「VAIOは成し遂げたい人のブランドに」 設立7年の到達点とこれからをVAIO Z総責任者に聞く本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/2 ページ)

» 2021年07月08日 14時30分 公開
[本田雅一ITmedia]

 ソニーから分社・売却されることで2014年に始まったPCメーカーとしてのVAIO。ソニー時代から設計を引き継いだ商品から始まり、長野県安曇野市で生産する付加価値が高くユニークな企画のノートPCを中心に事業を継続してきた。

vaio azumino VAIOの安曇野本社工場。2020年5月から6月にかけては、テレワーク需要の拡大に対応するため、前年比で最大2倍のモバイルPC生産体制を整えた

 PC以外の製品ジャンルにも事業領域を広げてはいるが、やはりメーカーとしての軸足はPCだ。小型・軽量化や小さな筐体容積から高性能を引き出すノウハウ、使用フィールの細かな部分にまで配慮した商品企画を背景に、クリエイター向けに特化したタブレット型のPCを開発するなど、常に「自分たちでなければならない何か」を探し求めながら、独立した企業のVAIOは形作られてきた。

 そんなVAIOの開発を一貫して率いてきたのが、取締役執行役員の林薫氏だ。社内に設立した、商品開発と研究開発の両方を推進するテクノロジーセンターのセンター長も務めている。

kaoru hayashi VAIO取締役執行役員、テクノロジーセンター長の林薫氏

 林氏にはソニー時代から取材を続けているため、初めて話を伺ってから既に10年以上が経過しているが、当時も今も変わらないところがある。それは「もっともっとよいVAIOを」とディテールにこだわった開発を行うことだ。

 当初は開発担当課長として商品開発に集中。現在は執行役員として、商品開発からR&Dまでテクノロジー部門全体を見渡す立場となったが、よい意味で一製品を担当していた時代から変わらない目線で製品作りに取り組んでいる。そんな林氏が開発チームを率いた最新作が2月に発売された「VAIO Z」だ。

VAIO Z 2021年2月18日に発表したノートPCフラッグシップモデルの「VAIO Z」

 しかし今回はあえて、VAIO Zに限らず、その先のビジョンを尋ねてみた。VAIO Zは軽量かつ高性能で、他に似た製品が見当たらないが、誰もが入手できるほど手頃な価格帯でもない。一方で近年のVAIOのPCの中では、新しい世代の一歩目とも感じる新しいコンセプトも感じる。

 そこで林氏に、2014年からの7年間でたどり着いた新しいVAIO Zと、そこから始まるラインアップの刷新、その方向性について話を聞いてみることにした。

VAIOとしての価値の作り方

 林氏が商品開発と研究開発の両方を推進するテクノロジーセンターのリーダーとなったのは6月のこと。それまでは技術部門全体は率いていたものの、製品の企画・開発が役割の中心だった。しかし研究開発となると、もう少し先の未来を見据えたビジョンが重要になってくる。

 まずは、林氏が見据える「VAIOとしての価値の作り方」について話を聞いてみた。

林氏 研究開発といってもゼロから新しい技術を生み出せるだけの規模はVAIOにはありません。しかしPCを中心に少し先の技術トレンドを見ながら、「この領域ならVAIOの中に先取りできるのでは」と目を付けてパートナー企業に提案することはできると思っています。例えば、VAIO Zのドライカーボンシャシーがそうでした。レーシングカーにも使われるドライカーボンで、立体的なノートPCのシャシー構造を作れるのではないか? そう考えて、東レさんに提案をして共同開発を申し出たのです。

 ドライカーボンとは、樹脂を含むカーボンファイバープラスチックのシート(プリプレグ)を必要な形状に重ね、並べていき、熱と圧力をかけて焼結。プロセスの中で樹脂の大多数がなくなり、カーボン繊維の密度が高くなる作り方だが、立体的かつ複雑な造形を作ることは難しい。

VAIO 剛性と軽量を高いレベルで両立するVAIO Zの立体成型フルカーボンボディー。天面から底面まで4面の全てを立体成型のカーボン連続繊維素材で覆っている

 少量生産であれば手作業でプリプレグを型にセットして圧力をかけられるが、量産する規模でどのようにやっているのだろう? と、発表会で不思議に思って質問をしたほどだった。

林氏 我々の事業規模は小さいですから、東レさんにとっても魅力的な開発案件でなければなりません。東レさんの社内では、少ないとはいえ3D造形のドライカーボンシャシー量産を事業のメニューとして提供することは難しい、と考えていました。しかし挑戦はしてみたい。素材メーカーは自分自身で商品をお持ちではないので、(ある意味多すぎない)VAIOの事業規模での商品化を一緒にやりましょう、とお誘いしました。

 企業として「ここまでできる」と事業サービスを提供することと、現場レベルで「ここまでできる」「ここまでやりたい」と考えるしきい値は異なるものだ。そして実際に商品レベルでの開発をし、プロダクトアウトするノウハウを得られれば、今度はそれを事業メニューにも発展させることができる。

 VAIOにとっては新たな挑戦を製品に組み込む、東レにとっては新しい事業サービスへの発展を見据えた技術開発。こうした両社にとってメリットのある提案を考え、探し、提案する動きをさらに強めていこう。それがテクノロジーセンターという新しい組織の目標になっている。

林氏 このような取り組みを継続的に行っていると、パートナーから提案を受けることもあります。例えば、放熱容量の大きな冷却システムはVAIOの長年の開発テーマでした。一方、より多くの熱を効率的に処理するシステムをNidec(日本電産)さんは開発、提供したい。そこでIntelの熱設計枠に収める目的の冷却ファンではなく、もっと多くの熱を静音性を犠牲にすることなく処理できる冷却システムを一緒に作ろうと手を結ぶことができました。こうした取り組みの適応範囲を広げ、パートナーと新しい価値創造をしていくことが目標です。

VAIO VAIO Zの内部構造。モバイルノートPCとしては高性能だが発熱量が多いCore H35プロセッサの性能を最大限に発揮できるよう、日本電産と共同開発した新開発のデュアルファン搭載クーラーを搭載している
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