さをカバーしている。
Intelligent TurboWriteのバッファーは、SSDの空き容量から確保する。870 QVOの場合、固定で6GB、それ以上は空き容量や使用する容量に応じて可変し、最大で78GB(1TBモデルは42GB)をバッファーとして使うことができる。
このバッファーに入らないデータでは、QLC NANDの素の性能になる。この性能はというと、1TBモデルで毎秒80MB、2TB以上のモデルで毎秒160MBと極端に低下する。ここはQLC特有の注意点だ。
なお、Intelligent TurboWriteは空き容量を利用したバッファーなので、空き容量が十分にないときは機能しない。フル容量のバッファーを利用するためには、1TBで168GB(42GB×4)、2TB以上のモデルでは312GB(78GB×4)の空き容量が最低でも必要だ。
これから、ベンチマークテストで性能をチェックしていこう。今回テスト環境は別表の通りで、比較対象には上位のSamsung SSD 860 QVOの2TBモデルを用意した。OSはWindows 10 Pro 64bit(1909)だ。
まずは、ひよひよ氏制作の定番ベンチマークテスト「CrystalDiskMark 7.0.0」で基本性能を見よう。テストデータのサイズは1GiBで実行した。データタイプは標準のRandomを利用している。
シーケンシャルリード/ライトは公称値通りの数値だ。ランダム4KBリードも、公称値通り先代からの進化が伺える。Serial ATA 6Gb/sインタフェースのSSD全体としても上位のレベルに入る。
HD Tune Pro 5.75のTransfer Benchmarkでテストサイズ200GBにおける転送速度の推移を見た。870 QVO、860 QVOともオレンジ色のシーケンシャルライトのグラフに注目。開始直後から500MB/s前後で推移しているが、転送容量がIntelligent Turbo WriteのSLCバッファ容量(78GB)を超えたあたりで転送速度が急落し、160MB/s前後まで落ち込んでいる。まさにIntelligent Turbo Writeの仕様通りの挙動が確認できる。
また、QD1の4KBランダム(4KB Random Single)のリード、そしてQD32の4KBランダム(4KB Random Multi)のリードを比べて見ると、870 QVOの860 QVOに対しての優位が確認できる。
FINAL FANTASY XIV:紅蓮のリベレーターベンチマークのローディングタイムを計測した。解像度などの設定は1920×1080ピクセル、フルスクリーン、最高品質を使用した。870 QVOと860 QVOの差は誤差程度で、これについては870 QVOの優位は確認できなかった。
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