次に一般用途として考えていきます。
2021年のiPad Proは、華々しい仕様やベンチマーク結果に対して、実際に色んな用途で使ってみると2020年のモデルと驚くほど体験が変わっていないのも特徴です。実用/実感ベースでそうなのだから、仕方がありません。
6月8日開催のWWDC21で発表されたiPadOS 15も、マルチタスキングの操作性は改善されるものの、できること自体は変わらず、PCのような真剣なマルチタスクには踏み込まず、M1チップの処理能力や大容量メモリを生かす新しい機能や仕様も訴求されませんでした。
一方で、Macからシームレスに他の端末を操作したりデータの受け渡しをしたりするUniversal Controlなど、Macとの連携は大きく打ち出されました。iPadをMacのサブディスプレイ化するSidecarの頃からうっすらとありましたが、Macの周辺機器感というか、タブレットの立場をわきまえてね、というか……。
iPad ProはApple製品のエコシステムの1要素として生かすべきもの、というメッセージが感じ取れます。これは、2017年の「すべてがもっとうまくできる。この一枚で」や「What’s a computer」以来、オールインワンの夢、コンピュータの再定義の夢を追ってきたユーザーにとっては、悪いニュースです。
これでiPadがダメになっていくとは思いませんし、今後も便利になっていくでしょう。ガンガンにアクセルを踏んでいかないということは、陳腐化する心配をせず、安心して買いやすいという美点でもあります。以前書いた、11インチの256GBモデルは迷っている人に容易にお勧めできるという意見も、変わっていません。
でも、夢を見た時期はあっても、今は少し大人になるべき時なのかな、と思っています。すこし寂しいですが。
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