WWDCに集まったデベロッパーをもう1つ驚かせたのが、Apple Vision Proの大きな進化だ。Apple Vision Proを被って行うビデオコールで表示される自分の分身、ペルソナの顔はよりリアルになり、遂にこれまでどこかに残っていた不気味さを感じないレベルに進化し、より自然にビデオ通話ができるようになっている。
天気予報や再生中の音楽などを表示するLiquid Glass仕様の美しいウィジェットを、部屋の好きな場所に配置して楽しめる機能も魅力的だ。
それに加えて「PlayStation VR2 Senseコントローラ−」も使えるようになり、より高度なゲームが楽しめるようになる。
だが、それ以上に楽しみなのが米Logitech(ロジクール)の「Muse」というペンデバイスだ。空間に正確に線を描けるペンで、これを使って精密さが要求されるプロダクトデザインや建築設計の3Dデータを目の前で実物大で確認しながら修正を描きこんだり、オンラインビデオで共有できるようになったりすることで、Apple Vision Proの実用性が一気に向上する可能性が高い。
ネットを見ていると、Apple Intelligenceの進化が他社のAIの進化と比べて遅いといったことを批判する声もたまに見かけるが、私は今回のWWDCでの発表内容を見て正直安心した。最先端のAI技術を我先にと搭載するのは、GoogleやOpenAIなどの技術主導の会社がやることであって、Appleがやるべきことではない。
Appleはシリコンバレーの中では数少ないユーザーをちゃんと未来に向かって前進させているかを深く考え、慎重かつ丁寧に技術を実装する存在であり、だからこそ技術好きの人だけでなく、技術に疎い人でも安心して利用することができる製品ブランドを築き上げてきた。
ネットではWWDC前からAppleのAI採用の遅れをヒステリカルに批判する声がたくさん上がっていたが、そういった声に踊らされることなく、ブレずに丁寧に自信を持って提供できる機能だけを慎重に1つずつ発表していく姿勢には好感が持てる。
特にAIのような技術は、依存度が高く下手をすれば我々の創造性を置き換えたり、創造する楽しさを奪ってしまったりしてしまう可能性すらある(どうしても最新のAI機能が使いたい人は、MacやiPhoneにChatGPTやClaudeのアプリをインストールすればよい。ただそれだけのことだ)。
これに対して、Appleが先端AI活用の代わりに採用したスポットライトとショートカット機能の組み合わせなどは、ユーザーの思考を邪魔せず、手足の延長としてより多くの操作をより効率的にすることで、創造性をむしろ拡張していく機能に感じた。
願わくば、WWDCに参加している世界中から集まった開発者たちが、この丁寧に(そして美しく)作るというAppleの価値観に共鳴してApp Intentを増やし、AI経由の操作が増える時代の下地作りを加速してくれることを祈っている。
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