―― アイロボットジャパンはどんな会社になれたと自己評価していますか。
挽野 社員一人ひとりが自分がやっている責任範囲だけでなく、それを超えて、課題を指摘し、解決策を考え、提案するといったことが起きています。提案力はかなり強くなっている実感がありますよ。むしろ、これだけ社員の提案力が強い会社は他にはないといえるほどです。「待っている」という社員はほとんどいませんね。
コロナ禍における巣ごもり需要に伴い、2022年までは好調だった国内家電市場はその反動もあって、ここにきてかなり苦戦をしています。ビジネスとしては難しい局面に入ってきました。外的要因が影響していますから、本来ならば萎えてしまう社員が多いはずなのですが、どんな手を打てばいいのかということを考えて提案する取り組みは、逆に加速した感じすらします。
―― 4月に初来日した米iRobot CEOのゲイリー・コーエンさんは、「日本のチームは独創的な施策を実施している」と評価していましたね。
挽野 サブスクリプションサービスである「ロボスマ」の導入や、花王の「マジックリン」とのコラボレーションの他、整備済リユース品がふるさと納税の返礼品に採用されるなど、日本独自の展開が多いのは確かです。
グローバルに見ても、これだけさまざまな施策を打っている例はありません。まだ発展途上ではありますが、考えて提案して実行するという「自走」する文化が定着していますし、私が目指したアイロボットジャパンの姿には、確実に向かっています。
ただ、合格点に達していると言ってしまうと社員が安心しちゃいますから(笑)、とりあえずは、70点ぐらいの評価にしておきます。まだまだやらなくてはならないことはたくさんありますし、自走する力をもっと強めていきたいですね。
―― 挽野さんは、アイロボット創業者のコリン・アングルさんからは、どんなことを学びましたか。
挽野 アイロボットの創業者であるコリン・アングルに出会えたことは、私にとって大きな出来事でした。社長就任以来、コリンが考えていることを、日本でどう実現するかといったことを考えてきました。
彼は私と同い年なのですが、2016年秋に初めて出会ったときに、私が持っていない考え方をする人物であることを感じましたね。一言でいえば、ビジョナリーです。10年/20年/30年という時間軸で物事を考えて、こういう世界になったらいいということを示し、さらに、その世界を作っていく力がある。きっと、子供のときから、想像力や妄想力が強かったのだと思います。ただ、それだけではなく、それに向けた道を作ることができるのです。
私はビジョンを実現するために何をするかといったことを考え、実行することが得意ですから、コリンが想像したことをどう実現するかを考え続けてきました。コリン自身も、自分だけで完結させず、不得意な分野はパートナーに任せる姿勢があります。
米国企業は強いトップのリーダーシップによって全てを決定し、実行するケースが多いのですが、コリンの場合は、自分が出ていくところと任せるところをわきまえるなど、役割分担には長けた経営者だったといえます。
私は苦手なことがたくさんあるので(笑)、不得手なところは任せるといったように役割分担を重視する経営をしています。
例えば、eコマースはデジタルネイティブの世代でないと分からないことも多いので、その世代に近い人にやってもらうにしています。社員自らが考えて、それを実行し、成長につなげていく姿を見ているのは、とても楽しいんです。
―― 2025年は、アイロボットにとってどんな1年に位置付けていますか。
挽野 アイロボットの力強い成長の復活に向けて、そのきっかけ作りをする1年になります。2024年は、1年をかけて新たな製品や新たなマーケティングを準備してきました。これを花開かせる年が2025年となります。2025年に成長軌道に戻し、2026年〜27年に、より成長を加速していくことになります。アイロボットのこれからの成長に注目していてください。
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