さて実際に使ってみた感想だが、以前のモノクロモデルにも増してクセが強い。現行のカラーE Inkは、世代を重ねるごとに進化しているものの、画面の彩度を中心にまだまだ改善の余地があり、「カラーE Inkにしては」という但し書きを入れなければ、ディスプレイとしてはなかなかつらいものがある。本製品についても、その域を出るものではない。
とはいえ、カラーで表現されているグラフなどの図版をきちんと見分けられるのは、モノクロのE Inkディスプレイにはない利点だ。またモノクロE Inkだと、画面がグレースケールで表示されているせいでボタンが背景に同化してしまうことが多いが、本製品はカラー化によってかなり緩和されている。
ただし本製品の場合、ネックとなるのはむしろ解像度の低さだ。現行のカラーE Inkデバイスは、カラーは低解像度であっても、モノクロは300ppiクラスの高解像度であることが多い。つまりカラーの表現力はいまひとつでも、モノクロのテキストは最低限きちんと読めるようにすることで、一定の実用性をキープしているわけだ。冒頭で紹介した楽天のKoboやBOOXのカラーE Ink端末もこのパターンとなる。
しかし本製品はカラーだけではなくモノクロも150ppiという低解像度ゆえ、ブラウザでWebページを表示しても、見出しのようなサイズの大きいフォントはまだしも、本文に使われている標準的なサイズのフォントすら、読みづらく感じることが多い。「ば」と「ぱ」といった、濁音と半濁音の識別にも苦労するほどだ。
カラーの図版も、Excelのグラフのように自分でベタ塗りの色を指定できる場合は、カラーE Inkと相性のよい色をカラーパレットから選ぶことで美しい表示が可能だが、既存の画像をそのまま表示すると、それほどのクオリティーは出ないことが多い。本製品に限ったことではないが、メーカーの製品ページで使われているデモ画像は、こうした特殊な素材である可能性があることは、頭に入れておくべきだろう。
このように、表示のクオリティーはかなり微妙なところなのだが、一方でパフォーマンスはかなり高い水準にある。以下の動画は、本製品とノートPC(液晶ディスプレイ)を並べた上で、タイピングの追従速度、スクロール時のレスポンス、さらに動画再生におけるコマ落ちの程度を比較したもので、いずれもかなり実用的だ。
もちろんこれはあくまでも「E Inkとしては」であって、液晶ディスプレイの方が表示性能が高いのは紛れもない事実だが、例えばタイピングで漢字変換に付いてこなかったり、スクロールや動画再生で画面が完全に固まったりといった、利用に支障をきたすレベルでは全くない。ここはプラスに評価してよい部分だろう。
以上のように、パフォーマンスについてはそこそこ実用的なレベルながら、解像度の低さがネックというのが総合的な評価になる。もっとも、低い解像度であるからこそこれだけのパフォーマンスが出せている可能性もあるので、一概に「もっと高解像度ならば」と言えないのが難しい。これについては製品の進化を待つしかない。
いずれにせよ、現状では本製品が使えるか否かはあくまでも「用途次第」なので、表示したいコンテンツがここまで見てきた条件をクリアできそうになければ、無理に本製品を使うべきではないだろう。
実売価格は32万8000円と、文教用途がメインになるのもやむを得ない額だ。この価格を許容した上で、クオリティーをある程度我慢してでも目への負担を和らげる必要があり、なおかつ用途がきちんと合致して、初めて検討対象になる製品と言えそうだ。
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