総務省は7月18日、同省の情報通信審議会から「放送システムに関する技術的条件」に対する答申を受領したことを発表した。この答申をもとに、同省では地上デジタルテレビ放送(地デジ)の規格面での高度化(スペック向上)に必要な制度設計を進めていくことになる。
現行の地デジは、NHK(日本放送協会)が主導して開発された「ISDB-T」という規格にも基づいて、2003年12月から順次導入が始まった。主要なスペックは以下の通りだ。
(※1)動画、音声、付加情報(データ放送など)を全部合わせて23Mbps以内に収める必要がある
「え、地デジのアスペクト比って『16:9』だよね?」という声もあるかもしれない。実は現在、ほとんどのTV局はフルHD(1920×1080ピクセル)か4K(3840×2160ピクセル)で撮影した映像を1440×1080ピクセルにしてから送り出している。簡単にいうと横方向に“圧縮”した状態で電波に乗せているのだ。
その際、放送波には「この映像のアスペクト比は16:9ですよ」という情報を添付しており、TVチューナーはそれを検知し、自動的に“引き伸ばした”映像を出力している。
規格上は、地デジでも1920×1080ピクセルのまま伝送することは可能である。しかし、その分ビットレートが上がりやすくなるため、採用している例は非常に少ない。
ちなみに、一部のTVチューナーでは設定を変えると、16:9に戻す前の映像で視聴できる。新しめのTV(TVチューナー)ではできないことがほとんどだが……。
今回、総務省が地デジの高度化を行うのは「新たな技術の順次導入」を主目的としている。議論自体は2019年6月から始まっており、先行して高度化された「4K8K衛星放送」の規格を参考にしつつ、より新しい技術を取り入れるべく検討が進められてきた。
海外でも、地デジを高度化する動きがあり、米国が主導する規格「ATSC」には第3版(ATSC 3.0)が登場し、ヨーロッパ圏で普及している規格「DVB-T」も順次第2版(DVB-T2)への移行が進んでいるという。ある意味で、世界的な高度化トレンドに乗っかったともいえる。
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