「Core Ultra(シリーズ3)」はワッパ重視の“バッテリー寿命王”――Intelが激推しする背景から見える戦略CES 2026(2/3 ページ)

» 2026年01月08日 19時00分 公開
[西川善司ITmedia]

キーノートで繰り返されたのは「効率の高さ」

 今回の基調講演におけるCore Ultraプロセッサ(シリーズ3)の説明で印象的だったのが、時間を多めに割いて“効率の高さ”をアピールしていたことだ。

 下の図は、Core Ultraプロセッサ(シリーズ3)を自社の先代製品(シリーズ2)やAMDの「Ryzen AI 300プロセッサ」の同等モデルと性能を比べたものである。

シングルスレッド シングルスレッド性能の比較グラフ。赤点はAMDの「Ryzen AI 9 HX 370」で、「Core Ultraプロセッサ(シリーズ3)はより低い電力でより高いパフォーマンスを実現できる」というアピールとなっている
マルチスレッド マルチスレッド性能でも傾向に変わりはなく、Core Ultraプロセッサ(シリーズ3)の電力効率の良さを強調している
相対性能 Ryzen AI 9 HX 370を基準(100%)とした相対性能グラフ。ベンチマークテストに使ったアプリは、実際のPC利用を想定して選んだそうだ
相対性能 こちらは、基準を「Ryzen AI 7 365」に変更して上と同じアプリで性能を比較したグラフ

 これらのグラフを通して、Intelは以下のことを言いたいのだと思われる。

  • 「Core Ultra X9 388H」(16コア)はコアが多い分パフォーマンスが高い
  • しかし、コアの少ないAMDのCPUよりも消費電力が低い

 こうした「1Wあたりのパフォーマンス」、いわゆる「ワッパ」を重視したプロセッサ設計はIntelの“お家芸”でもある。そのせいか、今回IntelはCore Ultraプロセッサ(シリーズ3)を「Battery Life King(バッテリー駆動時間の王者)」と自画自賛していた。

自画自賛 Intel「バッテリー駆動時間の王者は誰だ? オレだよ!」
Snapdragonにも負けないもんね! 「ワッパなら、ArmアーキテクチャベースのQualcomm(Snapdragon X Elite)に負けていない!」というアピールも欠かさない

GPUの名称は「Battlemage」を強調

 Core Ultraプロセッサ(シリーズ3)のGPUコアはテクノロジー的には「Xe3 GPU」と名乗っている。一応、Xe系統のGPUとしては第3世代という意味なのだが、中身は第2世代(開発コード名「Battlemage」)のマイナーチェンジであることは、以前の記事でも触れた通りだ。

 以前Intelは「初代Xeは『A(Alchemist)』、Xe2は『B(Battlemage)』、Xe3は『C(Celestial)』となる」的なロードマップを、ほんのりと示唆してきたこともあって、多くのユーザーがXe3 GPUの“正体”に驚いたと思う。

ダン・ロジャーズ氏 GPU回りの話は、ダン・ロジャーズ氏(PCプロダクト担当バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー)が担当した

 色んな裏事情はあるにせよ、この後出てくるかもしれないCelestial世代のGPUと、Core Ultraプロセッサ(シリーズ3)に搭載されたXe3 GPUを“誤認”させるのは良くないことには違いない。

 そこでIntelは、Core Ultraプロセッサ(シリーズ3)では内蔵GPUの名称をコア数に応じて以下のようにした。

  • 2コア/4コア:Intel Graphics
  • 10コア:Intel Arc B370(Intel Arc Pro B370)
  • 12コア:Intel Arc B390(Intel Arc Pro B390)

 要するに、「あくまでもB(Battlemage)世代のGPUですよ」と強調することになったのだ。

性能向上 Core Ultraプロセッサ(シリーズ2)の内蔵GPUと比べると、格段に性能が向上している
名前 Core Ultraプロセッサ(シリーズ3)はXe3 GPUを搭載していることは、以前の説明から変更はない。ただし、10基以上のXeコアを搭載する場合は「Intel Arc B300シリーズ」とBattlemage世代であることが分かる名称になった

競合と張り合える性能を確保

 Xe3 GPUは、Battlemageの改良版ではあるものの、Intelは以前から「かなりハイチューンを施した自信作だ」と、自信を見せていた。

 今回の基調講演では、その高性能ぶりをCore Ultra X9 388H(Intel Arc B390)と、AMDのRyzen AI 9 HX370(Radeon 890M:演算ユニット16基)を比較しながら強調していた。その時に使っていたのが、下の2つの図だ。

比較図 こちらは超解像処理を適用した場合の計測結果(1080p/パフォーマンス重視設定時の平均フレームレート)
比較図 こちらはネイティブ解像度時の計測結果(1080p/高画質設定時の平均フレームレート)

 1つ目の超解像処理を適用した場合の結果は、GPUによって用いる技術が異なるため「対等な条件」ということは難しい。あくまでも「参考値」ということになる。一方で、2つ目のネイティブ解像度の結果は超解像という「飛び道具」が使えない分、性能を比べる観点で信ぴょう性が随分と高まる。

 計測結果をよく見てみると、Ryzen AI 9 HX370のシステムは、Core Ultra X9 388Hよりも消費電力設定が少し高めとなっている。基本的に、CPUやGPUは高い消費電力を許容できれば性能も上げやすい。そういう観点でいうと、「Intelはあえて不利な条件でテストした」ともいえる。

 しかし結果を見る限り、Core Ultra X9 388Hは“不利な”条件でも多くのゲームタイトルでより高いパフォーマンスを発揮できるようだ。

 だが、GPUコア(Intel Arc B390とRadeon 890M)の理論性能を計算で出してみると、以下の通り理論値ではRadeon 890Mの方が「高性能」となる。

  • Intel Arc B390:2コア×128SIMD×2FLOPS×2.5GHz≒7.68TFLOPS
  • Radeon 890M:16CU×128SIMD×2FLOPS×2.9GHz≒11.88TFLOPS

 なぜ理論性能の低いCore Ultra X9 388HのGPUが多くのケースで“逆転”できたのか――その理由の1つとして、メモリ帯域(1秒当たりアクセス速度)の差が効いていると思われる。Ryzen AI 9 HX370のメモリ帯域は毎秒128GBなのに対して、Core Ultra X9 388Hは毎秒153GBと約1.2倍だ。わずか「0.2倍」だが、この差は意外と大きい。

 また、一部の人はツッコミたくて仕方なかったかもしれないが、Radeon 890MのSIMD演算器は「Dual Issue(デュアルイシュー)」なので、見かけ上の理論性能が高めに出てしまう。この点でいうと、Intel Arc B390はレンダースライスの数は据え置かれており、並列性にも手を加えておらずに、レンダースライス内の演算器を増強しただけだ。くしくも「ハイチューンの哲学」という点では、どちらのGPUも変わらない。

外部GPU 1世代前とはなるが「GeForce RTX 4050 Laptop GPU」と平均フレームレートを比較したグラフも用意されていた。意外かもしれないが、1080p/2倍超解像という設定なら張り合える性能を有しているようだ

 にしても、これだけの性能差が出るのは面白い。この点について、後に行われた質疑応答の機会でGPU担当者に伺ったところ、「GPU内部のデータパスの最適化と、GPUコアからのメモリアクセスの最適化を極限まで進めた結果と思っていい」とのことであった。

 本当にテスト結果通りのパフォーマンスを発揮できるのか、各メディアでのゲーミングパフォーマンスのテスト結果を楽しみに待ちたい。

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