ここまでFinal Cut ProやLogic Proといった映像/音声系ツールを中心に解説してきた。Apple Creator Studioでは、これに加えてワープロアプリのPages、表計算ソフトのNumbers、プレゼンテーションソフトのKeynoteにおいて、「プレミアム機能」と呼ばれるApple Creator Studio登録者限定の機能を利用できる。
Pages/Numbers/Keynoteは、これまでも比較的自由に使えるアプリだったが、Apple Creator Studioの価値を高めるために、あえてプレミアム機能を新設した。これは、これまでのAppleにはあまり見られなかったやり方だ。
ここに含まれるのは、追加テンプレートやストック画像、そしていくつかのAI機能である。
このうちストック画像については、日本文化に関するものは少ないものの、汎用(はんよう)性の高い図形やイラストなど、有益なものも多い。
PagesやNumbers、Keynoteの有料プレミアムコンテンツとして追加された「コンテンツハブ」。Adobe Stock対抗のストック画像オプションになるかと期待したが、写真などの質は高いが、そこまで豊富にあるわけではなく日本固有の文化などを表した写真などはまだ弱いただし、正直に言ってAI関連機能については期待外れで、あまりあてにしない方がいい。
プレミアム機能は、画面上で紫色のアイコンとして表示される。サブスクリプション登録後も、このアイコンが紫色のまま表示され続けるのは、ややこれ見よがしで趣味が良いとは言えず、その点もこれまでのAppleらしくない。
しかも、提供される機能の多くは、Image Playgroundで生成した画像を挿入する程度のもので、実用性は高いとは言えない。
唯一、比較的高度なAI機能が用意されているのがKeynoteで、プレゼンテーションの概要を書くだけでたたき台のスライドを生成したり、スライド内容をChatGPTに送って講演用メモを自動生成したりする機能がある。
今のところ、「動くから」という理由だけで製品化されてしまった、無責任なAI企業の機能と大差なく、Appleのような責任ある大企業が採用すべきものとは思えなかった。
生産性アプリとAIの融合においてユーザーが本当に求めているのは、Numbersの表の数値の意味を分析して示してくれたり、PagesやKeynoteで作成した文章/スライド内容をファクトチェックしてくれたりといった、人間の思考を助ける存在だろう。人間が行うべき価値判断を、AIが勝手に置き換えてスライドを作ってしまうことではない(いくつかの提案を行う程度であれば問題ないと思うが)。
Keynoteのスライドをテキストで情報を入力すると、AIがそれに基づいてスライドを作ってくれる機能が追加されたというので、いろいろと試してみたが、基本的に要点を箇条書きにしたスライドを作るだけで、それほど高度なことができるわけではない私は、AIを用いた生産性支援機能においては、常に最終的な判断を人間に委ね、確認し続けられる設計が重要だと考えている。その点で、このあたりはAppleのAI関連機能を開発しているチームと、私の価値観はあまり合わないようだ。
もっとも、AdobeやMicrosoftのAI機能が十分に成熟しているかと言えば、決してそうとも言えないので、Appleだけが特別に悪いとも思わない。
だが、私がImage Playgroundで生成された画像を、新OSのレビュー記事以外で目にしたことがほとんどないのと同じように、これらの生産性アプリに追加されたAI機能の利用率も、今後あまり高まらないのではないかと、長年この業界を見てきた1人として直感している。
急いで中途半端な機能を出すことは、Appleの仕事ではない。AppleにはAI技術者だけでなく、道具の歴史に詳しい人、文化人類学者、認知科学者など、より幅広い知見を取り入れた、より高次元のAI統合を期待したい。
厳しいことも書いたが、Apple Creator Studioが、価格からは想像できないほど圧倒的に高い価値を提供するアプリ群であることに異論はない。1カ月の無料お試し期間(対象となるMacやiPadを購入すると3カ月)も用意されているので、ぜひ実際に試し、AI時代の新しい作業環境やサブスクリプションのあり方を見直してほしい。
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