アンカー・ジャパンが5月22日に開催した新製品の発表イベント「Anker Power Conference 2025 Spring」は、同社にとって大きな転換点を印象付けるイベントとなった。2024年の売り上げは前年比で約50%増の728億円を記録し、2022年の350億円から2年で倍増という急成長ぶりを見せている。
しかし、この好調な業績発表以上に興味深かったのは、プレゼンテーションの構成だった。「世界No.1モバイル充電ブランド」を標ぼうするAnkerが、約1時間のプレゼンテーションで充電器製品にほとんど言及しなかったことだ。
メインステージで語られたのは、初のカフェ事業、完全ワイヤレスイヤフォン、ホームシアターシステム、ポータブル電源、防犯カメラ、UVプリンタ、ロボット掃除機など。とはいえ、同日発表された充電器/モバイルバッテリー製品は実に8製品以上に及ぶ。
最も象徴的だったのが、猿渡歩CEOが説明したカフェ事業参入だ。「Anker Store & Cafe 汐留」は、5月24日にオープンする記念すべき1号店となる。
一見すると畑違いに見えるカフェ事業だが、その狙いは質疑応答で明確になった。「利益率はECがいいだろう。しかし、カフェ事業には体験とAnker認知という目的がある。カフェは誰でも来てくれて、広くタッチポイントが取れる」と猿渡CEOは語っている。
カフェの設計も興味深い。全席にワイヤレス充電、AC電源、Lightning/USB Type-Cケーブルを完備し、静音設計のミーティングルーム4室を用意している。これらは公式アプリでの予約やモバイルオーダーにも対応している。価格設定も1000円以上の商品は一切なく、コーヒーは400円以下に抑えている。
これは明らかにAnker製品の購入を検討している人以外へのアプローチだ。従来のAnker Storeが「買い物客」を対象としていたのに対し、カフェは「日常利用者」を取り込む戦略といえる。
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