M1はiPhone 12シリーズ向けSoCの「A14 Bionic」を強化したチップともいえ、故に共通する回路が搭載されており、iPhoneを磨き上げる中で活用されてきた技術が、そのままMacでも活用できる。
その端的な例がTouch ID付きのMagic Keyboardだ。M1には指紋認証を行うための処理回路とセキュリティ機能がiPhone向けSoCのAシリーズと同じく搭載されているので、iPhoneで実績のある指紋認証システムをそのまま利用できる。M1を搭載したことで、この機能をデスクトップのMacでも利用可能になった(従来はT2チップを搭載するノート型Macでのみサポート)。
なお、このキーボードはM1を搭載していればどのMacでも利用可能で、Mac miniなどでも使えるが、現時点では単体での発売は予定されていない。マウス、トラックパッド、Lightningケーブルのカラーバリエーションも単体発売はなく、いずれもiMacオーナーが保守部品として注文する以外に入手方法はない。
1080p解像度に対応するFaceTime HDカメラの画質も、同様にiPhone 12シリーズのカメラと同じ高画質化処理が行われる。MacBook Air・Proとの違いはセンサーサイズで、より大きく高画質なCMOSセンサーが内蔵されている。
実際に使ってみると、オートフォーカス(AF)やオートホワイトバランスの性能が高く、暗所でのノイズが少ないなど極めて優秀な結果が得られた。筆者が知る限り、ここまで高画質な内蔵カメラを備えるパソコンは他にない。
それどころか、手元にある今年発売のUSBカメラを幾つか試したが、どれも高画質をうたっているものの、ノイズ、色再現、露出やAFなど、あらゆる面でiMac内蔵のFaceTime HDカメラが上回るほどだ。
11.5mmしかない薄型の筐体は、今回ディスプレイ下部のスペース(アゴと一部ではいわれている部分)も比較的小さくなっており、とてもよい音がスピーカーから出てきそうには思えない。真下にしか音が出てくるスリットがないことも、よい音がでないと想像させる理由だ。
しかし実際に試聴してみると、まるで前面に向いてそれなりの大きさのスピーカーが取り付けられているかのような、クリアで低域まで伸びた音が楽しめた。
形式でいえば、iMacのスピーカーは2ウェイ3スピーカーのステレオ構成だ。低域を担当するウーファーを2基用い、ユニットを互い違いの向きに搭載することで振動をキャンセルする構造にしている。
低域ユニットを対向に搭載することで、低域の量感を引き出し、さらに振動問題を解決することで、積極的に長いストロークでダイアフラムを動かすというアイデアは新しいものではないが、ウーファーといってもサイズ的には中域までをカバーする小さいユニットだ。
それなりに指向性があるため、2つのスピーカーからの音を正しく聴かせようと思えば、かなりの工夫が必要になる。
音が出る経路も筐体内を通って真下に出てくるところ、前面に座るユーザーに心地よい音にしようというのだから、信号処理は複雑になる。周波数特性や位相特性(耳に届くまでの時間)を全周波数帯で一致させるなどの工夫が必要になるが、いずれもiPhone、iPadのスピーカー向けに作られた技術をM1ならば応用できる。
映像作品や音楽を楽しめるだけの低域再生能力を持っており、そのサイズ的な制約を考えれば十分だ。少なくとも中途半端なスピーカーを追加で接続する気にはなれない。27インチiMacよりも全体として整った音が出てくる。
その素性のよさを最も感じるのは、空間オーディオを楽しむときだ。Apple TV+でDolby Atmos対応の映像を再生する際、Apple独自開発の仮想サラウンド技術で立体的な音響を楽しめるが、十分な立体感を得るにはスピーカーの位相特性が整っている必要がある。
同種の技術はたくさんあるものの、Appleの空間オーディオは後ろへの回り込みが深く、また上下方向にもある程度は音の移動を感じることができる優秀な仕上がりだ。
ちょうどApple MusicにDolby Atmosを用いた立体音楽の配信が発表されたところ。今後は音楽でも空間オーディオを楽しめるようになる。
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