QLC SSDは第2世代でどう進化したか Samsung「870 QVO」を試す(1/3 ページ)

» 2020年07月02日 15時00分 公開
[マルオマサトITmedia]

 Samsung Electronicsから、クライアントPC向けSSDの最新モデル「870 QVO」が発表された。QLC 3D NANDフラッシュメモリを採用した「860 QVO」の後継にあたる製品で、新世代のNANDフラッシュメモリと、それに最適化した新型コントローラを導入することで、最大8TBの容量を実現した。さらに、ランダムアクセス性能や耐久性が向上したという。今回は2TBモデルを試用できたので、性能を中心に検証しよう。

870QVO Samsung Electronicsの「870 QVO」は、クライアントPC向けのQLC 3D NANDフラッシュメモリを搭載したSSDだ

QLC 3D NANDフラッシュメモリを搭載したSSD

 870 QVOは、QLC 3D NANDフラッシュメモリを搭載したSSDだ。QLCとはQuad Level Cellの略で、メモリセル1つあたりに4bitのデータを記録する方式のことをいう。

 1セルあたりに3bitのデータを記録するTLC NANDフラッシュメモリに比べて、1セルあたりの情報量は1.33倍になる。つまり、低コスト化、大容量化がしやすい利点がある。一方、QLCでは電流制御が複雑になるため、メモリセルあたりの寿命はTLCの約3分の1、性能(特に書き込み)もTLCに比べて大きく落ちるデメリットがある。

 こうした耐久性や性能のデメリットを、DRAMキャッシュやSLCバッファ(後述するIntelligent TurboWrite)を利用してカバーし、大容量で買いやすいSSDとしてまとめたのが、870 QVOという製品だ。フォームファクターは、現在のところ2.5インチ(約6.8mm厚)のみ、インタフェースはSerial ATA 6Gb/sを採用している。

 なお、Samsung Electronicsでは、「QLC」のことを「4bit MLC」と呼ぶが、本稿では一般的な呼び方である「QLC」に統一する。また、同社は「3D NAND」についても、同社のブランディングネームである「V-NAND」と呼んでいるが、こちらも固有名詞として表す以外は「3D NANDフラッシュメモリ」に統一した。

870QVO 外観は先代モデルのQVO 860からほとんど変わっていない。グレー系のシンプルな配色だ
870QVO ラベル面。こちらも先代のデザインを継承している。厚さは約6.8mmだ
870QVO NANDフラッシュメモリの種類と書き換え回数(一般的な目安)

新世代QLC 3D NANDと新型コントローラを採用

 870 QVOは、従来の860 QVOの後継となる製品だ。構造的には、QLC 3D NANDフラッシュメモリが第2世代(9x層3D NAND)となったこと、コントローラーが新型のMKXとなったことが従来モデルからの進化点となる。

 これによって性能の公称値が向上しており、シーケンシャルリード/ライトが毎秒10MBずつ速くなった他、QD1のランダム4KリードのIOPSが1.47倍に高速化している。

 クライアントPCにおける実際のアプリケーションのワークロードは、オフィス、ゲーミング、クリエイティブまで含めてもほとんどがQD1かQD2、特にQD1が大半を占めているとされており、QD1の4Kランダムリードの強化はアプリケーションのパフォーマンス向上につながるという。

 また、長時間連続して書き込みを行った際の性能が最大21%改善され、SLCバッファの耐久性も3.8倍に向上したという。

870QVO 870 QVOの主なスペック
870QVO クライアントPCのワークロードの大半はQD1が占めるという
870QVO 長時間連続して書き込みを行った際の性能が最大21%改善されたという
870QVO SLCバッファの寿命が約3.8倍に向上。従来の5年から19年へと大幅に伸びた

QD1のランダムアクセス性能が強化された

 以下の表に、870 QVOと860 QVOの2TBモデルの比較をまとめたが、性能の公称値については1つ注意点がある。公式発表の公称値だけを見るとランダム4Kのライト性能は従来より少し落ちているが、両者は公称値の基準としている測定環境が異なり、860 QVOではWindows 7ベースであったのに対し、870 QVOはWindows 10ベースであるという。

 Windows 10ではライト時のOSレイテンシが増加しているため、同じWindows 10ベースで評価すれば、870 QVOのライト性能は860 QVOと同等、あるいはそれ以上になっているという。

 1年半前当時にしてもまだWindows 7環境を公称値の基準にしていたことには驚くが、他社との競争力を数値で判断されてしまう事情を考えると、当時延長サポート期間中であったWindows 7環境の方がよい数値が出るならば、そちらを採用することは理解できる。

870QVO 870 QVOと860 QVOのスペック比較(2TBモデル)
870QVO 公称性能だけの比較ではランダム4Kのライト性能は860 QVOの方が少し良いが、870 QVOの公称性能はWindows 10環境で測定しており、同じ条件では860 QVO(公称性能はWindows 7環境で測定)と同等以上だという
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