10年目のApple Watchは、ディスプレイを中心にデザインが大きく進化した。ものすごく細かい部分ではあるが、個人的に歓迎しているのはセルラーモデルであることを示す赤いリングがなくなったことだ。
Apple Watchは当初、単体での通信機能を持たなかったが、Series 3からiPhone無しでも通信ができるセルラーモデルが投入された。それを機に製品がセルラーモデルであることが分かるようにDigital Crown(竜頭/リュウズ)の内側に細く赤い円が描かれるようになった。目立たない赤ではあるが、必ずしも全てのスタイルに合う装飾ではなかった。
奥はSeries 9と同じ画面サイズのSeries 7のApple Watch。Series 9までのセルラーモデルで象徴だったDigital Crown内周の赤い円は廃止され、Digital Crownは素材の質感を前面に出した作りになったSeries 10では、この慣習を見直して廃止され、おかげでDigital Crownはシンプルな単色に戻った。
これまでアルミの黒モデルはツヤ消し仕上げとなっていたが、Series 10では光沢の美しいジェットブラックに変更されている。30工程の酸化被膜処理を重ねて完成したという新ボディーは、ディスプレイ部と本体の境界をあまり感じさせない美しい仕上がりとなった。
画面サイズは直前のSeries 9と比べると7%大きくなっている(46mmの場合。42mmは9%)。一回り小さかったseries 4から6までの画面と比べると25%(42mmは30%)、初代からSeries 3までと比べると65%(同75%)も大きくなったそうで、まさに十年一昔、隔世の感を覚える。
実はこの画面サイズだが、上位モデルのApple Watch UltraやUltra 2と比べても3%ほど大きい。この画面サイズの差や、斜めから見ても明るい表示性能によって、これまでは小さ過ぎて読みづらかったコンプリケーションでもしっかり読みやすいものがある。
この画面に慣れた後、改めてこれまでのApple Watchを見るとちょっと物足りなく、小さく、分厚く感じてしまう。その時、何よりも違いを感じるのが画面を斜めから見た時の明るさだ。
実際にiPhoneで両手撮影している時や自転車を漕いでいる時、いつもなら見えないはずの左腕のApple Watchが秒を刻んでいるのを確かに確認できた。
世の中のほとんどのディスプレイは正面から見るように設計されており、正面から見ると明るくきれいな色で表示されるが、斜めからのぞき込むと画面が暗く見えてしまう。のぞき込む角度が画面の角度に近づけば近づくほど暗くなるが、Series 10が採用したLTPO3のディスプレイでは、60度のアングルで見た時の画面表示がSeries 9と比べて40%も明るくなっているという。
この斜めから見た時の明るさは、Apple Watch Ultra 2と比べても明るい。その代わりApple Watch Ultra 2は最大3000ニトと最高輝度が高いため、太陽光の下など明る場所でも見やすい強みがあり、その点では最大2000ニトのSeries 10に勝っている。
日常生活において、最もうれしいのは充電時間の高速化だ。万が一、バッテリーが切れそうになっても、わずか30分で約80%、15分充電するだけで約8時間動作させる急速充電に対応しているため、例えば寝る直前にバッテリー不足でも歯磨きやシャワーの間に充電するだけで、睡眠中も利用が可能になり、後述する睡眠時無呼吸症候群の診断に必要なデータを記録できる。
Apple Watch Series 10には、もう1つこれまでとは使い方が変わる機能がある。音楽やオーディオブックなどの音声コンテンツを内蔵スピーカーで再生する機能だ。Apple Watchには通知音など単純な音を再生するスピーカーが内蔵されており、ボイスメモで録音した音を確認するなどは既にできた。
しかし、せっかくの内蔵スピーカーを音楽やオーディオブックの再生には利用できずにいた。機能重視のユーザーの中からは不満の声が上がることもあったが、今回、改めてその理由がAppleが何よりも品質を重視する会社だったからだと明らかになった。
Series 10ではスピーカーが再設計され、より大きくきめ細やかな音が出せるようになった。それに加えて音系のソフトウェアエンジニアが頑張ったらしい。これによってApple Watchのスピーカーからでも、同社製品のブランドイメージを損なわない品質で音の再生ができるようになった。今回、初めてApple Musicの音楽やApple Booksのオーディオブック、Podcastなどの音をApple Watch単体で内蔵スピーカーから再生することがソフトウェア的に可能になったのだ。
小さな時計から出てくる音なので、音量はそこまで大きくなく(Ultra 2だとスピーカーが2基あるため、もっと大きな音になるとのこと)、特別優れた高音質というわけではないが、カジュアルに音楽を楽しむには十分な音質と言える。
音の再生だけでなく、収音の性能も上がっている。通話中に周囲がうるさくても、雑踏音を打ち消してユーザーの声だけを分離して相手に届ける機能が追加されたのだ。もっとも、これはマイク性能が良くなったわけではなく、ニューラルネットワークを使ったインテリジェンス機能が音声解析をして行っている(とはいえ、そういったうるさい環境では、相手の声が聞こえないので結局はAirPodsなどのヘッドフォンを付けて通話してしまいそうだが)。
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