だが、このフォリオには、名前に表れていない、もっと大切な働きがある。「iPhoneを閉じる」という、新しい操作ができるようになる。
本体だけを畳んでも、外側には画面が残る。フォリオは、この外側のディスプレイまで覆う。本体を畳み、フォリオも閉じると、露出した画面がなくなる。
これが、なんとも心地よい。情報を見る時間をいったん終えて、目の前の相手と向き合う。あるいは、スマートフォンばかり見ている時間を、しばらく中断する。その選択を、自分の手ではっきりと示せるようになる。
本を閉じたときのように、1つの時間に区切りがつく。画面を覆う身振りが、自分の気持ちを切り替えてくれる。ささやかなデジタルデトックスを、自分の所作1つで始められる。
もちろん、外側の画面を使えなくなるわけではない。そこを覆っているフォリオの片側を開けば、従来のiPhoneのように使える。開いたカバーは背面に吸着させられるので、邪魔になりにくい。
本体を包み、開閉に合わせて伸び縮みし、画面を好みの角度で支え、情報との距離まで調整する。薄い1枚のカバーに、これほどの役割を凝縮したことには感嘆する。フォリオのあるなしで、iPhone Duoの体験は大きく変わる。
ここまでいろいろ試してきて、筆者はiPhone Duoを良い意味での「ぜいたく」、つまり「リュクス(luxe:優雅、ぜいたく)なスマートフォン」だと思うようになった。手に触れるものや、毎日の過ごし方にまで気を配った、上質な使い心地。その積み重ねにぜいたくを感じる端末だ。
これまでスマートフォンのハイエンドモデルといえば、最もよいカメラ、より多くのレンズ、最も速いプロセッサを備えた、全部盛りの高機能モデルを思い浮かべることが多かった。
これに対してDuoは、その頂点が1つではないことを示した。
iPhone 18 Proと同じA20 Proチップを搭載する一方で、専用の望遠カメラはない。本格的な画像加工をする人向けのApple ProRAW撮影にも、空間写真・空間ビデオ撮影といった特殊撮影にも対応していない。
撮影や制作の機能を仕事の道具として重んじる人には、Proの方が適している。
Duoはそうしたクリエイターがつくった作品を、優雅に心地よく満喫するための端末だ。日々の仕事の書類やメールも読みやすくなり、必要ならアプリを並べて作業もできる。
一方で、使い終えたらフォリオを閉じ、情報から意識的に距離を置くこともできる。楽しむ時間と、離れる時間。その両方に心地よさがあるところに、この製品の豊かさを感じる。
日本での本体価格は36万4800円から。予算の範囲外という人も少なくないだろう。その一方で、予約注文の開始から数十分で年内出荷分がなくなってしまうほどの人気ぶりで、Appleの予想をはるかに上回る数のユーザーが「この値段でも買う」と判断しているのも確かだ。
誰にでも勧められる買い物ではないが、背伸びして買った人には、それに見合う所有の喜びを与えてくれる1台だろう。
形の面でも使い勝手の面でも、これまでのiPhoneとは異なる新しい製品が登場したことで、第2世代の製品が出るまでにアプリ側でどんな進化が起きるのかも楽しみだ。
数年後には、より安価に製造できるようになり、もっと手頃な折りたたみiPhoneが出てくることも祈りたくなった。
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