「シリコンバレー誕生の地」と銘打たれるHP Garageではあるが、名前の通りパッと見はただの古びたガレージだ。それこそ、米国の住宅街ならどこにでもありそうな感じである。
このHP Garageは史跡として比較的古くから認知されていたものの、建物そのものは私有地で、一般公開はされていない。そのため、通常は道路から敷地の奥にあるガレージを眺めることしかできない。筆者が知り合いをシリコンバレーツアーに連れて行ったときも、「このあたりにガレージがあるよ」と一言伝えて、クルマで通過してしまうスポットだった。
このことは現在でも変わらないものの、HPまたはHPEの従業員を通して申請すると内部を見学できることがある。最近では、グローバルイベントに招待した海外の報道関係者にプログラムの一環としてHP Garageの「ガイドツアー」もよく行われている(参考記事)。筆者もガイドツアーに参加する機会があったので、その内部を紹介しよう。
HP Garageは、パロアルト市の「367 Addison Avenue」にある。先述の通り、周辺は普通の住宅街で、史跡があるとは思えない(史跡ゆえに住所が公開されている面もある)。住宅の1階部分は、結婚したばかりのパッカード氏が1938年から妻のルーシー・パッカード氏と共に暮らしたスペースだ。そしてガレージ横の物置小屋には、当時まだ独身だったヒューレット氏が寝泊まりしていたという。
このガレージでは、企業としてのHewlett-Packardの活動も行われた。同社初の製品となるオーディオ発振器「HP 200A」が開発されたのもここで、最初期の顧客としてはWalt Disney(ディズニー)がいた。HP 200Aはディズニーにおける映画の音響テストに用いられ、後に大ヒットとなる映画「ファンタジア」の成功の一端を担うことになる。
翌1939年にヒューレット氏も結婚したが、ガレージは引き続きHewlett-Packardのオフィスとして使われた。ただし、同社自体は業務拡大で手狭となったため、1940年に現在HP本社が所在するPage Mill Road沿いの土地へと移転している。
367 Addison Avenueの建物についてはその後、1985年にパロアルト市の史跡として指定され、1987年にはカリフォルニア州の史跡としても登録され、さらに2007年には米国全体の歴史登録財としても登録された。
ただ、「住宅街にある普通の住宅とガレージが史跡」という状態はちょっと不自然でもある。そこでHewlett-Packardは2000年、この住宅とガレージを土地ごと買い取った。その後、2005年にヒューレット夫妻が住んでいた頃を極力再現する「リノベーション」を実施して、現在に至る。
シリコンバレーを語る上で、ちょっとした豆知識として頭の片隅に置いておくと酒の肴になるかもしれない。
現在のHPの本社は、パロアルト市の1501 Page Mill Roadにある(写真は第1ビル)。ちなみに、HPEも設立当初はパロアルト市に本社があったが、現在はテキサス州ヒューストン市に移転している
「HP」という社名は創業者の“コイントス”で決まった――シリコンバレー生誕の地「HP Garage」で知る、意外な逸話
Appleのイベントで感じたリアルとアナログの適度なバランス そして日本の存在感
Microsoftの桁違いな「本社キャンパス改造計画」とは?
AppleやGoogleだけじゃない Amazonの本社もやっぱりスゴい(バナナ好き注目)
「Windows 10」公開日に米Microsoft本社を訪ねてみたCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.