iPad Airが新搭載する「A14 Bionic」で見えてきたiPhone 12とApple Silicon Macの可能性本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/3 ページ)

» 2020年09月17日 17時45分 公開
[本田雅一ITmedia]

 Appleが毎年9月に行っている製品発表は、例年ならばiPhoneを披露する場になっている。しかし、今年は新型コロナウイルスの影響で開発が遅れていることがあらかじめアナウンスされており、イベントでどのような製品が発表されるのか注目されていた。

 最終的に「Apple Watch」と「iPad Air」のモデルチェンジが主な内容となったが、今回注目するのはiPad Airに搭載されているプロセッサの「A14 Bionic」である。

Apple A14 iPad Airではじめて搭載されたApple独自開発プロセッサ「A14 Bionic」の特徴

 これまでAppleは最新設計のSoC(System on a Chip)をiPhoneの新製品を発表するタイミングで投入してきた。同社の売り上げに対するiPhoneの貢献度を考えれば当然だが、iPhone向けに行われる旺盛な開発投資が、独自性の高い高性能なSoCを生み出し、Appleの商品力強化に貢献してきたことは間違いない。

 AppleはiPhone向けに設計する独自SoC「Apple Silicon」を、iOSの最新版とセットで開発することでさまざまな価値を生み出してきた。その成果を他のジャンルにも展開するため、Appleは末尾に「X」(あるいはZ)を付与するSoCを開発してきた。

用途に応じて要素を再構築してきたApple独自プロセッサ

 自社向けに開発したApple Siliconは、同じく自社開発するOSと密に統合されている。いや、正確に言うならば明確に目的を決めてApple Siliconに必要とされる機能を組み込み、それをOSレベルでサポートすることで他社に先んじてきた。

 これは今回iPad Airに搭載したA14 Bionicでも同じだ。確かにCPUの命令セットはARMアーキテクチャに基づいているが、その設計はAppleが過去10年にわたり20億個の独自設計SoCを出荷する中で、毎年改良を続けてきたものだ。またSoCにはさまざまな機能が統合されており、それぞれの機能、特定用途のプロセッサなどは使用する目的ごとに異なるアプローチで、1つのシステムにまとめられている。

 iPad向けのSoCとしては、iPad Proに使われているSoC「A12Z Bionic」との比較となるが、それぞれの設計アプローチは実のところ大きく異なっている。

 例えば、A12世代のCPUコア(高性能コア)に比べて新しいA14世代のCPUコアは40%高速で、GPUコアは30%高速化されている。Appleはどのようにして高速化しているかは話していないが、コア単体の性能は2世代分の進化をしている。

Apple A14 A12世代のCPUコア、GPUコアに比べて、それぞれ40%、30%の高速化がなされている(iPad Airの製品情報ページより)

 もちろん、これらはイメージ処理、ニューラルネットワーク処理、機械学習など、それぞれの処理向けに設計された全ての構成要素に当てはまることで、SoC全体としては大きな進化をしていることになる。

 簡単なところでいえば、それはカメラの画質などに現れる。iPad ProとiPad Airのカメラは同じユニットが使われているが、搭載されるSoCが持つイメージ処理能力の違いから、iPad Airの方が特に低照度の環境下でノイズが少ない写真を得ることが可能だ。

 その一方で、A12Zは広帯域のデータを扱うため、CPU、GPU共に2倍の数の処理コアを搭載している上、搭載するキャッシュメモリや共有メモリアーキテクチャで接続されるメモリの帯域幅もA12Zの方が広い。高解像度のビデオや写真などを扱い、ディスプレイが最大120Hzで動作する「ProMotion」に見合うより高い応答性などが求められるからだ。

 その結果、コア単体の瞬発力はA14世代には敵わないものの、より多くのデータを大量に扱う処理では、2世代前にもかかわらずA12Zの方が優位に立つ。

 現行の「iPhone 11」などが搭載するSoC「A13 Bionic」世代に対する「A13X Bionic」は存在していないが、今後Apple SiliconのMacやiPad Proのモデルチェンジが控えているだろうこともあり、A14 Bionicに対する「A14X Bionic」も恐らくは控えている。あるいはMac版はiPad Proとは別の専用版になる可能性もある。

Apple A13 iPhone 11発表とともにお披露目された「A13 Bionic」

 それらについて、現時点では妄想するほかないが、まずはA14世代の基礎となるA14 Bionicについて現時点で判明している情報を整理しておきたい。

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