スペックの追求にとどまらず、MSIはローカルAIを駆使した体験価値(UX)の革新にも力を注ぐ。会場では、フラグシップデスクトップPC「MEG Vision X2 AI+」に実装された独自AIエージェント「LuckyClaw」のデモンストレーションや、ディスプレイ単体にAI機能を組み込んだ意欲的な次世代機が披露された。
MEG Xはディスプレイ側にソフトウェアインストール不要な各種AI機能を搭載している。例えばAIゲージではディスプレイの下部に搭載したLEDバーをゲームのステータスと連動させてHPが減少したら赤くするといったこともできるそうだ。
ウルトラワイドモデル「MPG 341CQR QD-OLED X36」を用いたデモでは、AIエージェント「LuckyClaw」がアプリの起動を検知すると、ディスプレイ側のMCU(マイクロコントローラー)とダイレクトに通信。輝度やコントラスト、暗部視認性をゲームに最適化されたプロファイルへ自動で書き換える挙動を確認できた。なお、この恩恵は前述の「MEG X」でも同様に享受できる。
設定の複雑化が進むゲーミングモニターにおいて、コンテキストに応じてAIが最適な設定を自動で行ってくれる機能は今後注目していきたいところだ。
MSIブースでは完成品デバイスだけでなく、自作PCファンやハイエンドゲーマーにとって見逃せないグラフィックスカードの技術展示も行われていた。
怪物級の熱量と消費電力を誇る「GeForce RTX 5090」を迎え撃つべく、MSIは「極限の冷却」と「絶対的な電源保護」という2つのアプローチを提示した。興味深いのは、これらが1つの製品に統合されるのではなく、それぞれ個別の特化型コンセプトモデルとして具現化されていた点だ。
まず一つ目は、圧倒的な排熱処理を目指して開発された次世代冷却機構「Next-Gen Thermal Solution」を採用する「GeForce RTX 5090 32G GAMING TRIO Next-Gen」だ。
本機の分解展示では、GPUコアの熱を爆速でヒートシンクへ誘導するためにダイヤモンドパウダーを配合した「Diamond-Copper Composite Baseplate」や、高剛性を維持しつつゆがみを排して気流を最適化する「0.8mm極薄メタルファンブレード」など、新機軸のパーツが随所に投入されている様子が確認できた。
二つ目は、ハイエンドGPUにおける12V電源コネクター(12VHPWR)の安全性を高める「GeForce RTX 5090 32G SUPRIM Safeguard」だ。
このモデルが提示するのは、先ほどの冷却特化型とは一線を画す電気的なアプローチだ。異常電流やサージ電圧をミリ秒単位で検知し、サーバクオリティーの「eFuse(電子ヒューズ)」によって基板を物理的なダメージから完全に遮断する「Safeguard Power Protection Solution」の全貌が明かされていた。
システムの総消費電力が跳ね上がる次世代のウルトラハイエンド環境において、ユーザーに絶対的な安心感をもたらすMSI独自の強力なフェイルセーフ機構として、極めて価値が高い。
COMPUTEX 2026のMSIブースは、単に創立40周年の歩みを祝う場にとどまらず、NVIDIA「RTX Spark」やIntel「Arc G3 Extreme」といった業界の覇権を占う最新プロセッサ搭載デバイスをどこよりも早く世界に知らしめる、強烈なイノベーションの発信地となった。
先進的なディスプレイやデスクトップPCによるローカルAIの具現化、あるいはGeForce RTX 5090の牙城を支える次世代の冷却・電源保護技術など、その展示内容はコンポーネントから完成品に至るまで実に多角かつ重厚だ。単なるハードウェアのスペック競争に終始せず、その先にある「ユーザー体験の深化」を真摯に見据える同社の包括的なアプローチが色濃く表現された、見応えのある内容であった。
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