iPhone Duoだけじゃない! 折りたたみの陰に隠れたApple新製品の「本当のすごさ」本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/4 ページ)

» 2026年09月15日 15時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 9月9日(米国太平洋夏時間)に行われたAppleのスペシャルイベントから数日が経過した。米カリフォルニア州クパチーノにあるApple本社(Apple Park)に入った各国メディアによるハンズオン記事も一通り出そろったが、並んだ記事は「iPhone Duo」一色だ。Appleが初めて出した“折りたたみ”iPhoneなので、無理もない。ご多分に漏れず、筆者もiPhone Duoのヒンジにフォーカスした記事を執筆した。

 無論、折りたたみiPhoneは面白い。だが、MM総研の調べでは、2025年度に日本国内へ出荷された携帯電話端末3132万8000台のうち、折りたたみは33万4000台、率にして全体の1.1%にすぎない状況だ。Appleの参入で数字は動くだろうが、それでも5%を超える市場は当面想像しにくい。

 読者の大半にとって、2026年秋の「Apple新製品」とはiPhone Duo“以外”の製品のことだ。

新製品 Appleは、iPhone Duo以外にも新製品をリリースしている

実は大きく進化した新しい「Apple Watch」

 進化の幅と注目度が最も釣り合っていないと感じたのは、「Apple Watch Series 12」だ。

 見た目は、先代の「Apple Watch Series 11」からほとんど変わらない。42mmと46mmのケース(本体)サイズも、ディスプレイの見え方も、先代とほぼ同じだ。一方で、ケース素材にセラミック(パールホワイト/ナイトブルー)が加わり、アルミニウムモデルの前面が「Ceramic Shield 2」になったが、いずれも店頭でその違いに気付く人は少ないだろう。

Apple Watch ぱっと見では先代からの進化ポイントが分からない「Apple Watch Series 12」だが……

 しかし、“中身”は違う。搭載チップ(SoC)は「Apple S11」で、Series 10/11と2世代に渡って使われてきた「Apple S10」から“ようやく”更新された。

 Appleが公表しているS11のスペックは「64bitの2コアCPU、1コアGPU、4コアNeural Engine(NPU)を持つ」という程度だが、実はiPhone Duoに搭載された「A20 Proチップ」と同世代の、最新のCPU/GPU/NPUコアを採用している。

 実はApple Watch向けのSoC「Apple S」シリーズは、これまで一貫してiPhone向けプロセッサと比べて“型落ち”のコアを使ってきた。例えばApple Watch Series 9で使われていた「Apple S9」は、同時期の「iPhone 15 Pro」に載った「A17 Proチップ」ではなく、さらに1世代前の「A16 Bionicチップ」と同じコアを使っていた。

 腕時計というジャンルでは、最新世代を追いかける必然性は薄かったのだ。

 しかし、今回のApple S11は、同じ日に発表されたA20 Proチップと“同じ”世代のコアを採用する。iPhoneと同じタイミングで、同じコアがスマートウォッチ向けプロセッサに採用されたのだ。恐らく、これはApple Watchの歴史で初めてのことではないだろうか。

S11チップ Appleのスペシャルイベントでも、Apple S11がA20 Proチップと同じ世代のCPU/GPU/NPUコアを採用していることをアピールするようなスライドが用意されていた

 このことは、単に「動作が速くなった」で終わる話ではない。ウォッチ側でオンデバイスAIを本格的に動かすための基礎が、ようやく作られたことを意味する。

 iPhoneが毎年プラットフォームを入れ替えるのに対し、Apple Watchのプラットフォームは数年ごとの更新だ。今後、このApple S11の上に、watchOSのAI機能が積み上げられていくことになる。

 watchOS 27が搭載する「Siri AI」は、Apple S11の上ではApple Watch上でも動くようになり、「Siriモジュラー文字盤」と、5つのSiri提案アプリを「並べる動的アプリグリッド」が用意された。

 より象徴的なのは、2026年内にβ提供が始まる「Audio Intelligence(オーディオインテリジェンス)」の方だろう。サイレンや警報、ドアベル、赤ちゃんの泣き声を聞き分ける「Sound Recognition(サウンド認識)」に始まり、デジタルクラウンを2回押すと直前15秒の会話がテキストで出てくる「Live Rewind(ライブ早戻し)」、会話を要約してSiriアプリに残す「Siri Recap」まで、いずれもマイクを常時働かせることを前提にしている機能群だ。

 音声データは、S11に搭載されている「Secure Exclave」と呼ばれるハードウェア的な隔離領域(セキュアバッファー)にいったん保持されるが、処理が完了すると即座に破棄される。録音は作られず、保存もされない。設計上、話者の識別/帰属も行わない

 Live Rewindが動くときは、消音中でもチャイムが鳴る。生成されたテキストと要約だけが、エンドツーエンド暗号化で「iCloud」とのみ同期することで、プライバシーを保っている。

 いつも身につけていて、マイクとセンサーを持ち、本人以外には渡らない場所で処理するデバイス――ジョン・ターナスCEOは、イベントの基調講演でiPhoneを「インテリジェントなパーソナルハブ」と定義したが、24時間の“文脈”を拾い続けられるデバイスは、実のところこっちではないかとも思える

 なお、Live RewindとSiri Recapは2026年内に英語からβ提供される予定で、日本語環境で利用できるまでには、しばらく時間がかかる見込みだ。また、Live Rewindの時間制限は15分となることには注意したい。

新しい機能 Apple Watch Series 12(とApple Watch Ultra 4)で利用できる「Audio Intelligence」「Sound Recognition」「Siri Recap」
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