2000年代に入って増加した詐欺電話は、2020年代には大規模かつ悪質化し、大きな社会問題となってきた。だが、ついにこれを下火にする本質的な解決策が広まるかもしれない。
日本で最も普及しているスマートフォン「iPhone」に、間もなく登場予定の次期OS「iOS 26」に搭載される「通話スクリーニング」機能が、その引き金になる可能性がある。
「不明な発信者をスクリーニング」機能をオンにすると、知らない相手からの電話では着信音を鳴らさず、まずはiPhoneが合成音声で応対し要件を聞く。相手の要件が記録されたら「このままお待ちください」と相手を保留状態にして着信音を鳴らす。詐欺電話やテレマーケティングの多くは、この段階でふるいにかけることができるはずだ仕組みはこうだ。
見知らぬ番号から電話がかかってきたとき、着信音を鳴らす前にiPhoneが合成音で応答し、相手に要件を尋ねる。相手がその時点で不要と判断して切れば、電話は鳴らず、履歴だけが残る。要件を答えた場合は初めて着信音が鳴り、相手の要件を音声認識して画面に文字で表示する。
ユーザーは画面に表示された要件を読んで対応を決められる。追加の質問が必要なら、文字入力すれば合成音がそれを尋ねてくれる。詐欺電話が得意とする「一気に畳みかける」手法も、このワンクッションで冷静に受け止めやすくなる。
休日のノンビリしている時間に不意打ちのようにかかってくる不快なテレマーケティングも、今後は縮小せざるを得なくなるだろう。
唯一の課題は、相手がこの合成音を「留守番電話」と勘違いし、本当に重要な用件なのに掛け直しを繰り返す可能性だ。ただし、これは一時的な問題で、この機能が普及すれば21世紀の新しい習慣として人々も慣れてくれるはずだ。
もともと、AI時代以前でも大企業の重役や政治家に電話をする際は、相手が直接出てくれることはめったになく、秘書や受付の人が必ず取り次いでいた。iOS 26の通話スクリーニングは、その個人版と考えれば分かりやすい。あなたの番号が相手の「連絡先」に登録されていない限り、今後は必ずこのAI秘書が最初に応答することになる。
既にその前奏曲として、2024年のiOS 18では「ライブ留守番電話」という機能が導入されていた。留守番電話機能が録音中の伝言をリアルタイムで文字表示してくれるという機能で、例え会議中など電話に出られない状況でも緊急性のある大事な電話であれば、相手が電話を切る前に電話に出たり、いったん落ち着いてからすぐに折り返したりできるようになっていた。
ただ、こちらは留守番電話機能の延長だ。一度は電話の着信音を鳴らし、あなたが出なかった時だけオンになる。対して通話スクリーニングは、知らない相手からの電話に限り、そもそも着信音すら鳴らさない。
ちなみに、似た機能はGoogleの「Pixel」やサムスン電子の「Galaxy」など競合スマートフォンにも先行して搭載されている。2026年以降は、初めて電話をする相手には、まずは「AIに要件を伝えて取り次いでもらう」が新常識になるということに早く慣れてしまった方がいいのかもしれない。
詐欺や迷惑行為は電話だけではなく、メッセージによる被害も後を絶たない。iOS 26ではメッセージアプリに「スパムフィルター」が搭載され、知らない相手からの怪しいメッセージを自動的に専用フォルダーに隔離する。
通知は届かず、誤って開いたり危険なリンクをタップして詐欺サイトへ誘導されたりする心配もない。隔離されたメッセージには返信もできない仕様になっており、ユーザーを不用意な接触から守ってくれる。
加えて、AppleはiMessageの暗号化も進化させている。2011年の登場時からエンドツーエンド暗号化を標準とし、今回さらに「量子耐性暗号」を導入した。量子コンピュータが従来の暗号を破るとされる時代を見据え、一足早く次世代の安全性を備え始めた。
デザイン刷新の「iOS 26」発表 「通話スクリーニング」「保留アシスト」で“電話”が便利に リアルタイム翻訳も可能に
App Storeのプライバシーラベルに見るプラットフォーマーの責任
Appleが「スマホソフトウェア競争促進法」に12の提案 iPhoneの安全性はどうなる?
Appleがヨーロッパ委員会の「デジタル市場法」を巡る措置に対して上訴 「開発者の混乱」と「ユーザーの不利益」を招くと主張
「Apple 梅田」がグランフロント大阪 南館に誕生 日本初の「Apple Vision Pro」専用ルームを見てきたCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.