Apple秋の新製品に共通する“掘り下げると深い”魅力iPadにApple WatchからiPhone 13まで(3/4 ページ)

» 2021年09月16日 06時00分 公開
[林信行ITmedia]

iPhone 13/13 Proシリーズの進化はカメラだけなのか?

 さて、今回の製品発表でもトリを務める最も重要な製品は、iPhoneシリーズであることに変わりはない。

 新たにメインストリーム製品となるiPhone 13と小さいサイズのiPhone 13 mini、プロ向けの製品となるiPhone 13 Proと大画面モデルのiPhone 13 Pro Maxが発表された。

 果たして、どんな新機能が? と楽しみにしている人も多いかもしれないが、派手に新機能が追加された2020年と比べると、2021年はやや変化が表面からはつかみづらくなっている。

iPhone 13 9月24日に発売されるiPhone 13ファミリー
iPhone 13 iPhone 13/miniシリーズの特徴

 以前、iPhoneはiPhone 4が出た翌年は4s、5の翌年は5sと「sモデル」と言った具合に数字だけのモデルと数字に「s」がついたモデルが交互に出される時期があった。

 数字だけのモデルは、大胆に新しい機能の取り込みにチャレンジし、「s」モデルは前年のモデルへの反応を見て、うまく洗練させたモデルというあんばいで、iPhoneを頻繁に買い換える人が「数字モデル派」と「sモデル派」に分かれた時期もあった。

 今回の新製品は、それでいうとiPhone 12s、12s Proに近いイメージで大胆に新機能を取り入れるよりは、前年モデルの機能の洗練に軸足を置いている。

 特にそう感じるのが、センサーシフト式の手ブレ補正機能だ。2020年のモデルでは、この機能を実現するためのスペースが確保できないという理由で、ボディーサイズが大きいiPhone 13 Pro Max専用の機能となっていた。これが新モデルでは一番小さなiPhone 13 miniまで共通の仕様となった。

iPhone 13 iPhone 13シリーズ全モデルで備えるセンサーシフト式手ブレ補正機能

 数年前から新iPhoneの発表の度に書いているが、iPhoneは色々なアプリを利用するためのプラットフォーム、つまり土台であり素地だ。その素地にさまざまなハード的な機能を追加することは、製品のイメージを特定の方向に導いてしまう危険や、開発のチャンスを奪う危険がある。

 新iPhoneの設計の考え方は、常に素地としての質を高めることであり、改良の中心は処理能力や画面の見やすさ/色再現性、音質、カメラ性能、剛性といった地味な部分になる。

 処理能力は分かりやすい改良だが、実際に「ここまでの処理能力を達成してくれたから、新たにこんなことができた」というアプリは、半年から1年後くらいに出てくるものなので今すぐの魅力としては伝えづらい。

 バッテリーは、iPhone 13 miniとiPhone 13 Proで約1.5時間、iPhone 13とiPhone 13 Pro Maxで約2.5時間伸びたが、バッテリー寿命の変化は感じ取るのが難しい。

 従来モデルからの変化として、一番理解しやすい部分がストレージ容量とカメラ回りだろう。

 ストレージ容量に関しては、iPhone 13と13 miniの基本容量がこれまでの倍の128GBになった。一方、iPhone 13 Proと同Maxには新たに1TBのモデルが追加された。これは特に映像を撮る機会が多い人にはうれしいアップデートといえよう。

iPhone 13 iPhone 13 Proシリーズの特徴

 さて毎年、カメラに関しては多くの発表がある。今回も例外ではない。

 斜めに配されたデュアルレンズが特徴のiPhone 13/miniは、センサーの大型化で従来より47%多く光を取り込める。つまり、暗いところの撮影がきれいになっている。同様に13 Pro/MaxはiPhone 12 Pro比で2.2倍、iPhone 12 Pro Max比で1.5倍も暗所性能が良くなっている。

 3レンズ仕様の13 Pro/Maxでは、望遠レンズの性能が変わり、さらに望遠率が上がった77mmのレンズになっている。また、これまでのiPhoneは対応していなかった2cmの距離からのマクロ撮影も実現した。特にマクロモードなどに切り替える必要はなく、カメラを被写体に近づけるだけで自動的にマクロ撮影ができる状態になり、マクロ撮影でのスローモーションやタイムラプスにも対応している。

iPhone 13 3つの異なるレンズを備えたiPhone 13 Proシリーズ
iPhone 13 最短2cmの撮影を実現したマクロレンズの構造

 こうしたカメラのレンズやセンサーの質向上に加えて、高性能カメラと高性能プロセッサの組み合わせを生かして、新しい写真撮影を楽しめる新機能もある。

 動画撮影機能のシネマティックモードと、写真撮影機能のフォトグラフスタイルだ。

 シナマティックモードは、映像のピントを被写体間で移動させる映像効果で、日本では「フォーカス送り/ピン送り」などとも呼ばれるもの。

 狙った被写体にピントを合わせると、動きを追従させてピントを合わせ続けてくれるのは当然だが、被写体がどこかを見ると視線の先にピントを自動的に送ってくれるなどの機能もあるようだ。

 面白いのは、映像を記録した際に同時に深度情報(写真に写っているものとの距離の情報)も記録していることだろう。撮影後、動画編集のタイミングでピントを合わせる先やボケ具合を編集ができるようだ。

iPhone 13 シネマティックモードでは、動画の撮影後にピントや被写界深度を変更可能だ

 一方のフォトグラフィックスタイルは、写真に撮った人の好みや個性を反映する撮影モードだ。これまでのは1枚1枚の写真が、ただきれいに撮れることが重視されていた。そのため、同じ風景なら誰が撮っても同じような風景になりがちだった。これに対してフォトグラフスタイルでは、例えば全体的に淡い色合いにするであるとか、コントラストを強調するとかいう写真の味付けの好みを指定しておいて、自分のテイストに合わせた撮影ができる。好みを設定しておくと撮影した瞬間に、調整が行われる。

iPhone 13 あらかじめ自分の好みに合った撮影設定を決めておける「フォトグラフスタイル」

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