そのアプリ、本当に安全ですか? スマホ新法で解禁された「外部ストア」と「独自決済」に潜むリスク(2/3 ページ)

» 2025年12月26日 06時00分 公開
[林信行ITmedia]

代替課金システムの光と影

 新法施行による変化の2つ目は課金システムだ。これまでスマートフォンでのアプリの購入やアプリ内課金、サブスクリプションなどを行うには、AppleやGoogleが用意した課金システムを使うことになっており、他社の決済方法での支払いや、外部Webサイトへの誘導は禁止されていた。

 いち早くこの仕組みを作ったAppleに対しては、もう少し柔軟性を持たせるように何度も声が挙がっているが、Appleは警戒心が薄いユーザーが詐欺サイトなどに誘導される危険や返金対応、サブスクリプションの管理が複雑になることを嫌って断り続けてきた。

 これまで、iPhoneで購入したアプリで何らかの支払いの問題があった場合には、全てApp Storeを営むiTunes株式会社が対応に当たっていた。

 今後、ユーザーはどのアプリはどのアプリストアから購入したかを意識し、返金対応などが必要になった場合には、個別のアプリストアに問い合わせる必要がある。

 また、Appleは子供が望ましくないアプリの購入や、アプリ内課金を行わないように、何かを購入しようとすると、一度、親のiPhoneに購入許可を求める「承認と購入のリクエスト」という機能を提供していたが、こういった機能もApp Store以外で購入したアプリでは利用できない。

チェックの甘い他社ストアで入手したアプリの中には、外部の詐欺まがいの決済サイトに誘導する危険もある。外部サイト決済を行う場合は、毎回このような注意が表示される

 新法はユーザーにとって悪いことばかりではなく、メリットを感じられる部分もある。その最も顕著な事例が、Amazonの「Kindle」など他社の電子書籍リーダーから直接、本の購入が可能になる点だろう。

 これまで、AmazonはAppleの課金での電子書籍の販売は行っておらず、Appleも詐欺防止の目的から外部の購入用Webサイトへの誘導を禁じていた。このためKindleの電子書籍の購入はWebブラウザから行い、Kindleアプリは購入済みの本を読むだけ、という状況が続いていた。

 Appleの電子書籍アプリ、Apple Booksだけが本の閲覧も購入もできたため、これはApple独自サービスへの利益誘導ではないか、電子書籍や動画だけでも外部決済を許していいのではないかという議論は常にあり、スマホ新法反対派の人の中にも、コンテンツの決済に関してだけは例外的に賛成の人が少なからずいた。

ユーザー視点で見ると、代替課金システムの採用で良かった点もある。Kindleアプリから直接電子書籍の購入が可能になったのだ。ただし、Amazonによる独自の課金ではなく、Webサイトへのリンクを用意してそこで購入というスタイルを取っている。アプリ内課金にすると、Appleの課金も提供しないといけないルールになっているのでAmazonがそれを嫌ったのかもしれない。課金方法によって価格は変えられるので、Apple公式の決済手数料分を価格に上乗せするという方法はあるのだが……

 課金システムに関する変更で、もう1つ注目すべきはサブスクリプションだ。

 iPhoneのアプリでは個々のアプリでバラバラにサブスクリプションを申し込んでいても、iOSの「設定」アプリにサブスクリプションを一括管理する画面があり、ここを見れば自分が今、どんなアプリに定期的支払いを行っているか、次の支払いはいつで金額はいくらかを把握し、どのアプリでも同じ手順で簡単にサブスクリプションをやめることができた。

 他社ストアで買ったアプリはもちろん対象外になり、ユーザーはどのアプリはどのストアから購入したかをいちいち把握して、他ストアで購入したアプリに関してはサブスクリプションの解約なども、そのストア(あるいはそのアプリ)が提供するバラバラなルールに従って行う必要がある。

 Appleが他社による決済を嫌っていた理由の1つが、このサブスクリプションだ。サブスクリプション型のビジネスの中には、ユーザーが増えてきたところで一気に料金を釣り上げたり、いざ退会しようとしたりすると退会手順があまりにも面倒でユーザーが諦めてしまうといったトラップまがいのサービス提供をしているところが少なからずある。

 Appleのサブスクリプションの仕組みは、まさにユーザーがこういったトラップまがいの行為を回避するための仕組みでもあったが、他社が運営するどちらかというとユーザーよりも開発者の利益を優先させたストアでは、必ずしも同様の安心感は得られない可能性が高く、こういった部分でユーザーが不利益を被る可能性を否定できない。

 他社ストア/他社決済の仕組みを利用する人はぜひ気を付けてもらいたい。

App Storeで購入したアプリでのサブスクリプションは、「設定」アプリの集中管理画面を見て次回の課金や金額などを確認したり簡単な操作でサブスクの解除をしたりできる。他社ストアではこれができず、悪質なサブスクリプションが増えることが懸念されている

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年05月14日 更新
  1. スウェーデンのファンドが「価格.com」「食べログ」約5900億円でカカクコムを買収へ AI戦略を加速 (2026年05月13日)
  2. 待望のカラー版も選べて大型化! Amazonが「Kindle Scribe」2026年モデルを発表 Google Drive連携など機能も強化 (2026年05月12日)
  3. Googleが「Googlebook」をチラ見せ AndroidとChromeOSを“融合”した全く新しいノートPC 詳細は2026年後半に紹介 (2026年05月13日)
  4. 「MacBook Neo」は「イラスト制作」に使えるか? Appleが仕掛ける“価格の暴力”を考える (2026年05月12日)
  5. NVIDIA“一強”を突き崩すか AMDのAIソフトウェア「ROCm」と次世代GPU「Instinct MI400」がもたらす新たな選択肢 (2026年05月12日)
  6. ノートPCを4画面に拡張できる“変態”モバイルディスプレイ「ROADOM 14型 モバイルマルチディスプレイ X90M」が6万1560円に (2026年05月12日)
  7. 画面を持たない約12gの超軽量ウェルネストラッカー「Google Fitbit Air」 1万6800円で5月26日に発売 (2026年05月07日)
  8. 高騰続くパーツ市場、値札に衝撃を受ける人からDDR4使い回しでしのぐ自作erまで――連休中のアキバ動向 (2026年05月11日)
  9. 約2000円で購入できる「エレコム USB扇風機 FAN-U177BK」 (2026年05月12日)
  10. 複数のHDMI機器を1つの端子に集約できる「UGREEN HDMI セレクター」が25%オフの1349円に (2026年05月13日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年