Samsung Electronics(サムスン電子)から、新しいSSD「870 EVO」が発表された。発売は1月下旬の予定だが、Serial ATAインタフェース、3D TLC NANDフラッシュメモリ搭載の製品で、従来の「860 EVO」の後継にあたる。バリュークラス(QLC NANDを採用する低価格モデルのQVOシリーズ)よりワンランク上の耐久性を持つ製品だ。
仕様的には先代製品をほぼ継承しているが、内部部品が最新仕様となり、クライアントPCのデイリーユースでより快適に使えるSSDとなっている。評価用機材として500GBモデルを入手したのでさっそくレビューしよう。
今回発表されたのは、2.5インチ、7mm厚のフォームファクターを採用したモデルで、容量は250GBから最大4TBまで5種類のバリエーションが用意されている。
外観は、先代の860 EVOとほとんど同じだ。ブラックベースのシンプルなデザインで、ラベルの文字が異なる程度の違いしかない。一方で内部的には、最新世代にアップデートされており、NANDフラッシュメモリが最新の第6世代V-NAND(100層以上)に、コントローラーも新しいMKXコントローラーを採用している。
870 EVOのスペックは、860 EVOと大きくは変わらないが、シーケンシャルリード、ライトともに微増しているほか、QD1のランダムリードが向上している。同社ではこのQD1リードの性能向上を「デイリーユースへの最適化」として強調している。
QD(Queue Depth)は、キュー(待ち行列)のコマンド数。コマンドが次から次へと発行されてくるような状況では、1つ1つ順次実行していくより、ある程度まとめて、効率よくアクセスできるよう順序を変えて実行した方がはるかに効率がよく結果として処理時間も短くなる。
しかし、1人で操作する一般的なクライアントPCではQD32のようにたくさんキューにコマンドがたまる状況になることはまずない。QD1中心に、QD4くらいまでの状況がほとんどだという各社の解析結果が出ており、QD1ランダムアクセスを強化するのは理にかなっている。
従来通り、SLCバッファ技術として「Intelligent Turbo Write」を導入。本来のTLC NANDをSLC相当(1セルに1bit記録)で動作させて書き込み性能と耐久性を上げ、バッファとして利用する。
500GBモデルの場合は、固定で4GB、動的に最大18GB、最大22GBがバッファとして利用できる。つまり、(空き容量が十分ある場合は)22GBまで高速な書き込みが行える。
逆にいえば、22GB(500GBモデルの場合)を超えるサイズの書き込みを行うと性能が落ちるが、TLC NAND自体の性能もそこそこ良いので、バッファなしでも極端に遅くなるわけではない。1TB以上のモデルではサイズに関係なく性能が変わらない(並列アクセスができるためだろう)。この点は、QLC NANDを利用した製品とは違うところだ。
また、十分な容量のDRAMキャッシュを搭載している点も見逃せない。SLC NANDフラッシュメモリより、Optane Media(3D XPoint)よりも高速かつ長寿命なのがDRAMだ。コントローラーの作業領域として、細かいデータの一時的な保管場所として、SSD全体の性能の最適化、安定性、耐久性の確保に重要な役割を担っている。
一方、DRAMは高コストなため安価な製品では省かれる例も少なくない。容量が公開されていないことも多いが、やはり公開されていた方が安心だ。省電力かつ高速なDRAMをSSDに潤沢に使うことができるのは、DRAMメーカーでもあるSamsungならではというところかもしれない。耐久性の指標であるTBW(総書き込み容量)は、500GBモデルで300TBと、先代と同様に高水準だ。
今回テストする870 EVOと、比較対象として利用する860 EVOの仕様の違いを表にまとめた。ランダムライト性能の公称値について、860 EVOの数値が発表当時と異なるのは、当時はWindows 7環境を基準にしていたためだ。ここではSamsungから提供された資料のWindows 10環境での数値を記載している。Windows 10の方がホストレイテンシが大きく、それが公称値の違いに影響しているという。
ベンチマークテストの結果を1つ1つ見ていこう。
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