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「日本社会の幸福がなくてはBoxの幸福はない」 古市社長がこだわる組織作りIT産業のトレンドリーダーに聞く!(2/2 ページ)

» 2024年12月10日 15時00分 公開
[大河原克行ITmedia]
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Box Japanが成功している理由

―― 古市社長はBox Japanを表現する際に、「シリコンバレー企業と日本企業のいいとこ取りをした企業」と語ってきました。これはどういう意味でしょうか。

古市 シリコンバレー企業は迅速な意思決定やフラットな上下関係、そして、ダイバーシティにおける取り組みも先進的です。一方の日本企業は、レイオフがないという特徴とともに、日本独自の代理店販売への取り組みを進めています。こういったシリコンバレー企業と日本企業のいいところを融合して生まれたのが、Box Japanというわけです。

Box Japan 代表取締役社長 古市克典氏 コラボレーション クラウド コンテンツ 共有 日本企業とシリコンバレー企業のいいとこ取りを目指しているBox Japan

 Box Japanは、外資系の日本法人としてはユニークなところがあります。例えば、企業向けSaaS専業ベンダーとして日本で100%代理店を通じて販売形態としているのはBox Japanだけはないでしょうか。

 Boxの日本法人(Box Japan)を立ち上げたときに、クラウドビジネスは直販であるという常識があり、その点で私自身もかなり悩みました。SaaSビジネスは、一般的に3年以上、契約が継続しないと黒字化しません。つまり、導入した後が大切であり、そこに販売店を経由させるのはナンセンスというのが外資系企業の考え方でした。

 しかし、日本におけるBoxのビジネスは、日本の商習慣を生かして代理店販売が適していると判断しました。結果として、代理店とのWin-Winの関係が確立でき、それを維持することで、日本での大きな成長につながっています。

 もう1つ、Box Japanが特徴的なのは、外資系企業には珍しい組織構造を持ち、横連携を促すことができる独自のレポートラインを構築しているという点です。これも「シリコンバレー企業と日本企業のいいとこ取りをした企業」だからこその体制です。

 外資系企業の日本法人の社長は、本社やアジア地域の営業部門を統括するCRO(チーフレベニューオフィサー)にレポートし、日本国内の営業部門だけを掌握しているという体制がほとんどです。日本法人の中にあるマーケティング部門や技術・サポート部門の評価、予算措置などは海外拠点から見ることが多く、日本で何かをやるといったときに、日本法人の中で横連携が取れず、動きが遅くなるといった状況が発生しています。

Box Japan 代表取締役社長 古市克典氏 コラボレーション クラウド コンテンツ 共有 レポートラインを工夫することで、組織内の横連携を取りやすくしている

 Box Japanでは、日本法人社長の下に営業/マーケティング/技術・サポートの各組織が入り、横連携ができる体制となっています。さらに、日本からの要望は、ダイレクトに本社のアーロン・レヴィCEOに届くようになっており、私と同僚の立場にある本社のCROやCMO、CTOとも、上下関係がなく話をすることができます。

 日本の声が反映しやすい仕組みであり、日本でのビジネスを円滑に進めることができます。私は、この仕組みを他の外資系企業の日本法人は採用すべきだと思っています。

 Box Japanは、Great Place To Work Institute Japan(働きがいのある会社研究所)による「働きがいのある会社 2024年版」で、中規模部門(従業員100〜999人)で3位に選出されました。

 そして「働きがい」に加えて、「働きやすさ」も目指しています。

 働きがいがある職場を作るために、部門のトップの人たちに、組織の壁を突破することに挑んでもらっています。これは、私のこれまでの経験を元に作った「DeCOPOT」(デコポット)がベースとなっています。

Box Japan 代表取締役社長 古市克典氏 コラボレーション クラウド コンテンツ 共有 人数が増えることで生じる組織の壁を解消すべく、古市社長が編み出した「DeCOPOT」

 組織が大きくなるに従い、組織のリーダーに課せられるテーマは違ってきます。最初は組織の代表としての役割であり、50人ぐらいになってくると組織内でのコミュニケーションをどう取るのかが課題となってきます。

 それまでは組織を優先して部分最適を追求すること仕事であったものが、100人以上の組織を統括する立場になると、頭の半分は部分最適のことを考えても、残りの半分は全体最適を考える必要が出てきます。

 私は全体最適を考えられるリーダーが何人いるかによって、組織力は決まってくると考えています。さらに組織が大きくなるとルールを守る形式主義ではなく、変化する目的に合わせてルールや形式も変える意識を持つこと、大きな組織だから誰かがやってくれるという他力本願ではなく、常に当事者意識を持つこと、そして、経営を担うリーダーシップチームになると、個人力よりも組織力を生かした経営が重要であると話しています。Box Japanのリーダーたちには、こういった意識を持ってもらいたいと思っています。

 さらに働きやすい職場をつくるために、女性の活躍支援、若手社員の育成、LGBTの支援、ボランティア活動の促進、自然保護活動、部活や学びの場なども用意しています。

Box Japan 代表取締役社長 古市克典氏 コラボレーション クラウド コンテンツ 共有 Boxが大切にするカルチャー「Box 7 Values」

 Boxには「Box 7 Values」というものがあります。社員一人一人が当事者意識を持つ「Be An Owner. It's Your Company!」、母親に恥じないプライドを持つ「Make Mom Proud」などを打ち出し、それを念頭にした活動を徹底しています。

 私は、日本社会の幸福がなくては、Boxの幸福はないと考えています。会社がいくら儲けても、社員が幸せに働けなくては意味がありません。Boxの社員、パートナー企業の幸福感を高めることは重要な意味があり、そこに力を注いでいきます。

Box Japan 代表取締役社長 古市克典氏 コラボレーション クラウド コンテンツ 共有 社内パーティーなども行われるスペースにて
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